2016年2月26日金曜日

26- 福島で子どもの甲状腺がんが増加するも政府、県、メディアは黙殺 .

 2月15日、甲状腺がんと診断された福島県の子どもたちは167人に上り、2巡目の検査で「新たに甲状腺がんまたはがんの疑いの子ども51人が発見されたことが福島県民健康調査検討委員会から報告されました。
 極めて大量の発生なので原発事故による被曝との関係が心配されるのですが、検討委の星北斗座長は「これまでの知見で判断すれば、現時点で放射線の影響は考えにくい」という見解でした。
 
 同検討委の説明でいつも気になるのは、常に「放射線の影響は考えにくい」と真っ先に否定するものの、なぜそう考えるのかの説明が常に欠如しているということです。福島県民健康調査検討委では、こういう状況が数年来続いています。しかしこんな中世期のような状況が継続されていていい筈がありません。
 多分政府にとっても県にとっても、その方が好都合なのでしょうから、よほどの外圧が加わらないと是正はされないでしょう。
 リテラはそのためには何よりもメディアが姿勢を正すことが大事だと述べています。
 
   (関係記事)
2月17日 2巡目で発現した甲状腺がん患者(がん疑いを含む)は51人に
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丸川珠代発言こそが日本のホンネか? 
福島で甲状腺がんの子どもがさらに増加するも政府、県、メディアは黙殺
LITERA 2016年2月25日
 2月下旬の再稼働が確定的となっていた福井県高浜原発4号機で、20日午後、放射性物質を含む一次冷却水が漏れ出していたことが発覚した。高浜原発では1月29日に3号機を再稼働させたばかりで、それから1カ月も経たない4号機の重大事故に衝撃が走っている。  
 だが、当事者である関西電力、そして福井県原子力安全対策課は早々に「大きなトラブルではない」「周辺環境への影響はない」と事故を過小評価するのに必死だ。
 そして、なぜかこうした“原子力ムラ”の言い分がまかり通り、原発の危険性に警鐘を鳴らす報道はほとんど見られなくなっている。
 
 最近もある重大なニュースが無視されてしまった。それは、福島原発事故の後の子どもたちの甲状腺がんの増加だ。2月15日、福島の有識者会議「「県民健康調査」検討委員会」が会見で、事故後、甲状腺がんと診断された福島県の子どもたちは167人に上ると公表したのだ。
 福島原発事故後の2011年10月から始まった当時18歳以下だった子どもへの甲状腺がんの検査だが、現在は1巡目が終わり2巡目の検査が行われている。そこで新たに甲状腺がんまたはがんの疑いの子ども51人(男性21人、女性30人)が発見され、最初の検査と合計で167人という膨大な人数に膨れ上がっている。
 
 しかし驚くのはこの数字だけではない。会見で検討委員たちが次々と発した言葉だ。それらは全て、がん増加と事故のその因果関係を否定したものだった。
 例えば星北斗・福島医師会副会長はもってまわったような言い方で、福島県の甲状腺がんと事故の因果関係をこう否定した。
「チェルノブイリとの比較の線量の話、あるいは被爆当時の年齢などから考えまして、これらのがんにつきましては、放射線の影響とは考えにくいとの見解をこのまま維持する形に、今日の議論としては委員会としてはそうなったと理解しています」
 また被爆医療の専門家でもある同委員会の床次真司・広前大学被ばく医療総合研究所教授も「総じて言えば福島の事故における甲状腺被ばく線量はチェルノブイリ事故に比べて小さいことは言えるだろうと考えます」と同様の見解を表明している。
“チェルノブイリより被爆線量が少ない”そんな根拠だけで、専門家たちが福島事故と甲状腺がん増加の関係を否定したのだ。
 
 さらに同委員会は事故から5年に当たる3月に「中間報告」を取りまとめる予定だが、その最終案にも“チェルノブイリとの比較”から甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくいと断定している。
「これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べてはるかに少ないこと、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと、事故当時5歳以下からの発見はないこと、地域別の発見率に大きな差がないことから、放射線の影響とは考えにくいと評価する。但し、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず、影響評価のためには長期にわたる情報の集積が不可欠であるため、検査を受けることによる不利益についても丁寧に説明しながら、今後も甲状腺検査を継続していくべきである」
 要するに何もわからないけど、でも事故とがん増加は関係ない。無責任にもそう断定するものなのだ。しかも最終案には「数十倍多い甲状腺がんが発見されている」と明記されているにも関わらず、だ。
 
 いや正確な発生率はそれ以上という指摘もある。昨年8月には岡山大学大学院の環境疫学の専門家である津田敏秀教授を中心とした研究グループが甲状腺がん発生率は国内平均の20~50倍であり、潜伏期間やチェルノブイリでのデータから今後も増加は避けられないと公表している。これに対し、政府や原発ムラ学者たちは、甲状腺がんの増加を「過剰診断」や「スクリーニング効果」などと反論したが、それでも説明はつかないほどの増加だという。
 さらに「検討委員会」に先立つ今年1月22日、国際環境疫学会(ISEE)は日本政府に対して「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、リスクの推定をきちんとやるよう警告する書簡を送ったことも明らかになっている。
 福島県の子供たちに甲状腺がんが多発し、国際機関からさえも指摘を受けているにもかかわらず、政府や“お抱え“学者たちは、決してそれを認めない。今後さらに甲状腺がんが激増しようともその姿勢は変わることはないだろう。
 
 もちろん今回の高浜原発4号機事故にしても同様だ。記事直後から「漏洩した放射性物質の量は国の基準の200分の1以下で、作業員も被ばくしていない」などと嘯いているが、高浜4号機では福島原発事故後でも、同様の一次冷却水が漏れる事故が起きていたことも判明している。
 さらに運転期間が40年を過ぎた高浜1号、2号機においても2月16日に新基準適合検査が終了し、事実上「合格」が確定したが、その審査で大きな問題となっていた地震や津波などへの安全対策は「4号機の審査が終わっているから」としてほぼ無視されたままでの「合格」だった。
 
 こうした問題は高浜だけではない。福島原発事故後も福井県美浜原発2号機や北海道泊原発、茨城県東海原発、愛媛県伊方原発など冷却水漏れが続いているが、いずれのケースも今回同様「環境に影響がない」として政府や電力会社は“事故”として認める姿勢が極めて低い。
 
 こうした姿勢、本心が露骨に現れた典型例が環境相の丸川珠代議員の発言だ。
 2月7日、丸川議員は長野県の講演で、東京電力福島第1原発事故後に、国が除染に関する長期努力目標として「年間1ミリシーベルト」と定めていることに関し「何の科学的根拠もない」「反・放射能の人がワーワー騒いだ」と発言して大きな問題となった。さらに衆院予算委員会で発言を追及された丸川議員は一旦はそれを否定したが、後日、一転して謝罪をするドタバタぶりを露呈した。しかしこれは丸川議員個人の問題や見解ではないだろう。原発再稼働や海外輸出をがむしゃらに推し進める安倍政権の“ホンネ”が表れたにすぎない。
 
 そして、この姿勢はマスコミも同様だ。前述した甲状腺がんの問題は新聞でもテレビでも大きく取り上げられることはほとんどなかった。唯一『報道ステーション』(テレビ朝日系)だけが3月11日、大々的に特集を放映予定だというが、その「報ステ」も3月一杯で古舘伊知郎が降板し、体制が大きく変わる。
 
 東日本大震災から5年、原発報道のこれからを考えると、暗澹とするばかりだ。(伊勢崎馨)