2013年7月25日木曜日

汚染水の海洋流出は なぜ22日に発表したのか

 東京新聞が「原発汚染水海へ なぜ発表は遅れたか」と題する社説を掲げました。
 高度に汚染された地下水の海への流出は、何よりもまず海が放射能で汚染され漁業などが出来なくなるという点で深刻ですが、今回は「なぜ発表は遅れた」の点に絞って論じています。

 ひとつは、井戸水の水位と潮位とが連動しているなどのことから、地下水が海に流出していると判断したことについて、「小学生にも思いつく」ことが、何故数ヶ月もまたはそれ以上にも渡って気づかなかったのかということです。
 これは気づかなかったのではなくて、東電はとっくに知っていたにもかかわらず、隠蔽体質から「データーがないので判断できない」と偽り続けてきたとしか考えられません。

 もうひとつはそれが18日以前に分かっていながら(原子力規制委は18日に東電から報告を受けていた)、なぜ参院選の投票が終わった22日になってから発表したのかということです。
 東京新聞は、投票日前に発表すると原発の大きなイメージダウンになり、選挙の結果にも影響し、その分再稼働が遠ざかる」と、東電が考えたからではないのかと疑っています。そしてそれを黙認した規制委の態度も不可解だと。
 大いにあり得ることで、原子力村の威力の前に萎縮している他のマスメディアでは書けないことがらです。

 原発事故の放射能被害を含めて、国民に出来るだけ真実を知らせないようにしながら、原発の再稼動を果たそうとするのは、もういい加減やめるべきです。
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【社説】 原発汚染水海へ なぜ発表は遅れたか
東京新聞 2013年7月25日
 汚染水はやっぱり海へ漏れていた。一カ月余、東電はなぜそれを認めなかったのか。発表はどうして遅れたか。漁師は怒る。あなた方は誰のために、どこを見ながら、事故の収束を図るのか、と。

 このタイミングは、何だろう。
 福島第一原発海側の観測井戸では五月以降、放射性物質の濃度が上がっていたという。今月に入ると、それが目立って高まった。港湾の海水からも高濃度の放射性トリチウムが見つかった。
 十日には、原子力規制委員会が「高濃度の汚染水が地中に漏れ出し、海へ広がっていることが強く疑われる」と指摘した。
 一方、東電は「データの蓄積がない」として、海洋への流出を認めず、具体的なコメントも避けてきた。ところが二十二日になって突然、汚染水が原発建屋の地下から海に漏れ出していることを初めて認めた。海の潮位が変わったり、雨が降ったりするのに合わせて、井戸の潮位が上下する。従って原発敷地内と海との間に水の行き来があると判断したという。毎日観察していれば、小学生にも思いつくことだろう。

 ではなぜ、これほど発表が遅れたのだろうか。
 二十二日といえば、参院選投開票日の翌日である。自民だけが、原発再稼働に前のめり、他党はすべて脱原発か、脱原発依存を掲げて戦う最大級の争点だった。
 海洋流出が明らかになれば、原発の大きなイメージダウンになり、選挙の結果にも影響し、その分再稼働が遠ざかるから-。東電は否定しているが、これまでの姿勢を見れば、このように疑われても、仕方がない。

 それにしても東電は、いったいどちらを向いて事故収拾に当たっているのだろう。
 不信が募れば募るほど、周辺の漁業に対する風評被害を助長してしまうのではないか。試験操業のデータを積み上げながら、漁が再開できる日を心待ちにしている地元漁民の思いを、誠実に受け止めてきたのだろうか。
 規制委は十八日に、東電から報告を受けていたという。原発規制に対する国民の信頼を高めるためにも、その時点で東電に公表を促すか、規制委として公表すべきではなかったか。
 今度のケースを教訓に、安全配慮の深さ、情報開示の迅速さなども、再稼働の判断基準にすべきではないか。規制委自身、安全文化の必要性を語っているのだから。