エネルギーの専門家である飯田哲也氏にドイツ国際放送がインタビューしました。
ブログ:「星の金貨プロジェクト」がその書き起こしを載せましたので、紹介します。
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日本のゲンパツは持続可能なエネルギーでも無い、民主主義的選択でも無い
admin 星の金貨プロジェクト 2016年2月8日
福島第一原発の事故以前のレベル近くまで、原子力発電所のフル稼働を強く推進する安倍政権
地震が多発する国土において、原子力発電所は本当に安全を確保出来るのか
日本の原子力発電ロビー、いわゆる原子力ムラの政治的影響力の強さというのは、どの程度のものなのか?
ガブリエル・ドミンゲス / ドイツ国際放送 2016年1月29日
国民の多くが依然反対しているにもかかわらず、安倍政権は国内の原子炉の全面再稼働を強く求め続けています。
エネルギーの専門家飯田哲也氏がその背景にあるものについて、ドイツ国際放送に解説してくれました。
日本は2011年の福島第一原子力発電所の事故を受け、国内のすべての原子炉を停止させました。
福島第一原発の事故では大量の放射性物質が放出され、そのために未だに160,000に昇る人々が避難を強いられたままとなっています。
しかし2014年、安倍晋三首相の政権は原子力を段階的に排除するという前の政権の決定を覆しました。
安倍政権は安くて入手可能なエネルギーを提供することが必要なのだと主張しました。
福島第一原発の事故発生以前、日本は電力供給の約3割を原子力発電に依存していましたが、現在は価格の高い液化天然ガスと輸入原油による火力発電が主体となっています。
安倍政権は2030年までに、原子力発電による電力供給割合を20~22パーセントまで引き上げる計画を進めています。
しかし、原子力エネルギーへの一般国民の反対は不変のままです。
東日本大震災と福島第一原発事故の災害の記憶は未だに国民の中で生々しく、特に地震が多発する国土において原子力発電所が本当に安全を確保出来るのかどうか、大きな懸念を抱いています。
関西電力は福島第一原発の事故の後改定された安全基準をクリアしていることが確認され次第、国内で第3番目となる原子力発電所の再稼働計画を発表しました。
ドイツ国際放送によるインタビューの中で、持続可能エネルギー政策の専門家である飯田哲也氏は、日本の原子力産業界のロビーは経済的動機だけでなく、今後の日本のエネルギー政策の中で原子力発電にこれからも重要な役割を担わせていくという、保守的な強い信念に基づき再稼働を進めていく方針を持っているのだと語りました。
(Q)ドイツ国際放送:日本国民の多くが反対しているにもかかわらず、なぜ日本政府は原子力発電所の再稼働を進めようとしているのでしょうか?
(A)飯田哲也:日本の特定の人々の間には、原子力発電は発電手段の中で最も重要な構成要素のひとつであるという強い確信があります。
この時代遅れで頑迷固陋なエネルギー政策のコンセプトは日本の電力業界の中枢にいる勢力、たとえば政権与党の自民党、実業界の強力な政治団体である経団連などによって共有されています。
彼らにとって、原子力発電の再開は最重要課題なのです。
こうした背景があり、日本政府は原子力発電の再開を強く迫られたのです。
(Q)安倍首相率いる保守政権は、日本国民の原子力発電に対する懸念に誠実に向き合うつもりはないのでしょうか?
(A)安倍首相が国民の懸念に誠実に向き合おうとしているとはとても思えません。
私の見解では、福島第一原発の事故の後でさえ、安倍首相は原子力発電が安全、安価、そして安定したエネルギー源だと信じています。
原子力発電に反対の立場の人々によれば、日本国民の多くは原子力発電所の再稼働によって生じる様々な潜在的危険に対し大きな懸念を抱いており、エネルギー政策の転換を求めています。
(Q)ではなぜ安倍政権の再稼働推進政策に対し、一般国民の間に反対が拡大しないのでしょうか?
(A)日本の大多数の人々は、原子力発電所の再稼働を推進する安倍政権の方針に反対しています。
しかしその事が、自分たちの政治的な立ち位置や選挙の際の投票行動に結びついてはいないというのが現実です。
安倍政権による日本国内のメディアに対する締めつけも、原子力発電の再稼働推進政策に対する一般国民の抵抗が盛り上がらない事の減員のひとつになっています。
(Q)日本の原子力発電ロビー、いわゆる原子力ムラの政治的影響力の強さというのは、どの程度のものなのでしょうか?
(A)経済的利益だけでなく、今後の日本のエネルギー政策の中で原子力発電にこれからも重要な役割を担わせていくという、保守的な強い信念が存在しています。
(Q)現在原油価格を始めとする化石燃料は価格が下落し、輸入代金も下がっています。
しかし安倍政権は原子力発電は発電コストが安いだけでなく、発電燃料を輸入に頼る必要が無く、独立したエネルギー政策の立案を可能にすると主張しています。
再生可能エネルギーも同様に日本のエネルギー政策の独立を可能にするでしょうか?
(A)再生可能エネルギーは、日本のエネルギー政策の独立運営を可能にするのはもちろんです。
しかも再生可能エネルギーは日本のエネルギー政策の独立運営を可能にするだけでなく、雇用を創出し、経済成長に貢献し、さらには気候変動問題の最終的解決手段にもなります。
(Q)日本のように高度に工業化した国家に最もふさわしい再生可能エネルギーとは、具体的には何でしょうか?
(A)自然条件を考えると、日本に最もふさわしいのは風力、そして太陽光発電です。
(Q)現在近隣のアジア諸国では多数の原子炉を建設中です。
これらの原子炉の受注競争が行なわれた場合、日本の原子炉建設受注能力は高いと思われますが、それでも日本は完全に原子力発電から手を引くことはできるのでしょうか?
(A)大丈夫です。日本は原子炉建設を受注できなくなっても、充分な経済力を保つことが可能です。
現実を見ても、原子力発電にしがみつく経済構造はもはや時代遅れであるという事が可能です。
再生可能エネルギーは21世紀の新たな産業革命の象徴なのです。
(Q)あなたご自身は原子力発電の専門家であるはずですが、再生可能エネルギー推進の立場に変わられた理由は何ですか?
(A)それは原子力発電が持続可能な発電手段でも無いし、民主主義的選択でも無いからです。
だからこそ、私自身の人生の中で原子力発電に見切りをつけたのです。
代わりに、再生可能エネルギーの推進と発展にこの身を捧げる決心をしたのです。
※飯田哲也氏は、日本の持続可能エネルギー政策研究所の責任者です。