原発事故の避難区域のうち最初に除染の終わった福島県田村市では、6月23日に初めての住民説明会が開かれました※。
※ 6月24日「福島県田村市で除染が終了」
説明会では国が説明を行ったあと非公開で意見交換が行われましたが、その場で環境省は、目標値は「1日に屋外に8時間いた場合に年1ミリを超えないという前提で算出する」もので、実際に浴びる「個人線量」が年1ミリを超えないように各人が線量計を持って自己管理しながら自宅で暮らす、ということを提案していたことが、当日の録音記録から判明しました。
汚染地に永住するに当たって、被曝量が日中の8時間分のカウントで良いなどというのは机上の空論であって、やがてはミスト状の放射性物質が家屋内に侵入してくるので、そうなれば居間や寝室では放射性物質と至近距離で暮らすことになります。
また各人が実際に浴びる「個人線量」を自分で管理しながら自宅で暮らすなどという提案も論外です。
国が行った最初の説明会でこのような説明が行われたとは驚くほかはありません。
朝日新聞社の取材に対して環境省は発言を否定したようですが、それは発言が誤りであったことを認めたことにほかなりません。
以下に朝日新聞のスクープ記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
政府、被曝量の自己管理を提案 「除染完了」説明会で
朝日新聞 2013.6.29
【青木美希】政府が福島県田村市の除染作業完了後に開いた住民説明会で、空気中の放射線量を毎時0・23マイクロシーベルト(年1ミリシーベルト)以下にする目標を達成できなくても、一人ひとりが線量計を身につけ、実際に浴びる「個人線量」が年1ミリを超えないように自己管理しながら自宅で暮らす提案をしていたことが分かった。
田村市都路(みやこじ)地区は避難指示解除準備区域に指定され、自宅に住めない。政府が計画した除染作業は一通り終わったが、住宅地は平均毎時0・32~0・54マイクロにとどまり、大半の地点で目標に届かなかった。政府は今月23日に住民説明会を一部非公開で開いた。
朝日新聞が入手した録音記録によると、住民から「目標値まで国が除染すると言っていた」として再除染の要望が相次いだが、政府側は現時点で再除染に応じず、目標値について「1日外に8時間いた場合に年1ミリを超えないという前提で算出され、個人差がある」と説明。「0・23マイクロと、実際に個人が生活して浴びる線量は結びつけるべきではない」としたうえで「新型の優れた線量計を希望者に渡すので自分で確認してほしい」と述べ、今夏のお盆前にも自宅で生活できるようにすると伝えた。
説明会を主催した復興庁の責任者の秀田智彦統括官付参事官は取材に「無尽蔵に予算があれば納得してもらうまで除染できるが、とてもやりきれない。希望者には線量計で一人ひとり判断してもらうという提案が(政府側から)あった」と述べた。除染で線量を下げて住民が帰る環境を整える従来の方針から、目標に届かなくても自宅へ帰り被曝(ひばく)線量を自己管理して暮らすことを促す方向へ、政策転換が進む可能性がある。
環境省は取材に対して説明会での同省の発言を否定した。録音記録があり、多くの住民も証言していると伝えたが、明確な回答はなかった。