原子力規制委は31日、原発の廃炉で出る放射性廃棄物のうち、原子炉の制御棒など放射能レベルが比較的高い廃棄物(L1)の処分の基本方針を決定しました。70mより深い地中に埋め、電力会社に300~400年間管理させた後国が引きつぎ、10万年間掘削を制限するというもので、これで、放射能レベルの高いものから低いものまで放射性廃棄物の処分方針が出そろったということです。
しかし所詮は机上の空論であって、国内で深部に使用済み核燃料などの放射能レベルが非常に高い廃棄物を万年単位で安定的に埋設出来る地層は存在しません。原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年以降約500億円の経費を使って処分地を探しましたが成果は得られていません。
これについてはかつて日本学術会議が2年がかりで検討した結果、2012年9月に、「地中深くに埋める国の最終処分計画は安全とは言えない。地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しい。」との結論を出し、核燃料処分に関する政策の白紙見直しを求める提言をまとめています。
※ 2014年1月6日 核のごみの処分地選定急展開か
そうした地層は地球規模でもほとんどなく、僅かにフィンランドとスウェーデンの2カ国にあるのみです。
フィンランドの地層処分施設オンカロを見学した小泉元首相が、使用済み核燃料の最終処分場の建設の見通しがないのに原発を推進するのは間違っていると指摘しました。それで慌てた安倍首相が急遽候補地を探す方針を打ち出しましたが、デタラメなやり方で条件を満たさないものを決めてみても意味がありません。
日本では調査用の1000mの立坑2本を2007年に岐阜県瑞浪市(JAEA瑞浪超深地層研究所)に掘り、北海道幌延町でも同様な立坑の建設が進められていますが、当然水が噴き出すなどしていて恒久性があるものとはとても思えません。
アメリカも、ニューメキシコ州に軍事用核廃棄物を地層の深部に隔離する試験施設(WIPP)を作り、1999年に試験操業を始めていますが、近年地上まで濃厚な放射能が漏れる事故を起こしました。当然地下のスペースは放射能で汚染されたでしょうから、施設の管理はおろか新規の廃棄物の収納もできなくなっている筈です。
一口に400年とか10万年とかと言ってみてもそれは未経験であって全く確信の持てない長さです。そんな超長期間にわたって施設が存続して、その維持管理ができるという考え方そのものがナンセンスです。
「日々雑感」氏のブログを紹介します。
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原子力利用が人類の子々孫々にかける負担の大きさに
原子力ムラの住人たちは震えないのか。
日々雑感 2016年9月1日
<原子力規制委員会は31日、原発の廃炉で出る放射性廃棄物のうち、原子炉の制御棒など放射能レベルが比較的高い廃棄物(L1)の処分の基本方針を決定した。地震や火山の影響を受けにくい場所で70メートルより深い地中に埋め、電力会社に300~400年間管理させる。その後は国が引きつぎ、10万年間、掘削を制限する。これで、放射能レベルの高いものから低いものまで放射性廃棄物の処分方針が出そろった。
原発の廃炉で出る放射性廃棄物は、使用済み核燃料から出る放射能レベルが極めて高い高レベル放射性廃棄物と、L1、原子炉圧力容器の一部などレベルが比較的低い廃棄物(L2)、周辺の配管などレベルが極めて低い廃棄物(L3)に大きく分けられる。
埋める深さは放射能レベルによって変わる。高レベル放射性廃棄物は地下300メートルより深くに10万年、L2は地下十数メートル、L3は地下数メートルとの処分方針がすでに決まっていたが、L1は議論が続いていた。大手電力会社でつくる電気事業連合会は、国内の原発57基が廃炉になれば、L1だけで約8千トンの廃棄物が出ると試算している。
規制委はL1について、コンクリートなどで覆って70メートルより深い岩盤内に少なくとも10万年間は埋める必要があると結論づけた。電力会社が管理する期間については「数万年とするのは現実的でない」として、300~400年間とした。その後は、国が立ち入りや掘削がされないように対策を取るとした>(以上「朝日新聞」より引用)
400年前は大坂で徳川家康と豊臣秀頼が戦っていたころに相当する。これから400年間も電力会社に管理させて、それ以後10万年は政府が管理するという。10万年前はまだネアンデルタール人がいたころで、現存人類の祖先クロマニヨン人と戦っていた当時だ。
原子炉の制御棒など放射能レベルが比較的高い廃棄物(L1)の処分の基本方針を決定したが、地震や火山の影響を受けにくい場所で70メートルより深い地中に埋め、電力会社に300~400年間管理させる。その後は国が引きつぎ、10万年間、掘削を制限する、という決定事項にどれほどの現実性があるというのだろうか。
仮想空間の決定事項でしかない「政府・原子力規制委員会」の発表を受けて、それをまともに聞いている国民がいるとすればゲームのやり過ぎだ。現実的に考えれば放射性廃棄物の処分・管理は到底無理だという事に他ならない。
到底無理な人知の及ばない結末が解っていて、原子力行政を推進した連中は無責任というしかない。原子力の平和利用などというマヤカシを宣伝して原発を推進した連中は未来の人類に対して決して拭えない大罪を犯したのだ。
400年前の国家で現在も存在するのは日本の他には数か国だけだ。もちろん米国は建国すらされず存在していなかった。ましてや電力会社が400年後も存在しているとは到底思えない。
万年を超える話などマトモな大人なら決して口にしないだろう。千数百年前の万葉人の話し言葉ですら「古典」として学問しているくらいで、普通の現代人には理解が困難な代物だ。一万年後に日本国民がいたとしても、彼らが現代語で書かれた放射性廃棄物貯蔵所の「注意」書きや「警告」は100%読めないと断定できる。
そして地下70m以下という規定も現実的でない。なぜなら現在ですら深度地下鉄は地下40mを走っているからだ。政府は地下利用の「地役権」が及ぶ深度地下は40mまでと決めてしまった。
つまり地下鉄を40mを超えて深度地下に通すのなら、地上の土地所有者の権利を侵害しないとしてしまった。高濃度放射性廃棄物を地下70mから300m以下に埋める、というのは現在の基準であって、少し先の時代で簡単に変更される深度だ。
最も良い方法は宇宙へ廃棄することだが、その宇宙廃棄の段階で積載したロケットが打ち上げに失敗して爆発したなら高濃度放射能が広い地域に拡散されることになる。ロケットで宇宙へ廃棄するのも危険に満ちている。
ではどうすれば良いのか。安定した大陸を丸ごと放射性廃棄物の廃棄処分場として世界で決めて、そこに世界の放射性廃棄物のすべてを集めて人類が管理するしかない。
では安定して大陸とはどこか。南極大陸しかないだろう。そこなら殆ど誰も住んでいないし、今後も世界の楽園として多くの人が移住することもないだろう。
そして国際機関で人類が維持・管理することだ。盛衰の激しい国家やましてや興亡が当たり前の企業に数百年も維持・管理させるなどといった荒唐無稽な話を一人前の大人がやってはいけない。原子力規制(推進)委員会がいかに荒唐無稽な連中の集まりか、このことだけでも歴然としている。
世界が協力して南極対立に適地を決めて、そこに世界の放射性廃棄物を永遠に貯蔵し管理することを国際機関で決めて、廃棄量に応じて各国が分担金を負担するように取り決めることだ。それ以外に安全な廃棄場など存在しない。