2013年7月24日水曜日

除染費用は5兆円必要


 福島県内での除染費用としておよそ1兆1000億円余りの予算が計上されていますが、除染のり方を研究している専門家のグループが費用を試算をしたところ、予算の4倍を超える5兆円に上ることが分かりました。

 (産業技術総合研究所のグループは、福島県内での放射性物質を取り除く作業や、作業で出た土などの運搬、それに仮置き場や、最長で30年間にわたる中間貯蔵施設での保管などを含めると、避難区域の除染には最大で2兆300億円、それ以外の地域では最大で3兆1000億円総額5兆1300億円が必要と試算しました(国が福島県外に建設する方針の最終処分場の費用は別)。
 試算の中に居住区域周囲の山林・山野の除染が含まれているのかは不明ですが、それら周囲の森林が除染されなければ、居住地だけ除染しても直ぐにまた汚染されるといわれています。

 除染の効果についてNHK福島県内の43の地区の除染前と除染後の平均の放射線量を調べたところ、除染をしたあと年間1ミリシーベルト1時間当たり0.23マイクロシーベルトを下回らなかった地区全体の77%でした。中でも原発に近く放射線量の高い「帰還困難区域」では、試験的に行われた除染で、除染後の放射線量が基準の値の10倍から60倍程度にとどまっていました。除染をしても居住可能なレベルまで下がらないのであれば、住民は帰還できずあまり意味はありません。

 産業技術総合研究所の中西準子フェローは住民が求めている環境になるまでにどれぐらいの費用がかかるか分からないまま除染が進められている現状に対して
 「費用の見通しや効果を踏まえたうえで除染をするのか、その費用を生活再建のために使うのかを考えるなど住民のニーズも考慮して今後の進め方を考えるべきだ」
と話しています。

 被災の直後には40兆円ともいわれていた除染費用が、なぜか最終的に僅か1兆円程度に決められたのでした。国が除染に何処まで本腰を入れるのかが一番の問題ですが、何の見通しもないままに巨額を投ずることも危険なことです。
 被曝からもう2年余り、少なくとも国は早く除染方法を確立し、それに伴う除染効果・費用・工程を住民に明らかにする必要があります。
 
 もしも結果的に明確な見通しが得られないのであれば、「除染して住民を帰還させる」方針はあきらめて、中西準子氏が選択肢としてあげたように、“相応の費用を新たな居住空間=都市・住居の建設に向ける”ことに切り替えるべきでしょう。
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除染費用 予算計上4倍の5兆円に
NHK NEWS WEB  2013年7月23日
東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で行われている福島県内での除染について、国は全体でどの程度費用がかかるのか見通しを示していませんが、除染の在り方を研究している専門家のグループが試算をしたところ、これまでに計上された予算の4倍を超える5兆円に上ることが分かりました。

原発事故で広がった放射性物質を取り除く除染に関係する費用は、福島県内だけでもすでにおよそ1兆1000億円余りの予算が計上されていますが、国は全体でどの程度の費用がかかるのか見通しを示していません。
除染の在り方を研究している独立行政法人産業技術総合研究所のグループは、福島県内での放射性物質を取り除く作業や、作業で出た土などの運搬、それに仮置き場や、最長で30年間にわたる中間貯蔵施設での保管など、除染に関係する費用の総額を試算しました。
試算は国などが公表している除染作業の単価や契約書の分析、それに自治体などへの聞き取りを基に行われ、試算の結果、避難区域の除染には最大で2兆300億円、それ以外の地域では最大で3兆1000億円が必要で、総額は5兆1300億円に上ることが分かりました。
これはこれまでに計上された予算の4倍を超えていて、工程ごとでは、放射性物質を取り除く作業に2兆6800億円、運搬や中間貯蔵施設での保管に1兆2300億円、仮置き場での保管に8900億円などとなっています。
今回の試算には、国が福島県外に建設する方針の最終処分場の費用については、施設の概要が明らかになっていないことから含まれておらず、費用はさらに増えることになります。
除染を巡っては、国の計画より作業が大幅に遅れ、除染をしても放射線量が下がりにくいところが出てくるなど、その効果や進捗(しんちょく)の面で課題が指摘されています。
グループのメンバーで産業技術総合研究所の中西準子フェローは「住民が求めている環境になるまでにどれぐらいの費用がかかるか分からないまま除染が進められている。費用の見通しや効果を踏まえたうえで除染をするのか、その費用を生活再建のために使うのかを考えるなど住民のニーズも考慮して今後の進め方を考えるべきだ」と話しています。

環境省「住民の気持ち考えながら慎重に検討」
これについて、環境省は「いろいろな立場の人がさまざまな仮定を基に試算しているが、除染する面積などの前提条件で総額の見通しは大きく変わることが予想されるため、環境省としては試算をしておらず、コメントする立場にはない。『帰還困難区域』については、放射線量をどれだけ下げられるかなどデータを集めるための除染のモデル事業を行うことにしているが、地元住民の中には、帰りたい、もう帰れないのではないかなどさまざまな意見があるのが現状で、今後の除染については、こうした気持ちも考えながら慎重に検討する必要がある」とコメントしています。

除染の効果と進捗
除染を巡っては、その効果や進捗(しんちょく)の遅れが大きな課題になっています。
除染の効果を検証するため、NHKは福島県内の21市町村について、43の地区ごとの除染前と除染後の平均の放射線量のデータを入手して分析しました。
その結果、除染をしたあとも、放射線量が「これ以上だと除染が必要」とされている基準の値、年間1ミリシーベルト、1時間当たり0.23マイクロシーベルトを下回らなかったのが33地区と全体の77%に上っています。
中でも、原発に近く放射線量の高い「帰還困難区域」では、本格的な除染は始まっていませんが、試験的に行われた除染で、除染後の放射線量が基準の値の10倍から60倍程度にとどまっていて、放射線量を下げるのが特に難しいことが分かっています。
また、進捗率を見ても、避難区域の住宅地の除染は、環境省によりますと、ことし3月末の時点でおよそ3%に止まっているほか、NHKのまとめでは避難区域以外の住宅の除染の進捗率がことし6月末の時点で全計画戸数のおよそ8%で、原発事故から2年が経っても、除染がほとんど進んでいないことが分かります。