2016年9月7日水曜日

07- 特産のホヤ廃棄1万トン 宮城漁協 東電に補償を

宮城特産のホヤ大量処分 原発事故で韓国禁輸余波
日経新聞 2016年9月6日
 全国有数の養殖ホヤの産地宮城県で、東日本大震災後に種付けされた計約1万トンが廃棄処分を余儀なくされている。最大の出荷先だった韓国が、東京電力福島第1原子力発電所事故を機に輸入を禁止し、生産過剰になったための「苦渋の選択」。県漁業協同組合は、東電に補償を求める方針だ。
 8月下旬、宮城県女川町の竹浦漁港。水揚げされたホヤは市場ではなく、いったん冷凍倉庫へ。この後、まとめて処分されるという。漁師の阿部次夫さん(64)は「せっかく育てたのに残念。禁輸が早く解除されるといいが……」と話した。
 
 ホヤは突起のある見た目から「海のパイナップル」と呼ばれる珍味で、磯の香りやプリプリとした独特の食感が特徴。震災前、宮城県の生産量は全国1位の約1万トンで、このうち約7割が刺し身やキムチの具材として、韓国に輸出されていた。
 ホヤ漁師は、震災で船や作業場が流され壊滅的な被害に遭った。国などの支援で徐々に復旧に向かう中、2013年9月に韓国が宮城や千葉など8県の水産物を安全性への懸念から全面禁輸。県漁協はやむなく国内での販路を模索したが、昨年の出荷は約4100トンにとどまった。
 ホヤは種をロープにつるし、海中で3~4年間、大きく育ててから出荷する。生産過剰のホヤを放置すると重みで落下し、海洋汚染の原因になる。養殖を継続していくには、新しい種を付けるスペースも必要なため、廃棄処分が決まった。
 
 県漁協によると、韓国の輸入禁止が解除されるめどは立っていない。担当者は「今も放射性物質の検査を続けており、安全性は問題ない。ぜひ手に取って、食べて応援してほしい」と呼び掛けている。〔共同〕