2013年7月10日水曜日

海岸際の井戸水の高濃度汚染を確認

 
 NHKは9日、東電福島原発の岸壁近くに掘った井戸水から高濃度のセシウム(3日間で90倍)、海域放流基準の8倍のトリチウム、30倍のストロンチウムなどが検出されたことに関して、NHK WEB ニュースとしてはかなり長文の記事を載せました(東京新聞や地元紙も頻繁に報じています)。

 高度に放射能で汚染され且つ海抜よりも高い水位をもつ地下水が、海には流出せずに他所に回って行くという現象は、常識的には考えられません。原発地下建屋の破損(地震に起因)部からの浸出量は400t/日ということですが、それを連日排除しても地下水位に変動がないからには、それを(はるかに)上回る地下水が湧き出ていて、それらがどこかに流出しているものと考えられます。
 それでも東電は絶対に海に流出しているということは認めません。海外からも袋叩きに遭うからでしょう。
 しかしながら「海水の放射性物質の濃度に大きな変化がないから、海への流出があるかは現時点では判断できない」いう見解の繰り返しには無理があります。そもそも地下水の流出の影響が検知できるような海水のサンプル点になっているのかも不明です。

 「海に流出しているかは確認できない」などという言い逃れに終始するのはやめて流れ出していることを前提にした対策を早急に講じるべきです。
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井戸のセシウム 3日で90倍
NHK NEWS WEB 2013年7月9日
東京電力福島第一原子力発電所で、観測用に掘られた井戸の地下水から検出された放射性物質のセシウムの濃度が、3日間でおよそ90倍に増えていることが分かりました。
セシウムは土に吸着されやすく、東京電力は、これまで地下水へは流れにくいと説明しており、濃度が上昇した原因を調べることにしています。

福島第一原発では、ことし5月以降、海に近い観測用の井戸の水から高い濃度の放射性物質が検出され、監視を強めるため、2号機の海側に新たに掘られた井戸で、8日採取した水で放射性セシウムの濃度が3日前に比べて、およそ90倍に増えていることが分かりました。
この井戸は、事故直後のおととし4月に、海に汚染水が漏れ出した場所から近く、東京電力は、その際にしみこんだ水に含まれていた放射性物質が検出された可能性があるとしています。
これまでは同時に測っていた土に吸着しやすい性質がある放射性セシウムの濃度が低く、当時の汚染水が地中を移動する間にセシウムが土に吸着したと考えられるということです。
その放射性セシウムの濃度が上昇したことについて、東京電力は「原因は分からない」として、測定した地下水にセシウムを含む井戸の周辺の泥などが混じった可能性も考えられるとして再び井戸の水を測定して、原因を調べることにしています。
一方、海への流出については、「海水の放射性セシウムの濃度に大きな変化がない」としていますが、「現時点では判断できない」としています。
東京電力は、流出を防ぐため、きのうから井戸に近い護岸に薬剤を入れて固める工事を始めるとともに、観測用の井戸を増やして、監視を強化することにしています。

【5月から井戸の水に変化】
2号機の海側にある観測用の井戸の水に変化が現れたのは、ことし5月です。
地下水の動きを監視するため、海から25メートルの所に掘られたこの井戸の水で、放射性物質のストロンチウムとトリチウムの濃度が5月以降、高くなっていたのです。
これまでの最大の値は、トリチウムが1リットル当たり50万ベクレルストロンチウムが1リットル当たり1000ベクレル
国の海への排出基準に比べて、トリチウムがおよそ8倍、ストロンチウムがおよそ30倍に当たる値でした。
これについて東京電力は、事故直後のおととし4月、2号機の海側で高濃度の汚染水が海に流れ出しており、そのとき土にしみ込んだ水に含まれていた放射性物質である可能性が高いと説明しました。同時に測っていた土に吸着しやすい性質がある放射性セシウムの濃度が低かったことなどが理由でした。
汚染水が地中を移動する間にセシウムが土に吸着し、濃度が下がったと考えれば、つじつまが合うというのです。

データの変化は、原発の専用港で採取した海水にも現れました。
1号機の海側にある取水口付近で5月以降、トリチウムの濃度が上昇したのです。
ことし4月までの1年ほどは、1リットル当たり100ベクレル程度で推移していたのが、その後上昇に転じ、今月3日には1リットル当たり2300ベクレルと、4月の20倍以上になりました。
東京電力は監視を強化するため、この井戸を取り巻くように東西南北、4つの井戸を新たに掘り、原発専用の港で行っている海水調査のポイントも増やしました。
今回放射性セシウムの濃度が、3日間でおよそ90倍上昇したのは、新たに掘られた井戸の1つで、おととし汚染水が海に流出した場所の最も近くにあります。
土に吸着されやすいため、検出されにくくなったと考えていたセシウムの濃度の上昇は、当時の汚染水流出だけでは説明がつかず、東京電力は原因は特定できないとしています。
また、近くの海水の放射性セシウムの濃度に大きな変化がないことから、海への影響は判断できないとしています。

専門家「何重にも対策をとるべきだ」
地下水に詳しい産業技術総合研究所の丸井敦尚総括研究主幹は、これまでの東京電力の説明などから2つの原因を指摘しました。
1つは、周辺の土などに付着している放射性セシウムが井戸に混入し、地下水のセシウム濃度が上昇した可能性です。
もう1つは、原子炉建屋などから新たに汚染水が漏れ出している可能性です。
丸井総括研究主幹は新たに汚染水が漏れ出している可能性について、「地下水と共に移動しやすいトリチウムなどに続いて、今回、土に吸着しやすいセシウムが検出されていることは、原子炉建屋などから漏れ出した汚染水が地下水の流れの影響で海側に向かって流れ出している可能性を示している」と指摘し「安全側に立って両方の可能性を考えて対策を立てるべきだと」話しています。
そのうえで、東京電力が行っている海側の護岸の地盤を薬剤で固めて海に漏れ出すのを防ぐ対策について、「護岸の地盤だけでなく、原子炉を囲むように海側に鋼鉄製の仕切り板を打ち込み、さらにその隙間に水を通しにくい粘土などを入れるなどして、何重にも対策をとるべきだ」と述べました。
また、東京電力は、高い濃度の放射性物質が検出された井戸の周辺にさらに追加で観測用の井戸を掘って調査を進めていますが、丸井さんは「地下水は横だけでなく、上下にも動くのでさらに敷地内の広い範囲に観測用の井戸を設けるほか、沿岸の海底で地下水が湧き出している場所の調査も行い、敷地周辺の地下水の全体的な流れを把握したうえで、抜本的な対策を立てるべきだ」と話しています。