17日の「小出裕章ジャーナル」は次の3つのテーマについて語られています。
ひとつは「ウランはいずれ枯渇する」ということ、そして「日本でかつて人形峠でウラン鉱を採掘したときに、ラドンという放射能を帯びた気体が坑道に充満してやがて周囲の低地に向けて流れ出て、作業員や周辺の居住者を被曝させた」という話、それから「米国は原発においても世界を支配しようという戦略を持っていて、自分たちはもう原発には採算性がないので順次撤退していくが、その分を日本などに原発の装置を売り込むため、再稼動を強く求めている」という話です。
このうちウランの枯渇の問題については、ウランは採算性を持って掘り出せる埋蔵量が590万トンであるのに対して、現行では1年間に5.9万トンが消費されるので約100年で枯渇するということです。
埋蔵量との関係ではそうなりますが、実際には採掘量は年々急激に減少します。そうなると早々に需要に追いつかなくなって、原発が満足に動かせなくなるとともに、ウランの価格が急騰するので一層原発の採算性が悪化します。
英国の政策調査・開発研究所の役員ナフィーズ・アフメド氏が「ザ・ガーディアン」で発表した論文によれば、世界のウラン採掘量は2015年の5.9万トンをピークに減り続け、2025年には5.4万トンに減少、2030年になるとその採掘量は急激に減少し、最大でも4.1万トンにまで減少すると予想されるとのことで、このまま進めば2020年以降はウランの価格が絶えず上昇を続けることになり、2025年には世界の原発において燃料が手に入らないという事態になるとされています※。
※ 2013年7月14日 2020年代、高騰する核燃料で世界中の原発が崩壊
人形峠の件は今は閉鎖されているので問題はないとして、原発の存続について、米国が自分たちは採算性の点から撤退するが、日本が脱原発に踏み切るのは許さないという、まことに身勝手な話が出てくるのには驚かされます。しかしそれは終戦後、元読売新聞社主の正力松太郎氏を工作員に取り込んで日本に原発を普及させたときからの一貫した構想なのだと思われます。
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ウランは夢のエネルギーか? 「全部ウランでエネルギーを賄おうと思えば、10年でもうなくなってしまうというほどですね、まことに馬鹿げた貧弱な資源です」
〜第106回小出裕章ジャーナル 2015年01月17日
今西憲之: 小出さん、1月は小出裕章ジャーナル「原発はなぜいけないのか?」というシリーズをずっとお届けしてるわけなんですけれども。今日はですね、「ウランがないということについて」いろいろお伺いしたいと思っております。原子力の資源であるウランに注目したのは、それまでエネルギー源の中心だった「石油がなくなりますよ」というふれこみがあって、ウランの埋蔵量というのがどうなっているのかということからだったのですが、実際ですね、ウランの埋蔵量というのは足りてるもんなんでしょうか?
小出さん: 地殻の中にあるウランは現在の時点で言うと、採算が合って掘れるのは590万トンだと言われています。それで、去年1年間で5.9万トン使いましたので、約100年分で枯渇するということです。
今西: そうすると、決して無尽蔵にあるわけではないということですよね?
小出さん: もちろんです。むしろ、何でその100年分もつかと言えば、現在エネルギー全体の中でウランが占めてる割合なんて、せいぜい1割しかないからなんです。もし、その全部ウランでエネルギーを賄おうと思えば、10年でもうなくなってしまうというほどですね、まことに馬鹿げた貧弱な資源です。
今西: 昔、日本でも鳥取県と岡山県の県境ですね、人形峠でウランを一生懸命掘って、たくさんの放射性物質の残土なんかが出まして、とんでもないことになりました。小出先生もいろいろその時の住民の反対活動なんかにもご協力をされておられたわけなんですけれども、やっぱりウランを掘るということは、被ばくというリスクが、やはりどうしても付きまとうということなんでしょうか?
小出さん: もちろんです。ウランという物質そのものが放射性物質ですので、ウランを掘ってしまいますと被ばくしますし、ウランがあると、ラドンという、私達「娘核種」と呼んでいる放射性物質がまた生み出されてしまうのですが、それは、今西さんはご存知だと思うけども、昔『ゴジラ』という映画がずっと流れていた時にですね。
今西: はいはい。私もよく子供の時に観に行きました。観ましたね。はい。
小出さん: ラドンという怪物がその映画に出てきたことがあるのですが、空飛ぶ怪獣でした。放射性物質のラドンというのも完全な気体でして、空気中に出てきてしまうのです。ですから、ウランが深い地底に眠っていれば、そのラドンも地下に閉じ込められているのですが、ウランを掘り出してしまうと、そのラドンが空気中にどんどん飛び出してきてしまうことになりまして人々が被ばくしてしまいます。
今西: 確かに先程出ました人形峠でもですね、鳥取県の方では、そのラドンでかなり被ばくされた方がいらっしゃったということですよね?
小出さん: いわゆる鉱山では坑道というのを掘ってですね、労働者がその坑道の中に入って行って、ウランを掘ってきたわけですけれども、坑道の中はラドンが充満していましたので、鉱山の労働者がまずは被ばくをしましたし、坑道の出入り口ですね、そこからラドンが噴出してきまして、住民達の住んでいる集落にも流れ落ちてきていたという、そういうことで被ばくをしてしまいました。
今西: 小出さん、それで今日はですね、弁護士の猿田佐世さんにゲストでお招きしておりまして、ちょっと猿田さんからもご質問したいということでお願い致します。
猿田佐世さん: こんにちは。
小出さん: はい、こんにちは。
猿田さん: 私はワシントンを軸にいろんな日本の問題に、今どのようにアメリカが影響しているのかということを中心に見てきているわけなんですけれども。アメリカの企業からの圧力と、それからアメリカ政府からの圧力と両方あるかと思うんですが、それは、どのように働いているという風にご覧になっていますか?
小出さん: 日本というこの国はですね、私は米国の属国だとずっと発言をしていますけれども、政治的にも経済的にも、完全に米国の子分のような位置にあるわけで、特に原子力なんていうものは、強大な米国が世界を支配するために動かしてきたわけですし、原子力全体が米国の政治的あるいは経済的な思惑の下で動いてきたと思います。
猿田さん: 私、ちょうど3.11が起きた時には、ワシントンDCに住んでいたんですけれども、そこで、数多くの原子力関係の日本福島に焦点を当てたシンポジウムなんかもありまして、その中で、政府の役人さんは直接には言わないんですけれども、その元高官と言われるエネルギー庁副長官ぐらいのクラスの方が、「日本は今、原発を止めているけれども、早期に再稼働するべきだ」というような話を繰り返ししていてですね。こういったものというのは内政干渉と言いますか、非常に物凄く影響力があって、「日本は結局これに従っていくのかな」というふうに思ったんですけれど。
小出さん: 残念ながら、そうだろうと思います。
猿田さん: なるほど。そうすると、その政府からもやっぱり直接、政府なりそういう政策を決定しているアメリカの人々からも直接的な影響が、経済面ではなく政策としてあるというふうにご覧になりますか?
小出さん: 私は政治の専門家ではありませんし、政治の内情を知ってるわけではありませんけれども、私のこれまでの原子力に関する経験から言えば、当然そうだろうと思います。
猿田さん: なるほど。ちょっと私共「新外交イニシアティブ」では、実はですね、日米エネルギープロジェクトというのを立ち上げて、その辺りの連携と言いますか、原子力村が日米どのように広がっているかについて報告書をまとめていこうというふうにやっているものですから、ぜひ。
小出さん: ありがとうございます。勉強させて頂きます。
猿田さん: 逆にいつかインタビューさせて頂いて、こちらが知見を頂ければというふうに思っております。
今西: 小出さん、そんななかでですね、原発再稼働という点におきましてですね、やはり、日本はそうすると、アメリカの意向を無視することはできない。仮に、日本の総理大臣なり、しかるべき方が原発再稼働をさせないという発言等をするとやはり、かなりアメリカからプレッシャーがかかってくるというようなことになるんでしょうかね?
小出さん: 当然そうだと思います。例えば、鳩山さんという方が首相になって、普天間の移設先は必ず沖縄県外だと発言をした途端に、鳩山さんは追い落とされてしまったわけですし、原子力も多分そうなるだろうと思います。
今西: 原子力においては、アメリカの影響力が非常に強いというのは、これはやっぱりもう当初からそうだったんでしょうか?
小出さん: そうです。もともと米国は核兵器を作るために技術を開発したわけで、それが膨大にとにかく持ちすぎてしまって重荷になってきたので、商業的あるいは平和利用ということを標ぼうして世界に売りつけて、それで金儲けをしようということにしたのです。日本は第一の標的にされて、米国からどんどんどんどん原子力を買わされてきたということですし、簡単には抜けさせてもらえないです。
今西: なるほど。ただ一方で、アメリカでは非常に今、原発はできるだけ止めていこうというですね、ある意味逆の方向へアメリカの中では行っているわけですよね?
小出さん: もちろんです。米国の中では、もう経済性全くありませんので、原子力どんどん止めていくことになります。ただし原子力を簡単に止めてしまうと、米国の原子力産業ももちろん困るわけですから、海外に売りつけて生き延びを図るということになっているのです。
今西: なるほどね。分かりましたです。どうも小出さん、ありがとうございました。
小出さん: ありがとうございました。
猿田さん: ありがとうございました。