2015年7月31日金曜日

政府には原発攻撃から国民を守る気はない 山本太郎議員

 本記事は30日のブログ記事:「原発へのミサイル攻撃『想定ない』 規制委員長」の詳報に当たるものです。
 LITERAが、30日に行われた生活の党-山本太郎議員と安倍首相の質疑応答のポイントを、克明にレポートしているので紹介します。
 
 討論の過程で、弾道ミサイルで原発が攻撃された場合について、首相に代わって規制委の田中委員長が「川内原発1・2号機で何かが起こっても、放射線物質の放出量は「福島原発で放出された量の1000分の1以下」と想定していると答えています。
 被害の規模は検討していないという割には、何やら原発の事故は今後100万年に1回になるというのと同じ響きを持つ数字を出していますが、本当にそうなのでしょうか。
 戦術核ミサイルで原子炉本体や炉を冷却する設備がほぼ完全に破壊されても1000分の1以下に収まるというのであれば、福島原発のときに「もしも職員が退避すれば東日本が全て汚染される」といわれたあの事態は一体何だったというのでしょうか。
 
 田中氏の川内原発における「火山条項」の非適用についての説明や、楢葉町住民の帰還問題について、20ミリシーベルト以下の被曝は何の問題もなく、自主避難者にこれまで賠償金を払っていたのはおかしいなどという話を聞くと、とても信用の出来る人とは思えません。
 原発に対するミサイル攻撃が行われた場合の被害の規模は、日本の命運にもかかわることなのでキチンと根拠を示して説明して欲しいものです。
 
 なお、山本議員の質疑応答の動画は下記でご覧になれます。
       (動画URL 約11分)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
安倍首相が山本太郎に安保法制のインチキを暴かれた! 
政府はやっぱり国民の生命を守る気なんてなかった!
LITERA 2015年7月30日
 安保法制の審議が参議院に移るなり、安倍首相が中国を名指しした上、「場合によっては日本が先制攻撃することになる」などと言い出した。追い詰められた結果、本音を隠さなくなってきた安倍首相だが、昨日の国会では意外な人物の追及で、安倍首相と安保法制のデタラメが暴露されることになった。意外な人物とは、あの「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本太郎議員のことだ。
 
 山本がこの日、追及したのは、「原発にミサイルを撃ち込まれたらどうする?」というものだ。いくつかの前提確認の後、山本は、今年1月に提出した質問主意書と同じく「政府自身は九州電力株式会社川内原発発電所に対する他国等からの弾道ミサイルによる武力攻撃を想定していますか?」と質問する。
 すると、安倍首相から返ってきたのは案の定、「弾道ミサイルの脅威に対応するため各種のシミュレーションや訓練を行っている」としながら、「他国等からの弾道ミサイル攻撃に関する想定については、政府として特定の施設についてお答えすることは差し控える」という典型的なゴマカシ答弁だった。
 
 そこで、山本議員は「総理、さまざまな事態を想定し、各種シミュレーションを行っているそうでございますが、川内原発の稼働中の原子炉が弾道ミサイル等攻撃の直撃を受けた場合、最大でどの程度、放射性物質の放出を想定していらっしゃいますか?」と切り返す。
 しかし、この質問に答えたのは、名指しされた安倍首相ではなく、原子力規制委員会の田中俊一委員長。しかも、田中委員長は「弾道ミサイルが直撃した場合の対策は求めておりません」と回答したうえ、川内原発1・2号機で何かが起こっても、放射線物質の放出量は「福島第一原発で放出された1000分の1以下」と想定していると答えたのだ。
 
 シミュレーションしているといいながら対策は講じず、何かあっても放出される放射性物質は、見積もって福島の1000分の1くらい……。このいい加減な回答に、山本のツッコミが炸裂する。
「要はシミュレーションしていないんだと、シミュレーションしないんだということをおっしゃったんですよね?」
 「みなさん、どう思いますか? 弾道ミサイルが着弾したとする。そのほかにいろんなミサイルが着弾したとして、原子力施設破壊されて、福島の東電原発の1000分の1の放出量で済むと思いますか?っていう話なんです。思えませんよね」
 
 そして、「仮定の質問であり、お答えすることを差し控えたい」といった安倍首相に対しても、山本議員は「仮定の話って言っているけれども、やっぱり仮定の話っていうと、これ、答えるの難しいものなんですかね?」と水を向ける。すると、安倍首相から返ってきたのはまたぞろゴマカシ答弁だった。
「武力攻撃事態はですね、その手段、規模の大小、攻撃パターンが異なることからですね、実際発生する事態もさまざまであり、一概にお答えすることは難しいということでございます」
 しかし、こんなもので引き下がる山本ではなかった。ゴマカシを重ねる安倍首相に、安保法制の姿勢との矛盾を突きつけたのだ。
「でも、考えてみてください。今回の(安保)法案の中身、仮定や想定をもとにされてませんか?“A国がB国に攻撃をしかけた”“友好国のB国から要請があり、新3要件を満たせば武力行使ができるのできないの”、これ、仮定ですよね? 仮定でしょ。仮定でよくわからないとごにょごにょ言うわりには、仮定で物事をつくっていこうとしてるんですよ」
 
 「都合のいいときだけ仮定や想定を連発しておいて、国防上、ターゲットになりえる核施設に関しての想定、仮定、できかねますって、これどんだけご都合主義ですか?って話だと思うんです。“我が国を取り巻く安全保障環境、著しく変化”してるんでしょ? 飛んでくるかもしれないんでしょ、ミサイル。“中国が!北朝鮮が!”。いろんな話されてるじゃないですか。“10分で到達します!”。え、で、飛んできたときは? 何もできてませんよ。困りますよね。本気で守る気、あるんですか? この国に生きる生命、財産、幸福追求権守るんだったら、いちばん脆弱な施設、しかも核施設を、どのように防御するかを考えなくてはいけないのに、その(人びとを)逃がす方法も、1000分の1、100分の1? その程度の放出量でしかないなんて、これ、なんなんですか? 意味がわからない
 
 さらに、山本は、もし弾道ミサイルが川内原発に撃ち込まれたとき「防災計画作成の必要性は最大で何キロメートル圏の自治体に及ぶと想定していますか?」と質問を出していたというが、これに対する回答がなかったと言う。もしもの場合、どの範囲で避難をするか、もちろん考えられていなければいけない問題だが、大庭誠司・内閣官房内閣審議官の回答は、「事態の推移に応じて避難の範囲を決定する」というもの。“起こってから考える”と言っているのだ。この答えに、山本の怒りは頂点に達する。
「要は一度、被曝していただくという話ですよ。実測値で計っていくしかないっていう話ですよ。こんないい加減な話あるかよ」
 
 北朝鮮や中国の脅威を叫ぶばかりで、もっとも標的になると思われる原発に関しては何の検討も行っていない。津波であれだけの被害を出したのだから、弾道ミサイルだったらどれほどの被害になるか、そんなことは小学生でもわかる。そればかりか、国民に何かがあっても被曝してから考えると政府は言っているのだ。
 ようするに、安倍首相は「国民の生命を守るため安保法制は必要」と言いながら、国民の生命のことなど何も考えていないのだ。集団的自衛権も実際は「日本人にも命をかけさせてアメリカと対等になりたい」、そして「中国をやっつけたい」という危険な欲望に突き動かされた結果にすぎない。
 
 今回、山本の質問と追及はその安倍の本質を見事に暴き出した。事実、山本のほとんどの質問に、安倍首相はまともに答えることが出来ず、肝心のところはすべて田中委員長や大庭審議官に押し付けた。
 
 ただ、こうした山本の主張をまともに取り上げ、安倍首相を追及しようというメディアはほとんどないだろう。これまで、山本がどんな本質的な問題を突きつけても、永田町にいる「政治の専門家」と称する連中はまともに相手にしようとせず、「どうせ山本太郎だから」と冷笑を浴びせかけてきた。
 実際、今回もNHK『ニュースウオッチ9』をはじめ、ほとんどのニュースはこの山本議員と安倍首相のやりとりを一切無視した。比較的、安保法制の報道に力を入れている『報道ステーション』(テレビ朝日系)や『NEWS23』(TBS系)でさえ、である。
 だが、メディアは山本のことをトンデモ扱いして無視する前に、もう一度、「国民の生命を守るため」と戦争法案をゴリ推ししながら、原発がミサイルの標的になるケースは一切考えていない首相のことを考えたほうがいい。トンデモなのは、明らかにこっちのほうなのである。 (水井多賀子)