河北新報 2016年02月14日
◎学習環境への影響長期化
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島3県の35市町村で、プレハブ仮設住宅から学校に通う小中学生は約3800人に上ることが13日、各教育委員会への取材で分かった。住宅再建の遅れや原発事故避難のため、仮設から通う子どもの割合が40%以上の自治体もあり、震災5年を前に、学習環境への影響長期化が懸念されている。
多賀城、仙台、岩沼、南相馬、いわきの5市と、福島県川俣町、同県飯舘村はプレハブ仮設住まいの子どもを集計しておらず、実態はさらに多いとみられる。狭い仮設は子どもたちのストレスなど成長への悪影響につながるとの指摘があり、放課後学習の場を提供するといった環境改善が求められる。
津波被害に遭った沿岸部と原発事故後に避難区域となった42市町村を対象に、昨年5月1日時点の小中学生数を聞いた。未集計を除く35市町村の総数は約6万6千人。
プレハブ仮設の子どもの県別内訳は、岩手が12市町村1267人、宮城が12市町2007人、福島が11市町村522人。
中心部が壊滅的被害に遭った宮城県女川町は、全体の41%が仮設住まい。岩手県大槌町では2012年度に比べ150人以上減ったが、29%が仮設住まいだ。よりよい学習環境を求め、子育て世代が町外に引っ越す要因にもなっている。
福島県富岡町は、原発事故で避難区域となった影響で同県三春町に小中学校を移転。この学校に通う39人中16人は仮設住宅に住んでいる。ほかの避難先で学校に通う児童生徒もいるとみられ、町教委は「仮設暮らしの子どもはもっといるはず」と話す。
プレハブ仮設は一般の住宅より狭く、物音が響きやすいため、学習面の弊害も。高校受験を控えた中学3年の息子を持つ東松島市の女性(42)は「4畳半の部屋を兄弟2人で使っている。落ち着いて勉強できる環境ではない」と嘆いた。
宮城県義務教育課の桂島晃課長は「生活基盤が安定せず、不安を抱える子どもは多い。学習環境や相談態勢を整え、一人一人に寄り添うことが必要だ」と話した。
[仮設住宅と子ども]仮設住宅は災害で自宅を失った被災者に自治体が無償で提供する。プレハブの長屋形式が多く、標準的な広さは1戸当たり29・7平方メートル。子育て世代にとっては狭く、隣に音が響きやすいためストレスになりやすい。換気の悪さでカビが発生し、子どものアレルギー疾患への影響も指摘される。入居期間は原則2年間だが、東日本大震災では復興の遅れから大幅に延長している。岩手、宮城、福島3県のプレハブ仮設には1月末時点で約5万9千人が入居している。