6日の新聞に、柏崎刈羽原発の再稼動申請について、東電の対応を批判するいくつかの社説が載りました。
北海道新聞は、福島原発事故はいまだに収束しておらず、現在、多くの住民が先の見えない避難生活を強いられている中での再稼動申請は暴挙であり、泉田知事の怒りは当然、原発事故の検証・総括が再稼働の是非を論じる前提という知事の主張が正論なのは誰の目にも明らかだと述べています。
また柏崎刈羽原発の複数の原子炉の直下には活断層が存在する疑いがあることにも触れ、再稼動の要求が通らなければ再度の電気料金値上げをほのめかす東電の態度は居直りに近いと指摘して、このように東電が再稼動にあせりを見せているのは、昨年まとめた無理な「総合特別事業計画」に沿おうとするからであり、実質国有化されている東電のそのような事業計画を黙認してきた政府の責任は重いとしています。
毎日新聞、宮崎日日新聞もほぼ同様な社説を掲げました。
以下に北海道新聞と毎日新聞の社説を紹介します。
註.紙面の関係で宮崎日日新聞の社説は割愛しましたので、下記のURLでアクセスしてご覧下さい。
社説 東電原発再稼働申請 事故処理進まぬ中で不誠実 宮崎日日新聞 7月6日
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社説 柏崎刈羽原発 再稼働の申請は暴挙だ
北海道新聞 2013年7月6日
東京電力は、停止中の柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請することを決めた。
東電の広瀬直己社長はきのう、新潟県の泉田裕彦知事と会談し理解を求めたが、知事は東電側の対応を厳しく批判した。
泉田知事の怒りは当然だ。
福島第1原発事故はいまだに収束していない。
現に多くの住民が先の見えない避難生活を強いられ、広範囲にまき散らされた放射性物質の不安におびえている。
事故の当事者の東電に、現時点で原発を運転する資格などない。被災者をはじめ、多くの国民の神経を逆なでする暴挙だ。
しかも、東電は地元に事前の説明もなく、いきなり申請の方針を発表した。これで理解を得られると考える方がおかしい。
泉田知事は、福島の事故の検証・総括が再稼働の是非を論じる前提との姿勢を貫いている。知事の正論は誰の目にも明らかだ。
要求が通らなければ、再度の電気料金値上げをほのめかす東電の態度は居直りに近い。
柏崎刈羽は、福島第1原発と同じタイプの沸騰水型軽水炉だ。
8日に施行される新たな原発規制基準では、過酷事故対策として、放射性物質を除去しながら原子炉格納容器を減圧するフィルター付きベント装置の設置が義務づけられた。
東電は既に設置工事に着手しているが、新潟県側は、これを安全協定に基づく事前了解事項として説明を求めていた。
再稼働申請の決定は、こうした手続きを飛び越えて行われた。重ね重ねの地元軽視である。
柏崎刈羽は複数の原子炉の直下に、活断層が存在する疑いも浮上している。入念な調査が必要で、規制委が審査に入っても、終了する時期は見通せない。
それでも東電が無理を通そうとするのは、柏崎刈羽の再稼働が、昨年まとめられた総合特別事業計画の成否に直結するからだ。
計画は本年度の黒字化を目標としている。これが達成できず、3期連続の赤字となれば、金融機関から融資を打ち切られかねない。
だが、この計画は実態とはかけ離れた代物だ。
そもそも、柏崎刈羽は4月に再稼働することを前提としていた。新基準施行前の再稼働は論外で、破綻は目に見えていた。
東電は実質国有化されている。このような状況を黙認してきた政府の責任は重い。現実味のない計画は、直ちに見直すべきだ。
社説 柏崎刈羽原発 再稼働を前提にするな
毎日新聞 2013年7月6日
柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、東京電力の広瀬直己社長が新潟県の泉田裕彦知事らと面会したが、理解は得られなかった。東電が地元への説明なしに、原子力規制委員会に安全審査を申請すると発表したのは乱暴だった。反発を招くのは当然だ。
同社が手続きを急ぐのは、事業計画が行き詰まっているからだ。再稼働前提の無理な事業計画を認めた国の責任も厳しく問われる。
東電の申請対象は柏崎刈羽の7基のうち6、7号機の2基だ。しかし事前了解を得ずに申請を強行しても、再稼働には地元自治体の同意が欠かせない。今回、地元の頭越しに動いて反発を招いたことで、東電は再稼働へのハードルを自ら引き上げてしまったといえるだろう。
広瀬社長は「地元の理解が前提」と繰り返してきた。それにもかかわらず、見切り発車に踏み切ったのは、同社の経営が厳しさを増しているからだ。2013年3月期は2期連続の経常赤字だった。原発の穴を火力発電で埋め、燃料費がかさんだためだ。これには、事故に伴う賠償費用は含まれていない。
東電は昨年、電気料金を値上げしたが、上げ幅は今年度から原発が順次再稼働することを前提に決めた。その前提が崩れ、3期連続の赤字となれば、銀行から融資を打ち切られるおそれがある。電気料金の再値上げを回避しながら黒字転換するには原発の再稼働が欠かせないというのが、同社の考えだ。
再稼働を巡っては、北海道、関西、四国、九州の4電力が計12基の安全審査を申請する意向だ。規制委の審査能力を考えると、審査対象の第1陣に入らなければ、審査は1年以上後回しになる。それでは銀行を納得させる事業計画は作れないということだろう。
しかし柏崎刈羽は事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型だ。敷地直下には断層もある。福島の事故は収束せず原因究明も終わらない。再稼働が難しいことは東電も分かっているはずだ。無理を承知で「最大限の努力」を示すのが目的だとしたら地元との信頼関係を踏みにじるものであり、許されない。
東電の事業計画は、原発再稼働を前提とせずに作り直すしかない。一段の合理化や安い燃料の調達努力が必要なのは当然だが、それでもなお経営が立ち行かないのであれば、値上げによって利用者に負担してもらうことも検討せざるを得ないのではないか。
これは原発に頼らない社会を目指すために、避けて通れない課題と言えるだろう。国民の負担に結びつく問題だ。政府はエネルギー政策における原発の位置づけを明確にし、国民の理解を得る必要がある。