福島県内の避難区域で、野生動物が避難区域外の農地に比べて4~5倍に増加していることが、福島大学の調査で分かりました。具体的にはイノシシは9倍に、アライグマやハクビシンは数十倍に増加しました。
野生動物が放置された家にすみ着いたケースもあり、感染症を持った個体の場合、家屋に残ったふんなどを通じて人間に伝染する懸念もあるということです。
住民に帰還を勧めている行政側はこうした対策についても万全を期す必要があります。
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原発避難区域で野生動物が大幅増 福島、4~5倍に
日経新聞 2016/9/20 10:11
東京電力福島第1原子力発電所事故による福島県内の避難区域で、イノシシやアライグマなどの野生動物が、避難区域外の農地に比べて4~5倍に増加していることが20日までに福島大の調査で分かった。長引く住民の避難で、野生動物がすみかや餌を確保しやすくなったためとみられる。
調査を進める福島大の奥田圭特任助教は「帰還後の住民生活に影響を及ぼすだけでなく、帰還の妨げになる可能性もある」と指摘している。
奥田さんらは、将来的な住民の帰還と営農再開を見据え、昨年6月から野生動物の生息状況調査を開始。相馬市、南相馬市、浪江町のうち(1)沿岸部に近く夜間は人の立ち入りができない居住制限区域(2)津波で被害を受けた地域(3)避難区域外の水田――の3つのエリアで、動物の動きを感知して自動的に撮影できるカメラを計24台設置し、イノシシやアライグマ、タヌキ、ハクビシンなどの出現頻度を調べた。
その結果、農地に比べ、居住制限区域や津波被害地域は、動物全体の出現頻度が4~5倍多かった。
動物別に見ると、居住制限区域では、イノシシが他のエリアに比べ約9倍多かった。このエリアは除染が進んでおらず、草が茂った場所をすみかとしているとみられる。アライグマやハクビシンも農地に比べ数十倍多く、放置された家にすみ着いたケースもあった。
避難区域では餌が豊富なことも野生動物の増加の一因とみられる。草むらとなった水田にはキツネやタヌキなどの餌となるバッタやネズミも多く、住宅近くの柿やゆずも食べられているという。
野生動物には感染症を持つ個体もいて、帰還に際し、家屋に残ったふんなどを通じて人が感染するリスクも懸念される。
奥田さんは「帰還は野生動物の領域に人間が入っていくような状況だ。人間が暮らす場所で重点的に捕獲や草刈りをするなど、野生動物が生息しにくい環境づくりが必要だ」と話している。〔共同〕