福島原発事故においては、東電が2008年にいわゆる「佐竹論文」※をもとに津波評価をした結果、高さが10mを超える可能性を認識し、翌年には保安院にも報告していたことが、政府事故調の調査の中で明らかにされています。
※ 「石巻・仙台平野における869年貞観津波の数値シミュレーション」
佐竹健治,行谷佑一,山木 滋(2008)
被害者約2000人が参加する「生業を返せ、地域を返せ!」の福島原発訴訟において、原告団は政府事故調の報告に基いて「2008年10月に被告東京電力が行った試算によれば、福島第一原発1~4号機で津波水位8.7m、6号機では9.2m、しかも不確実性を考慮すれば2~3割程度津波水位は大きくなる、との結果が示された」、「また、2010年には、浪江町請戸地区で貞観津波の堆積物が発見された」ことを明らかにし、そのもとの文書を提示するように迫っています。
それに対して東電側は原文書が見当たらないなどの理解不能な口実で提出を拒んだのに対して、福島地裁は証拠文書を提出するように指揮しましたが、東電はいまだに文書の開示を拒否しているということです。
そこまで頑なに拒んでいるのは、その文書の持つ重大性を熟知しているからに他なりません。
福島原発告訴団は13日、原発敷地への大津波襲来の可能性を認識しながら対策を怠った業務上過失致死傷容疑で、東京電力と旧経済産業省原子力安全保安院の担当者ら9人を東京地検に告訴・告発しました。
対象は東電3人、旧保安院4人、旧原子力安全委員会と電気事業連合会の氏名不詳の各1人です。
2011年3月11日に実際に起きた巨大津波が2008年の段階で予見されていたにもかかわらず、全く何の対応も取らなかったりあるいはその可能性を取り上げることを抑圧したりしたことがここまで明らかにされたのに、検察がまたまた不起訴処分にするなどということは、今度こそ出来ないのではないでしょうか。
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<圧力発言>旧保安院職員ら9人告訴・告発
河北新報 2015年1月14日
福島第1原発事故で福島原発告訴団は13日、原発敷地への大津波襲来の可能性を認識しながら対策を怠った業務上過失致死傷容疑で、東京電力や旧経済産業省原子力安全保安院の担当者ら9人を東京地検に告訴・告発した。対象は東電3人、旧保安院4人、旧原子力安全委員会と電気事業連合会の氏名不詳の各1人。
告訴・告発状によると、東電の3人は想定を超える津波襲来の可能性を把握しながら旧保安院に正確に伝えず、対策を先送りした。旧保安院のうち2人は、遅くとも2010年ごろには宮城県などを襲った貞観津波(869年)クラスの大津波襲来を懸念しながら東電に十分な対策を指示しなかったり、政府の事故調査・検証委員会にうその供述をしたりした。
旧保安院の他の2人は、第1原発3号機でのプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料利用の「プルサーマル」を推進したい電事連などへの配慮から、津波対策を上申した部下に「安全委と手を握っているから余計なことは言うな」「あまり関わるとクビになる」などと圧力をかけた。
東京都内で記者会見した告訴団の河合弘之弁護士は「当時の規制当局の責任追及に踏み込む意義は大きい」と話した。
告訴団は12年6月、勝俣恒久元会長らを同容疑で告訴・告発、東京地検が不起訴処分としたが検察審査会が「起訴相当」を議決し、地検による再捜査が続いている。