東北電力女川原発2号機の再稼働の是非を問う住民投票条例制定を目指す市民団体「県民投票を実現する会」が署名集めを始めてから1カ月が経ちました。
河北新報が多々良哲代表(60)に目的や手応えを聞きました。
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<女川原発>再稼働考える契機に 署名集め開始1カ月「対話深めたい」
河北新報 2018年11月11日
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働の是非を問う住民投票条例制定を目指す市民団体「県民投票を実現する会」が署名集めを始めてから1カ月がたった。県条例制定を直接請求するには県内有権者約4万人の署名が必要で、3日までに1万7000人が集まった。多々良哲代表(60)=仙台市=に目的や手応えを聞いた。
◎「県民投票を実現する会」代表・多々良哲氏に聞く
-会の活動の目的は。
「東京電力福島第1原発事故は、県内を含む広範囲の住民が放射能汚染や風評の被害に遭った。だが、事故後に各地で進む再稼働は立地の知事や議員の意向を問うだけで、県民の声を聞く機会はなかった」
「来年春にも女川2号機は原子力規制委員会による審査で『合格』が出る可能性がある。再稼働について賛成、反対を問わず、県民一人一人が意思表明できる場を実現させたい」
-10月2日に始めた署名集めは一部地域を除き12月2日までの2カ月間に限られている。これまでの反応は。
「街頭署名で記入を待つ列ができたり、若い夫婦が署名したりと関心の高さを実感している。『原発をどう受け止めればいいか』と迷う人もいる。難しい問題だからこそ、みんなで考える。住民投票がそのきっかけになると伝えている」
「実質3週間の署名集めで1万7000人は少ない数字ではない。後半も県民との接点を広げて10万人は確保したい」
-住民投票の実現には県議会で条例案が可決されなければならない。
「条例制定の直接請求が実現した場合、県議会の審議は来年の2月定例会が見込まれる。これまでに他県の条例案は議会で否決され、ハードルは高い」
「直接請求や住民投票は地域の声を行政に反映させる手法だが、選挙で選ばれた首長・議員の二元代表制を否定するものではない。制度を補完し、よりよい地方自治にするものだ。原発を巡る住民と議会との対話を深めたいという思いを、県議一人一人に伝える」
[直接請求]地方自治法に定められた住民の権利。条例の制定や改廃、議会の解散などを請求できる。条例制定の直接請求が成立するには有権者の50分の1の署名が必要。署名集め期間は都道府県が告示後2カ月以内。請求代表者や協力者が、同じ市区町村の有権者から直筆で署名月日、住所、氏名、生年月日の記入と押印をもらう。請求内容は議会で採決される。
多々良哲(たたら・さとし)東北大中退。1983年あいコープみやぎに入り、2008~17年専務理事。現在は顧問。17年10月の県知事選に立候補し、落選した。大阪府出身。