原子力規制委が、運開40年を超えた関電高浜原発1、2号機について運転延長を事実上認めました。7月7日までに追加の審査に通れば最長20年の延長が可能になります。
実に驚くべきことですが、日本のマスメディアは大広告主である電力会社には全く頭が上がらないので何の批判もしません。
原子炉など強烈な中性子照射を受ける鋼製の設備は劣化が激しいので、当初は30年寿命を想定していた筈です。現実にテストピースによって原子炉の劣化が確認された(⇒ 脆性遷移温度が運開34年の平成21年で98℃に上昇)九電の玄海原発1号機は廃炉になりました。
それがいつの間にか40年耐用となり、今度は60年耐用になろうとしています(40年の次が60年というのも実に非常識な話です)。
これを決めたのは現在の規制委で、福島事故後に発足した規制委がそうした基準を作りました。
さすがにその当時は気が引けたらしくて「延長は例外」としていましたが、最初の申請を受けた高浜原発の2基がごく当たり前のように合格になる流れです。今後、引き続き申請される運転延長が次から次へと承認される前例となることでしょう。
関電は運転延長のために、電気ケーブルの防火対策などの諸対策に約2千億円の費用をかけたということです。
規制委の田中委員長はそれを多としたいらしくて会見で、「費用をかければ技術的な点は克服できる」と述べたということですが、それは付帯的な部分での増強であって、原子炉自体は旧態依然の劣化したままのものです。
要するに最も心配な部分が爆薬を抱えたままで延長運転に入るということなのに、何故誰も反対しないのでしょうか。不思議なことです。
今後 装置の劣化具合をチェックするようですが、一体どんな根拠でどんな基準でやろうというのか、現状と20年後の強度をどのようにしたら確認できるのか、そもそもそれが非破壊検査で可能なものなのか、是非とも詳細を明らかにして欲しいものです。
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原発40年ルール 早くも形骸化 到底容認できない
愛媛新聞 2016年2月26日
「原発の運転期間を原則40年に制限する」。東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえて改正されたはずの原子炉等規制法のルールが、事故から5年を前に早くも形骸化しつつある。
原子力規制委員会が、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)を事実上「合格」とした。7月7日までに追加の審査に通れば、最長20年の延長が可能になる。
高浜原発は、プルサーマル発電の4号機が今日にも再稼働する。加えて老朽化した1、2号機が再稼働すれば危険度が一層高まる。到底容認できない。
「40年ルール」は、当時の民主党政権が、古い原発を順次廃炉にしていくために導入した。40年の科学的根拠について、国は原発の導入で先行してきた米国の例を参考に「原子炉の圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」と説明。最長20年の運転延長は、あくまで「例外」と位置付けていた。
規制委の田中俊一委員長も、2012年の委員会発足当初、「40年くらいが一つの節目だと認識している。20年の延長は相当困難」と話していた。にもかかわらず、最初に出てきた延長申請を早々と認めた。今後、追随する原発が相次ぎ「例外」が例外でなくなる可能性がある。看過できない。
何よりもまず、圧力容器本体が持つのかという根本的な疑問が解消されていない。40年以内なら絶対大丈夫という根拠もなかったはずだ。審査が通ればいきなり20年も延長が可能とするのは無謀と言わざるを得ない。
配管などの劣化もある。中でも古い原発は、電気ケーブルの防火対策が大きな障壁だった。新規制基準は難燃性ケーブルの使用を求めているが、総延長は1基当たり数百キロに及び、費用的に困難とされていた。
ところが関電は、ケーブルの6割を難燃性に交換し、残りは防火シートで包む方法で申請、規制委もこれを了承した。十分な耐火性が発揮できるのか疑問が残る。新規制基準自体が有名無実化する恐れもある。
規制委は審査の期限切れを避けたかったのだろう。高浜の審査を優先し、11カ月で終えた。「合格ありき」の疑念が拭えない。老朽化対策に特化した追加の審査は、7月の期限にとらわれることなく、厳格に全うするべきだ。
四国電力の伊方1号機も今年9月末で39年になる。廃炉か、運転延長かの決断が6~9月に迫っている。原発30キロ圏内の首長らが要望している通り、「原則40年」の厳守を求めたい。
老朽原発の運転延長は本来、将来的に原発依存度を下げるとする政府方針に反する。ただ、安倍政権は30年度の電源構成で原発の比率を20~22%にする目標を掲げており、明らかに運転延長や新増設を見込んでいる。なし崩し的な「ルール改変」による原発回帰の姿勢が、国民の不信を招いていることを猛省するべきだ。