柏崎刈羽原発の地盤は、地下200~300mのところにある岩盤の上に 柔らかい地層が積み重なったもので、「豆腐の上の原発(軟弱地盤の上の原発)」と呼ばれています。
2007年の中越沖地震で2058ガルという史上最大の加速度が実測されたのはそのためで、地面は数十センチも上下に波打ち、建屋隣接の変電設備が火災を起こしたのをはじめ発電施設の約3600個所が損壊しました。そのため4年後まだ復旧ができないうちに東日本大震災を迎えました。
その柏崎刈羽原発の再稼働申請が東電から出され、規制委が最優先で審査する中で基準地震動2300ガルは1月29日に了承され、この12日にはタービン建屋下を通るF-5断層は活断層ではない(=12万年以降には動いていない)と認定されました。
そもそも活断層か否かの判定は地震時に激烈な震動が原発を襲うかどうかを占うものなので、現実に激甚な被害を与えた地震を経験した地域に形式的に適用してみても意味はありません。また実測2058ガルに対して耐震の設計基準値を2300ガルに設定したのも、余裕が少な過ぎてとても頷けません。
いずれにしても現実にはこのようにして進められているので、規制基準合格を規制委が出すのは時間の問題となりました。
1月20日、日本共産党新潟県委員会が「柏崎刈羽原発の再稼働をストップさせましょう」とする声明を発表しました。
声明は、「原発を停止しても地域経済が疲弊することはない」に始まって、規制基準のいい加減さや原発の危険性について詳細に論じていて、住民が迅速に避難できない惧れについても指摘しています。
また「フィルター付ベント」がきわめて低性能であるという最近明らかにされた問題も取り上げています。
このたび声明文を入手しましたので以下に紹介します。
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柏崎刈羽原発の再稼働をストップさせましょう
-地域経済への効果も限定的、電気は足りています-
2016年1月20日
日本共産党 新潟県委員会
福島第一原発事故は、いったん重大事故が起きれば現在の技術では制御できず、取り返しのつかない「異質の危険」があることを示しました。ところが、原子力規制委員会は柏崎刈羽原発6、7号機の審査を最優先ですすめ、今年早々にも適合判断を出すと伝えられています。安倍内閣と東京電力は、再稼働にむけて突き進んでいます。
再稼働反対が多数
この約2年間、原発稼働ゼロでも電力は足りていました。
「新潟日報」の世論調査(昨年12月20、21日報道)では、再稼働「反対」「どちらかといえば反対」の合計が47・4%で、「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせた23・4‰の2倍でした。また今後については、「説原発」の声が7割を超えています。
柏崎刈羽原発の再稼働ストップは、県民の世論と運動にかかっています。7月には参院選、10月には県知事選が行われます。「再稼働ストッブ」の一点で、立場をこえて力を合わせようではありませんか。
1 「原発停止で地域経済が疲弊」は根拠のない〝神話″
67%の企業が「原発停止影響ない」、「定期的受注1割余」 ―「新潟日報」(15年12月13日)が、柏崎刈羽原発の地域経済への影響調査を公表しました。地域経済ヘの効果は建設時の「一過性」「地元企業の成長につながっていない」とし、「長期停止で地域経済が疲弊」しているという説は 「″神話″だった」と報じています。 廃炉をきっぱりと決断してこそ、再生可能エネルギー、農林漁業や観光、既存の中小企業への思い切った支援へと転換できます。原発の廃炉事業は、長期に仕事や雇用もつくります。原発立地の地域経済への支援は、国の責任です。
大きな可能性をもつ 再生可能エネルギー
全国の再生可能エネルギーの導入可能量は、原発発電能力の約40倍です。新潟県の潜在的な自然エネルギーの発電量は、太陽光、風力、地熱、中小水力の合計で1440万キロワット。柏崎刈羽原発の1・8倍です。新潟県にはさらに、豊かな森林資源があります。再生可能エネルギーは、地域経済の活性化、地元中小企業の仕事と雇用を増やします。
ところが今、安倍内閣が、再稼働しなければ電源立地地域対策交付金が減額になるように算定方法を変更し、とくに新潟県の減額幅が最も太きくなるよう画策していることは誠に重大です。
どこまでも原発に縛りつけておこうとするこんなやり方を、絶対許してはなりません。
2 〝豆腐の上の原発″を動かしてはならない
2007年の中越沖地震では、原発の敷地で震度7を記録し、火災や3000ケ所以上のトラブルが発生しました。
柏崎刈羽原発の基準地震動は2300ガルです。東海・東南海地震の震源の真上に立地する浜岡原発でさえ2000ガルです。これを見ても、柏崎刈羽原発は巨大な地震が襲う可能性のある原発なのです。
柏崎刈羽原発は、硬い岩盤が深く、その上に200~300メートルもの軟らかい地層があり、その上に建設されています。「豆腐の上の原発」と呼ばれる由縁です。
原子力発電所の新基準地震動と旧基準地震動(単位:ガル)
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原発名
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柏崎刈羽
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浜岡
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福島第一
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高浜
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伊方
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川内
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新
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2300
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2000
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600
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700
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650
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620
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旧
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450
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600
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370
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370
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473
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372
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地下水は福島第一原発の8倍、活断層の危険性
柏崎刈羽原発の敷地内には、福島原発の8倍もの地下水が流れ込んでおり、事故でこの地下水が汚染されれば、日本海は甚大な影響を受けます。
柏崎刈羽原発の敷地内には、20万年から30万年前に動いた断層が原発直下も含めて23本もありますが、東京電力は、「規制基準は12~13万年。活断層ではない」と主張しています。
しかし、文部科学者の地震調査研究推進本部は、活断層の目安を40万年としています。この基準からいえば、敷地内の断層は明確な活断層です。
7基 821万キロワット の世界一の集中立地 同時多発事故の危険性
福島原発事故独立検証委員会は、福島第一原発は「6つの原子炉と7つの使用済み燃料プールが接近して配置」され、「危機は次々と拡大」したと述べています。
原子炉や核燃料プールが多くなるほど危機的な状況が多発し、出力が大きくなるほど重大事故のときに放出される放射能も大量になります。世界一の集中立地である柏崎刈羽原発は、世界一の危険性をかかえた原発です。
増え続ける 使用済み核燃料
柏崎刈羽原発の使用済み核燃料「貯蔵プール」は、2・3年~3・1年で満杯になります。
東京電力は青森県むつ市に「使用済燃料中間貯蔵施設」を建設していますが、核燃料サイクル政策は完全に行き詰まっています。「トイレなきマンション」の原発は、止める以外にありません。
東京電力に 原発運転の資格はない
福島第一原発事故の除染費用は東京電力の負担ですが、東京電力は2013年末以降の計画分について、環境省の請求を拒否しています。被害が続いているにもかかわらず、被災者への賠償も支援も打ち切る姿勢です。
2002年には重大な事故隠しが発覚し、東京電力のすべての原発が運転停止に追い込まれました。最近も、規制基準の敷設違反ケーブルが全7基で1049本にものぼることが発覚しました。もはや、東京電力には、原発を運転する資格がありません。
3 「新規制基準」 ― 「世界で最も厳しい基準」は大ウソ
安倍内閣は、「新規制基準」は「世界一の厳しい基準」と言っていますが、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「新基準の審査をクリアしたからといって安全というわけではない」と何度も明言しています。
「新規制基準」をテコに、新たな「安全神話」が始まっています。
放射能の大量放出を前提にした「フィルター付ベント」
「フィルター付ベント」の設置そのものが、「放射性物質を閉じ込める」という政策の放棄です。
東京電力は、「1000分の1程度に減らせる」と説明しますが、新潟県のシミュレーションでは6分の1程度であり、60キロ以上離れた新潟市や糸魚川市、南魚沼市などにも影響が及ぶことが明らかになりました。
原子炉本体や計測機器は従来のまま
福島第一原発事故では、原子炉の水位計、温度計、圧力計など計測機器の故障が続出。冷却水の水位を4メートルと判断していたが、実際はわずか60センチということもありました。新規制基準では、計測機器は従来のままとされています。
海外では、溶けて流れ出した核燃料を格納容器内に止めて冷却する「コアキヤッチヤー」や、テロや航空機の事故に備える「二重の格納容器」が標準装備ですが、新規制基準では、これらも従来のままとしています。「世界で最も厳しい基準」というのは大ウソです。
安全上重要な系統の国際比較
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EU
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日本
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設備の多重性
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独立4系統
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独立2系統
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コアキャッチャー
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設 置
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設置なし
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格納容器熱除去設備
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設 置
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設置なし
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頑健な原子炉格納容器
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設 置
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設置なし
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※コアキャッチャー:溶けた核燃料を導くとともに水で冷却する装置。原子炉を水棺
にできる機能を併せ持ち、溶融炉心を長期冷却する。
※頑健な原子炉格納容器:大型航空機の衝突に耐えられる二重構造。
危険な老朽原発
政府が決定した「エネルギー基本計画」は、2030年の原子力発電の構成比を20~22%としています。これを実行するには、廃炉を除くすべての原発43基を動かし、40年の原発運転期限を60年に延長し、さらに新増設も必要となります。
原発は、高湿・高圧、振動など過酷な環境で稼働するうえ、中性子による材質の劣化(脆性劣化)が問題です。老朽原発の長期の稼働ほど危険なことはありません。
4 再稼働の審査対象とされていない住民の避難計画
避難計画を再稼働の審査対象にしないのは、再稼働が不可能になるからです。住民の安全を棚上げにして、再稼働の準備がすすめられています。
2015年4月22目、「原子力災害対策指針」が全面改定され、①SPEEDI活用の中止、②モニタリングによる実測主義、③30キロ以遠の防護措置の削除など、重大な改悪が行われました。
福島第一原発事故では、30キロ以上離れた飯館村に放射性プルーム(放射性物質を含む気流)が到達し、深刻な被害を生みました。SPEEDI活用の中止、30キロ以遠の防護措置の削除は許されません。
事故の進行に避難が間に合わない
冷却機能が喪失した場合、約20分で燃料棒が溶け落ちるメルトダウンが始まり、約90分で圧力容器に穴が開き、放射性物質の放出が始まります。
新潟県は世界有数の豪雪地でもあります。事故の進行に避難が間に合いません。
権限のない「被害地元」市町村
原発を再稼働せず、なくすことこそ最善の道です。同時に、大量の使用済み核燃料がある限り、原発事故と放射能の危険は続きます。避難計画は絶対に必要です。
ひとたび原発事故が起きれば、避難勧告や避難指示、警戒区域の設定と立ち入り制限、禁止、退去命令など市町村長の責任は重大です。周辺自治体は、「被害地元」です。しかし、市町村には原発に対する権限がないのです。
少なくとも、原発立地・周辺市町村の同意なしに原発を再稼働できないことをルールとすべきです。県知事は、広域行政の長として、県内市町村と県民の合意なしに再稼働を認めるべきではありません。
5 福島はいま ― 再稼働を考える原点
福島第一原発の大事故は、いまだに収束の見通しが立たず、住み慣れた故郷に帰れない被災者は10万人です。「孫といっしょに住んでいたのに・・」というおばあちゃん、バラバラの避難生活を余儀なくされた家族など、先が見えない苦しい生活を強いられています。
震災関連死は2000人(昨年11月30日現在)を超えて、震災での直接死1604人を上回り、福島県産の農産物は風評被害で価格低迷が続いています。
原発事故によって、家族と地域の「絆」を断たれ、人びとの未来が奪われています。原発事故は、地域社会をまるごと崩壊させる ― これが、福島原発事故が明らかにしたことです。
安倍内閣による福島県民の切り捨て
安倍内閣は、2017 年3月までと期限を定めて、避難指示解除と賠償打ち切りを一体ですすめています。
被害が終息したかのように描く一方で、福島県民を切り捨てる政策と原発再稼働を表裏一体で進めています。
6 世論と運動で柏崎刈羽原発の再稼働ストップを
安倍内閣は、早期再稼働推進の議連事務局長の高木毅衆院議員を復興大臣にすえ、電源立地地域対策交付金の減額で圧力と脅しをかけてきています。自民党新潟県連は、2014年大会で「再稼働促進決議」を採択しました。
泉田知事は、柏崎刈羽原発の再稼働について、「反対」とも「賛成」とも言っていません。
再稼働に突き進む安倍内閣と対決し、柏崎刈羽原発の再稼働を止める最大の力は、県民の世論と運動です。
安倍自公政権の執念と巻き返しを上回る世論と運動で再稼働をストップさせ、安全・安心の新潟県、再生可能エネルギーによる経済活性化の新潟県へと、新しい道に踏み出そうではありませんか。