経済産業省は20日、福島第1原発の廃炉費用の負担や、東京電力ホールディングス(HD)の経営改革を議論するため、財界人や学者などで組織する「東京電力改革・1F※問題委員会(通称・東電委員会)」と「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を設置することを発表しました。 (※ 1Fは2011年に過酷事故を起こした福島第1原発の略称)
これは要するに福島第1原発の廃炉費用負担を、第三者委員会の名のもとに国民の負担に転嫁するための方策です。問題は経産省が「それに伴って東電HDに厳しい経営改革も求める」としているものが、実際にどの程度なのかということです。
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福島原発 廃炉費用負担など議論「東電委員会」設置
毎日新聞 2016年9月20日
東電HD経営改革も議論 年度内をめどに最終提言
経済産業省は20日、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉費用の負担や、東京電力ホールディングス(HD)の経営改革を議論するため、財界人や学者などで組織する「東京電力改革・1F問題委員会(通称・東電委員会)」を設置すると発表した。併せて、卸電力市場活性化や全国の原発の廃炉費用負担を検討する小委員会を設置することも発表。福島第1原発の廃炉費用負担をめぐる議論が本格化する。
東電委員会は10月初めにも第1回委員会を開き、年内をめどに提言の原案、年度内をめどに最終提言をまとめる。もう一方の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」は9月27日に検討を開始し、年内の最終提言を目指す。経産省は「両委員会の議論をつなぎながら進める」としており、福島第1原発の廃炉問題は両委員会で取り上げられる見通し。経産省は両委員会の議論を受けて、来年の通常国会で必要な法制度改正を行う。
両委員会の議論の主な論点は、東電福島第1原発の廃炉や賠償費用を誰がどのような形で負担するのかだ。現行制度で原発の廃炉は、原発を保有する大手電力9社が自社の電気料金から費用を回収する仕組みとなっている。
福島第1原発の廃炉費用については、東電HDが約2兆円を工面する計画だが、廃炉や事故処理は30〜40年かかる見通しで、実際の費用は2兆円を大きく超える可能性が指摘されている。
福島第1原発事故の賠償や除染費用は、東電が国の認可法人「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」から必要な資金の交付を受け、大手電力が負担金として同機構に納付している。
賠償額は既に計画(5・4兆円)を上回る6兆円に達し、除染費用も計画の2兆5000億円を上回る公算が大きい。こうした状況から、東電HDの数土文夫会長は7月下旬、記者会見で福島第1原発の廃炉費用について政府支援を求めたほか、賠償や除染の費用の負担のあり方についても国に協議を求めた。
両委員会の議論次第で、東電HDが自力で賄うとしている福島第1原発の廃炉費用について、国民が負担を求められる可能性がある。電力システム改革貫徹小委員会では、大手9社だけでなく、新電力にも廃炉や福島原発の賠償費用を託送料金として負担させる案が検討される見通し。電気料金に上乗せして回収するため事実上、国民負担が増すことになる。
経産省は東電HDに厳しい経営改革も求めることで、国民の理解を得たいとしている。東電委員会の提言は、来年初めに見直される東電HDの「新・総合特別事業計画」に反映される。【秋本裕子、宮川裕章】