福島原発の事故をめぐり、検察審査会が「起訴すべき」と議決した東京電力の勝俣元会長ら3人について、東京地方検察庁が改めて不起訴にしたことに対して、福島原発告訴団は「大変憤りを感じている」との声明を発表しました。
記者会見で、海渡雄一弁護士は「津波の規模について予見できたとする証拠が多数出てきたために、今度は結果の回避可能性に論点を移した」とし、河合弘之弁護士は「いかに不起訴のしようかという理由ばかり考えて、正義を実現しようと言う気迫がまったく感じられない」と検察庁の姿勢をそれぞれ批判しました。
22日付のOurplanet の記事を紹介します。
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東電幹部、再び不起訴〜告訴団「被害者は救われない」
Ourplanet 2015年1月22日
福島第一原子力発電所の事故をめぐり、検察審査会が「起訴すべき」と議決した東京電力の勝俣元会長ら3人について、東京地方検察庁は改めて不起訴にした。これに対し、東電幹部らを告訴・告発した福島原発告訴団は「大変憤りを感じている」との声明を発表した。
福島の住民らでつくる「福島原発告訴団」が2012年6月、福島第一原発の事故の刑事責任を求めて東京電力の旧経営陣らを告訴・告発している問題で、東京地方検察庁はおととし、全員を不起訴と判断。しかし昨年7月、東京第五検察審査会が、東京電力の勝俣恒久元会長(74)ら旧経営陣3人について「起訴すべき」と議決していた。このため、東京地検は再捜査を進めていたが、22日、改めて不起訴にした。
東京地検は不起訴にした理由について、「東京電力は平成20年に東日本大震災と同じ規模の高さの津波をみずから試算していたが、原子炉建屋付近の実際の浸水の深さは試算結果の数倍になっている」「原発事故の前に今回の規模の津波が発生し、原発の主要機器が浸水する危険性を認識すべき状況にあったとは認めがたい」と説明している。
「被害者は救われない」〜告訴団の武藤類子さん
東京地検による再度の不起訴処分に対し、福島原発告訴団は東京地裁と福島県庁で記者会見を開いた。告訴団の団長・武藤類子さんは「大変がっかりし、憤りを感じています。東京地検は果たして、被害者の側に立っているのだろうか。」「私たち被害者は救われない。再び検察審査会に告訴する。検察審査会の市民の良識を期待したい。」と涙を浮かべながら訴えた。
また、弁護団の海渡雄一弁護士は「検察審査会は予見可能性を重視していたが、さすがに予見できたことは証拠が多数出てきたために、結果の回避可能性を言ってきた。正直いって、へりくつだと思う。」と批判。また河合弘之弁護士は「いかに不起訴のしようかという理由ばかり考えて、正義を実現しようと言う気迫がまったく感じられない。最悪だ」と検察庁の姿勢を指弾した。同告訴団は明日23日の12時から、東京地検前にて抗議行動を行う予定だ。
再び検察審査会へ
東京地検の決定を受け、検察審査会は2回目の審査を行う。3人を再び起訴すべきと議決した場合には検察官役の指定弁護士が強制的に起訴することになる。審査するのは、去年7月に「起訴すべきだ」と議決した東京第五検察審査会。
審査員11人中8人以上の賛成で「起訴すべきだ」と議決した場合は、検察官に代わって、裁判所が指定した弁護士が強制的に起訴することになる。
福島原発告訴団の声明
東京地検による再度の不起訴処分に対し、大変憤りを感じています。
7省庁や推本など、国の機関が福島沖の大津波を想定するよう発表しており、東電は貞観型の津波が敷地を超える可能性があり、対策が必要だという認識を持っていたことが明らかになっています。
重要設備の高台設置や建屋の水密化をしても浸水被害を防げないとしていますが、浸水をしても冷温停止にこぎつけるだけの対策がされていれば、被害は最小限に抑えることができました。何も対策を取らなかったことの責任が問われなくてよいのでしょうか。
どこまでを予見できたとするか、被害を回避できたかどうかを、地検の密室の中の判断に任せてよいのでしょうか。公開の裁判の中で判断されるべきではないでしょうか。地検は一度目の不起訴処分の説明の際も、「東電は捜査に協力的だったから強制捜査をしなかった」と答えるなど、被害者に向き合わず、加害者の方を向いています。
検察審査会の起訴相当の議決は国民の意思を表しています。その議決を検察は無視したことになります。
再度、検察審査会の判断に期待します。検察行政のチェックを市民が行います。市民による検察審査会の良識を信じています。
この事故の責任がきちんと司法の場で問われることを、被害者は心から望んでいます。
2015年1月22日
福島原発告訴団団長 武藤類子
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