放射性「指定廃棄物」について、環境省は17日、宇都宮市で開かれた栃木県内25市町の副市町長会議で、放射性セシウム濃度が基準(キロあたり8000ベクレル)を下回った場合、通常のごみと同等な扱いになるという新たな仕組みを提案しました。その場合責任の主体は国から市や町に移ることになります。
とはいえ、事故前にはキロ当たり100ベクレルが(低レベル)放射性廃棄物とされてきたものが、事故の発生で一挙に80倍に引き上げられた経緯があるので、8000ベクレルを下回れば問題がないと言われてもそう簡単には受け入れられません。
稲わらなどを焼却すれば空中への放射能の飛散が懸念されるし、焼却して得られる灰は高濃度放射性廃棄物になることは明らかです。
避難指示区域の指定を解除しても、放射能汚染地域の問題がなくならないのと同様に、基準を下回ったからといって汚染の問題が解消するわけではありません。国は最後まで責任を持って解決に当たるべきでしょう。
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指定廃棄物解除とは 時間たてば濃度低下も処分に問題点
東京新聞 2016年2月18日
指定廃棄物の解除とは何を意味し、どんな影響が考えられるのか。ポイントを整理した。
Q 県内にはどんな指定廃棄物があるの。
A 東京電力福島第一原発事故で汚染された焼却灰や稲わらなどがある。通常の廃棄物と区別するため、環境相が特別に指定するので、こう呼ばれている。現在、県内には約一万三千五百トンが約百六十カ所に分散して一時保管されている。
Q なぜ今、指定を解除する話になっているの。
A セシウム濃度は時間とともに下がる。県内では指定の時に測定したきりなので、一部は既に基準値以下になったと考えられる。こうした廃棄物は、既存の施設で安全に処分できるということになる。
Q 指定を解除したら、国の責任はなくなるのか。
A 法的にはなくなる。ただ、国は解除後も技術面や資金面の支援を続ける方針だ。受け入れ先探しが難航する場合には、相談に乗るそうだよ。
Q 茨城県では、指定廃棄物を現状のまま分散して保管し続けることが特例で認められたようだけど、栃木県は違うの。
A 栃木の指定廃棄物量は茨城の四倍近くで、六割が稲わらや牧草などだ。これらは腐敗しやすく、焼却するとセシウム濃度が上がる。また、茨城は保管場所の九割超が公共施設だが、栃木は大半が農家や民間業者で、「早く処分してほしい」という声も根強い。
Q 栃木県内に一カ所の処分場を造る国の計画は変わらないということか。
A 国は引き続き、候補地がある塩谷町に処分場計画への理解を求めていく考えだ。ただし町は計画に強く反対しており、「指定解除を含む一切の議論に加わらない」としている。
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指定解除新ルールに懐疑的な声 宇都宮で25副市町長会議
東京新聞 2016年2月18日
高濃度の放射性物質を含む「指定廃棄物」をめぐり、環境省は十七日、宇都宮市で開かれた県内二十五市町の副市町長会議で、放射性セシウム濃度が基準を下回った場合、指定を解除できるという新たな仕組みを提案した。しかし、市町が自前で処分場を探すのが困難という課題もあり、市町からは「国の責任逃れだ」などと新制度に懐疑的な声が相次いだ。 (大野暢子)
会合に出席した環境省の室石泰弘・放射性物質汚染廃棄物対策本部長は、指定解除の手続きについて解説。国が指定廃棄物のセシウム濃度を一キログラム当たり八〇〇〇ベクレル超と定めていることを踏まえ、「基準以下なら通常のごみと同じ方法で処分できる」と述べた。
指定が解除になると、処分の責任は国から市町などの一時保管者に移ることも明言。ただし、「国と一時保管者との協議が整うことが前提」とし、地元の意に反する解除はしないとした。
こうした説明に、出席者からは新制度の実効性を問う声が続出。那須町の山田正美副町長は「(民間や公共の)処分場には、廃棄物の受け入れ時、八〇〇〇ベクレルより厳しい基準を設けている所が多い」と、処分へのハードルの高さを訴えた。
那須塩原市の山田隆環境対策課長も「市内では今も基準以下の廃棄物の一部が処分できていない。保管者の負担は大きく、早く処分してほしい」と要望した。
別の市町からも「指定解除というレッテルの付いた廃棄物を処分事業者は受け入れないだろう」「国の責任をもっと明確にしてほしい」などの指摘があった。
国は県内一カ所の処分場を造る方針を堅持する一方、廃棄物の総量を減らして処分を加速させる狙い。室石本部長は「意見は受け止めた。(国は解除後も)最後まで寄り添う」とした。
国は今後、関係する地域の意見や疑問を集約し、国内で広く意見を公募する「パブリックコメント」などを経て、正式に指定解除の手続きを始めるという。