2013年7月25日木曜日

米の原発が三菱重工に損害賠償請求

 24日付記事「除染費用は5兆円必要」に対して、同日読者から次のようなコメントをいただきました。
 「米のサンオノレフ原発の廃炉に伴い、蒸気発生器の製造元の三菱重工に巨額賠償金が請求されています。原発輸出の高いリスクが明らかになりました。

 コメントに記載されたURLをクリックしてもにジャンプしないため、三菱重工に対する損害賠償請求に関するロイター通信の6月10日と7月19日の記事を掲載します。

 またこの件に関して23日の毎日新聞は、「三菱重工側は責任上限額を超える賠償責任はないと反論しているが、米国では懲罰的賠償のリスク(業界筋)もあるだけに事態の行方は予断を許さない。事故発生時に巨額賠償を迫られることになれば、原発輸出を推進する日本政府や三菱重工など大手メーカーに冷や水を浴びせそうだ」と書いています。

 いずれにしても三菱重工に対して巨額な損害賠償が請求されることは明らかで、コメントにあるように、原発輸出の高いリスクが早くも明らかになりました。
 
 毎日新聞の記事も併せて紹介します。
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米サンオノフレ原発の原子炉2基廃炉に、三菱重工に損害賠償請求へ
ロイター2013年 06月 10日 
[7日 ロイター] - 米電力会社エジソン・インターナショナル傘下のサザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)は7日、蒸気発生器の配管が破損し運転を停止しているカリフォルニア州サンオノフレ原発について、原子炉2基を廃炉にすると発表した。
重いメンテナンス費がのしかかっていたことに加え、業界ではより安価な天然ガスへの燃料シフトが起きていた。
この蒸気発生器は三菱重工業製。配管が破損し、微量の放射性物質が漏れ出したことを受け、2012年1月以降、原子炉は運転を停止していた。
原発停止に関連し、SCEは第2・四半期に、税引き前で4億5000万─6億5000万ドル、税引き後で3億─4億2500万ドルの費用を計上する見通し。
また、三菱重工に損害賠償を求めるほか、保険による補償を一部求める方針。
三菱重工はSCEの対応に失望したとし、サンオノフレ原発が安全かつ確実に稼働できることに自信を示した。一方、声明で「しかし、われわれは複雑かつ困難な要因がこの(SCEの)決断を促したであろうということを理解している」と表明した。
連邦データによると、サンオノフレ原発の原子炉は1983年と84年に稼働。SCEは3年前に、2号機(1070メガワット)の蒸気発生器を交換したほか、その後3号機(1080メガワット)の蒸気発生器も取り替えた。
SCEは、廃炉に伴い、サンオノフレ原発の従業員を来年にかけて1500人から約400人に減らすと表明。大半を年内に削減するとしている。

廃炉の米サンオノフレ原発運営会社、三菱重工に賠償要求
ロイター2013年 07月 19日
[18日 ロイター] - 原子炉の廃炉が決まった米カリフォルニア州サンオノフレ原子力発電所の運営会社であるサザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)は、蒸気発生器を製造した三菱重工業が適正な設計をせず、迅速に修繕もしないことで契約に違反したとして、損害の責任を取るよう求める内容の通知を18日に行ったことを明らかにした。
同原発では、三菱重工製の蒸気発生器で配管が破損し、微量の放射性物質が漏れ出したことを受け、2012年1月初めから原子炉の運転を停止。SCEは6月初めに廃炉とすることを発表していた。
SCEは、三菱重工がテストを適正に行わず、配管の破損を回避するような構造を設計しなかったとしている。
仲介者を交えた法的な手続きに入る前に、三菱重工がSCE側の主張に回答するまでの期間は90日。
SCEの広報担当者は「三菱重工側が、欠陥のある蒸気発生器や、関係各所に及ぼした甚大な損害に対する責任を取ることを求めている」としている。
一方、三菱重工の広報担当者はこれらの主張に対する対応を検討しているとコメントした。
SCEは米電力会社エジソン・インターナショナルの傘下にある。

<米原発運営会社>三菱重工に賠償請求 蒸気発生器トラブル
毎日新聞 2013年7月23日
 廃炉が決まった米カリフォルニア州のサンオノフレ原発を運営する電力会社のサザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)が、トラブルを起こした蒸気発生器を納入した三菱重工業に対し、原発停止で生じた損害全額を賠償するよう求めている。三菱重工側は「責任上限額を超える賠償責任はない」と反論しているが、米国では「懲罰的賠償のリスク」(業界筋)もあるだけに事態の行方は予断を許さない。事故発生時に巨額賠償を迫られることになれば、原発輸出を推進する日本政府や三菱重工など大手メーカーに冷や水を浴びせそうだ

 SCEは今月18日、「蒸気発生器の欠陥は基本的かつ広範。三菱重工はSCEや顧客が被った損害全額の責任を負うべきだ」とする文書を三菱重工宛てに送付したと発表。賠償請求額は明らかにしていないが、SCEは原発停止中の代替電力確保に関わる費用の支払いなども求めている模様。現地メディアでは請求額は数十億ドル(=数千億円)規模とも報道されている。SCEと三菱重工が機器納入時に結んだ責任上限額(約1億3700万ドル)を上回るのは確実だ。協議で90日以内に解決できなければ、SCEは裁判所に仲裁手続きを求める意向だ。

 これに対し、三菱重工は19日「SCEの主張は不適切で根拠がない」とのコメントを発表。原発停止に伴う代替電源確保などの間接的な損害は請求されない契約だとして、全面的に争う構えを示す。三菱重工は責任上限額分は業績に織り込んでいるが、それを大幅に上回る賠償を迫られれば、業績への打撃は必至だからだ。

 東京電力福島第1原発事故後、国内で原発新増設が困難となる中、三菱重工や東芝、日立製作所など原発メーカーは政府の後押しを受けて海外ビジネスに活路を求める。ただ、原発需要が高まるアジアでは、インドのように事故の際、メーカーが巨額の製造物責任を問われかねない国もある。今回は契約で責任が明記された米国で多額の賠償を求められかねない事態で、業界には波紋が広がる。大手メーカー幹部は「電力会社側の保守や運用にも問題があるはず。メーカーだけに事故責任を負わされてはたまらない」と話すが、原発輸出のリスクが浮き彫りになった形だ。【松倉佑輔、横山三加子】

 キーワード・米サンオノフレ原発
 サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)社が米カリフォルニア州で運営、約140万世帯に電力を供給。2009年に蒸気発生器を三菱重工業製に交換したが、12年1月、3号機の配管で冷却水漏れが起きて緊急停止。定期点検中の2号機でも配管に摩耗が見つかり、運転を停止した。SCEは再稼働を目指したが、周辺住民が反対。米原子力規制委員会(NRC)の調査が長引いたこともあり、今年6月廃炉が決まった。

 三菱重工の蒸気発生器を巡っては1991年に関西電力美浜原発で冷却水漏れが発生、その後に改良された。国内の原発に使われている同社製の蒸気発生器はサンオノフレ原発の発生器とは別タイプで影響はないという。