福島原発事故の避難者ら18世帯47人が国と東電に慰謝料などの損害賠償を求めて千葉地裁に提訴した集団訴訟で16日、原告の本人尋問が行われました。これは各地で起されている集団訴訟では初めてのことで、出廷した7人から避難生活の苦衷が語られました。
原告らは、避難による精神的苦痛を1人当たり月額50万円、故郷を失った苦痛を2000万円と換算して慰謝料などを求めています。
一方、被告の東電は2015年度の経常利益が1800億円に上る見通しです。火力発電所の定期点検や燃料調達の見直しなどのコスト削減が大きく寄与したもので、2014年3月期の1014億円から大幅に増えます。
重油調達の見直しとは、世界の中でもずば抜けて高い価格で購入しているのを、外部識者の指摘で見直したということで、こんなことはとっくの昔に行っておくべきことでした。あきれる話です。
集団訴訟の記事と東電の増益見通しの記事(12月17日付)を紹介します。
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福島原発集団訴訟:初の本人尋問 避難生活の苦しさ訴え
毎日新聞 2015年01月16日
◇千葉地裁 7人が出廷
東京電力福島第1原発事故の避難者らが国と東電に慰謝料などの損害賠償を求めた集団訴訟で16日、原告の本人尋問が千葉地裁(広谷章雄裁判長)で行われた。弁護団によると、各地の集団訴訟で初の本人尋問。7人が出廷し、避難生活の苦しさを訴えた。
原告の60代男性は、福島県内で郵便局員として40年以上働き、4世代9人の家族で暮らしていた。千葉県に避難後、ハローワークに30回近く通ったが、仕事は見つからない。「気力もなく、部屋にいるだけ。(集落で)つきあっていた人たちにも会えず、悔しい」と話した。
再び福島の別の町で暮らそうと考えることもあるが、除染作業が進んでいない状況では「娘や孫に『帰ろう』とは言えない」と述べた。避難生活の間に両親を亡くしたとも明かし、「知らない土地(千葉県)で亡くなってかわいそうです」。最後に裁判長に「(被災地の)現状と現場を見てください」と訴えた。
福島県浪江町から避難した会社員の男性(41)は帰郷を断念し、ローンで購入した千葉県習志野市のマンションで暮らす。中学生になる子供が2人おり、放射能に汚染された我が家はとても子供を連れて帰れる場所ではなかった。法廷で「苦渋の決断だった」と振り返り、「古里を返してほしい」と話した。
千葉地裁の原告は18世帯47人。避難による精神的苦痛を1人当たり月額50万円、故郷を失った苦痛を2000万円と換算している。請求額は計約21億円。【松谷譲二】
東京電力:原発ゼロでも増益 経常益1800億円見通し
毎日新聞 2014年12月17日
東京電力の2014年度通期の連結業績見通しは、経常利益が1800億円前後に達することが17日分かった。火力発電所の定期点検や燃料調達の見直しなどのコスト削減が大きく、14年3月期の1014億円から大幅に増える。東電はこうした収支状況を踏まえ、経営再建に向けて検討していた電気料金の再値上げも当面見送る方向だ。いずれも17日午後の取締役会で決定し、公表する。
東電は今年1月に策定した再建計画(新総合特別事業計画、新総特)で、今年7月以降に原発4基が順次再稼働したという前提で、経常利益を東電単体で1677億円確保するとの見通しを明らかにしていたが、連結での見通しは公開していなかった。今回、原発の稼働なしで前期を大幅に上回る黒字を確保できることになる。コスト削減以外では、天候不順により夏の冷房需要が増えなかったため、老朽化して燃費効率の悪い火力発電所の燃料費を抑えることができたことが主な要因という。
東電は、再建計画で重視していた柏崎刈羽原発の再稼働が、困難な状況になっていた。そのため9月に、外部の有識者を交えた「生産性倍増委員会」をつくり、コストの追加削減について検討を重ねてきた。【安藤大介】