日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業※で、中堅ゼネコンの日本国土開発が福島県南相馬市で除染により生じた汚染水340トンを、昨年1月~2月、農業用水に使う川に流していました。流された放射性物質の総量は約1600万ベクレルです。
※ 平成23年度に内閣府が(独)日本原子力研究開発機構福島技術本部に委託し、高線量地域における除染の効果的な実施のために必要となる技術等の実証試験のために行われた事業です。
原子力機構は、川に流すことを知りながら排水経路に触れていない国土開発の計画書を了承し、それを地元南相馬市に提出していました。
それに対して南相馬市は「排水の説明はなかった。排水されたことも知らなかった」、と反発し、福島県も説明は受けていないとしています。
下請けの国土開発は「地元が了承していたものと理解していたが、そうでないとすればこちらの責任だ」と認めています。(以上 東京新聞7月12日朝刊)
その後の調べで、日本国土開発は、汚染排水を処理する水処理業者から不法な排水(放流)だと指摘されたのに対して激怒し、水処理業者が撮影した現場の映像を削除させていたことが分かりました。要するに不法と知りつつ放流していたわけです。(以上 東京新聞7月12日夕刊)
国の直轄事業である「除染モデル実証事業」で、こうしたデタラメが行われていたのは実はこれが初めてではなく、先にも森林の除染で、伐採した木の小枝を川に捨てたり、作業で汚れた靴や使用した工具類を川の水で洗ったりしているところを撮影されて、監督官庁である環境省が弁明に追われました。
除染を担当している日本原子力研究開発機構は、高速増殖炉「もんじゅ」を維持管理している会社で、この5月に原子力規制委から9,700件に及ぶ設備の整備不良を指摘され理事長が引責辞任したばかりです。
前身は動力炉・核燃料開発事業団で、もともと除染については何の技術もノウハウも持っていないにも係わらず国の除染事業の担当組織になったので、原子力村の力学によって、本格化すれば10兆円ともそれ以上にもなるといわれている除染の利権にありついたのだと言われて来ました。
猛省を促すしかありません。
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南相馬汚染水排水 下請けの忠告 耳貸さず
東京新聞 2013年7月12日夕刊
日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業(二〇一一~一二年)で、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京)が福島県南相馬市で生じた汚染水三百四十トン(同社推計)を、農業用水に使う川に流していた問題で、除染事業の下請けに入っていた水処理業者は一二年一月十六日、慎重な排水を要請したが、日本国土開発は耳を貸さず、逆に処理業者が撮影した現場映像の削除を強要したという。
この処理業者はNPO法人「再生舎」(さいたま市)のグループ会社。同月十二日に、担当区域だった南相馬市の立ち入り禁止区域にある金房小学校に入った。住民不在の現場で目の当たりにしたのは、汚染水が処理プラントに運ばれず、側溝に次々と流されていく光景だった。
小学校近くの宅地では、住宅塀の洗浄作業で出た汚染水が、通学路の砂利道に垂れ流しになっていた。作業員の一人が証拠を残そうと急いでカメラを回した。
国土開発の現場監督が、撮影に気付いたのは十五日。「国の実証事業だ。写真は全て消去しろ。できないなら帰ってよい」と迫り、データの一部を削除させた。
国土開発と処理業者は翌十六日、現場事務所で農業用水の問題などをめぐって協議。録音記録によると、現場監督は「これから(除染を)やろうというときに、ちくろうとする(密告しようとする)とは」と激怒。処理業者が、汚染水の排水をとがめると「次の本格(除染)で全部やる」と強調、再除染を理由に排水は続行された。
国の除染 農業用水に汚染水340トン
東京新聞 2013年7月12日 朝刊
日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業(二〇一一~一二年)で、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京)が福島県南相馬市で生じた汚染水三百四十トン(同社推計)を、農業用水に使う川に流していたことが十一日、共同通信の調べで分かった。原子力機構は、川に流すことを知りながら、排水経路に触れていない国土開発の計画書を了承、地元に提出していた。
南相馬市は「排水の説明はなかった。排水されたことも知らなかった」と反発。福島県も説明は受けていないとしている。放射性物質汚染対処特措法(特措法)は正確な情報伝達を求めており、環境省は調査に乗り出した。
原子力機構は「地元と合意書は交わしていないが、排水については口頭で説明したはず」と説明。国土開発は「機構が地元に説明をしたと聞いていたので、排水してもいいと理解していた。農業用水に使う川とは知らなかった」としている。
同社は一一年十二月~一二年二月、大成建設(東京)を中心とする共同企業体に加わり、国の除染特別地域に指定されている南相馬市立金房小学校と周辺を除染した。
共同通信が入手した国土開発の内部資料「回収水等の分析データ」と取材回答書によると、作業で出た汚染水六百九トンを回収。このうち、水処理業者が処理するなどした二百六十九トンとは別に、放射性物質を検出した三百四十トンを、一二年一月から二月にかけて側溝を通じ、南相馬市内を流れ水田に水を供給する飯崎川へ排水していた。経費節減が目的とみられる。「分析データ」によると、特措法の施行規則から、原子力機構が排水の目安として設けた放射性セシウムの管理基準(一リットル当たり最大九〇ベクレル以下)を超す一二一~一〇〇ベクレルの六十トンも含まれていた。流された放射性物質の総量は、一六〇〇万ベクレルに上った。だが、下水処理場のような常設施設からの排水ではないため、原子力機構はこの六十トンについては施行規則の対象外としている。
◆こちらに責任ある
<日本国土開発東北支店南相馬工事事務所の陣川幸雄現場代理人の話>
日本原子力研究開発機構が何回も地元に事業説明をしたので、(排水を)もうやっていいかなという理解だった。排水先が農業用水に使う川とは知らなかった。地元が排水を聞いていないというなら、こちらに責(任)がある。
<排水の管理基準> 放射性物質汚染対処特措法の施行規則(2011年12月)は、下水処理場のような常設施設の排水について「1リットル中の放射性セシウム134単独なら60ベクレル、137単独なら90ベクレル、混合の場合は60~90ベクレルの範囲」の各濃度以下と規制した。日本原子力研究開発機構はこれを「管理基準」とし、除染で生じた排水の目安とした。今回の日本国土開発の排水のうち12年1月5日、23日、2月4日の3回分はこの基準を超過したが、機構は、常設施設の排水ではないとして施行規則の対象外としている。