2018年11月8日木曜日

東海第二原発の20年延長認める 規制委「問題ない」と

 原子力規制委は7日本原電東海第二原発(茨城県東海村)最長20年の運転延長を認めました。当初、運転延長は「例外中の例外」と強調されていた延長がまたしても認められました。
 老朽原発は、原子炉圧力容器強い放射線に長年さらされるのでもろくなり、急な温度変化についていけず割れる危険性も指摘されています。規制委は圧力容器や格納容器などが放射線で劣化していないかなどを点検した結果更田豊志委員長は「設備の経年劣化で言えば、40年という時間で著しく問題があるとは考えていない」と述べましが、それはどんな根拠からなのでしょうか
 
 東海第二原発については、国や県に対して再稼働反対や慎重な対応を求める内容の意見書が、茨城県内44市町村のうち34の市町村議会から提出されています。各地域の住民を代表する議会のをそうした意見を、もっと重く受け留める必要があるのではないでしょうか。
 稼働には県と30キロ圏の水戸市など6市村から同意を得る必要があります。毎日新聞が6市村の首長の意向をレポートしていますので併せて紹介します。
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東海第二の延長認める 最長20年、規制委手続き終了
東京新聞 2018年11月7日
 原子力規制委員会は七日の定例会合で、今月二十七日で運転期限四十年を迎える日本原子力発電(原電)の東海第二原発(茨城県東海村)について、最長二十年の運転延長を認めた。東海第二は新規制基準に適合しており、再稼働に必要な規制委の審査を終えた。稼働には県と三十キロ圏の水戸市など六市村から同意を得なければならず、一自治体でも反対すれば再稼働できない。(越田普之)
 
 東京電力福島第一原発事故後、原発の運転期間は原則四十年とすることが原子炉等規制法で定められたが、規制委が認めれば、例外的に最長二十年延長できる。これまでに運転延長が認められているのは、いずれも福井県の関西電力高浜1、2号機、美浜3号機で、東海第二は四基目となる。
 関電の三基は加圧水型という発電方式。東海第二は福島第一と同じ沸騰水型で、この型で運転延長が認められたのは初めて。
 
 原電は昨年十一月、運転延長を規制委に申請。圧力容器や格納容器などが放射線で劣化していないかなどを点検した結果、「今後二十年間の運転を想定しても問題がない」「東日本大震災の影響がないことを確認した」と判断。規制委は、原電の説明を了承した。
 原電は再稼働を目指し、二〇二一年三月末までに事故対策工事を終えたいとしている。運転期限は三八年十一月まで。原発事故時の避難計画策定が義務付けられた三十キロ圏の自治体には、全国の原発立地地域で最多の九十六万人が暮らす。どの自治体も、実効性ある計画を作れないでいる
 このため、東海第二の再稼働に必要な事前同意権を持つ六市村のうち、那珂市の海野(うみの)徹市長が再稼働反対を表明。水戸市議会も再稼働反対の意見書を可決しており、原電にとって高いハードルが残っている。
 
◆40年ルール形骸化進む
<解説> 原発の運転期間を原則四十年とするルールは、福島第一原発事故後、民主党政権が導入した。運転延長は「例外中の例外」(当時の細野豪志原発担当相)と強調されていた。しかし、原子力規制委員会は東海第二を含め、三原発四基の運転延長を認めた。ルールの形骸化がさらに進んだ。
 福島事故後、新規制基準や四十年ルールができ、福島の原発を除き七原発十基の廃炉が決まった。いずれも出力が小さかったり、対策工事に巨額の費用がかかったりするためで、電力会社の都合で廃炉の道を選んだ。
 
 東海第二のような「老朽原発」では、分厚い鋼鉄製の原子炉圧力容器でさえ、強い放射線に長年さらされ、もろくなる。急な温度変化についていけず、割れる危険性も指摘されている
 しかも、東海第二は東日本大震災で被災した。外部電源を失い、津波で非常用ディーゼル発電機の一部も使えなくなった。何度も強い揺れに襲われており、点検では見つけられない機器の劣化が懸念される。
 福島第一の1号機は、あと二週間で運転から四十年という時に、事故を起こした。地元では事故前から廃炉を求める声があったが、運転を続けた末に最悪の事態が起きた。その経験を忘れてはいけない。 (越田普之)
 
<東海第二原発> 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給してきた。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。放射能が漏れる重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。東日本大震災時は外部電源を失い、津波の影響で非常用ディーゼル発電機の一部も使えなくなり、冷温停止まで3日半かかった。
 
 
原発の40年超運転「問題ない」 東海第2認可で規制委員長
東京新聞 2018年11月7日
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は7日の定例記者会見で、40年の運転期限となる日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村、停止中)の運転延長を認可したことについて「(設備の)経年劣化で言えば、40年という時間で著しく問題があるとは考えていない」と述べた。
 
 一方、規制委庁舎で認可書を受け取った原電の和智信隆副社長は、再稼働を地元自治体に認めてもらう事前同意手続きに関し「安全対策工事と(自治体との)協議を並行して進める」と述べた。現在進行中の工事は2021年3月に完了予定で、再稼働はそれ以降となるが、具体的な時期は見通せていない。(共同)
 
 
再稼働反対等意見書 34議会に
NHK NEWS WEB茨城 2018年11月7日
運転延長が7日に認められる見通しとなっている東海村の東海第二原発について、東日本大震災のあと、再稼働反対や慎重な対応を求める意見書が、県内34の市町村議会から国や県に対して提出されていることが、NHKの取材でわかりました。
これについて専門家は、「住民を代表する機関の意思表明として、重く受け止める必要がある」と話しています。
 
 東海村の東海第二原発は、最長で20年の運転延長が7日、国から認められる見通しです。
ところが、7年前の東日本大震災のあと、国や県に対して再稼働反対や慎重な対応を求める内容の意見書が、県内44市町村のうち34の市町村議会から提出されていたことが、NHKの取材でわかりました。
このうち、「廃炉を求める」など無条件に再稼働に反対しているのは、つくば市や笠間市など14市町村に上っています。
また、「住民同意のない再稼働を認めない」など慎重な対応を求めているところが水戸市や常陸大宮市など18の市と町でした。
 残る2つの町議会は、「運転延長を申請しないこと」を求める意見書を提出していました。
 
 地方自治に詳しい常磐大学の吉田勉准教授は、「ひとつのテーマでこれだけ多くの自治体が意見書を出しているのは全国でも珍しいのではないか。住民を代表する機関の意思表明として国や県は重く受け止める必要がある」と話しています
 
 
東海第2延長認可  6市村に事前了解権 拒否権有無で溝
毎日新聞 2018年11月7日
 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働を巡り、原子力規制委員会が7日、最長20年の運転延長を認可した。国の審査はほぼ終了し、焦点は、原電が今年3月に結んだ新たな安全協定で「実質的な事前了解権」を認められた周辺6市村の可否判断に移る。しかし、あいまいな協定の文言から、再稼働を止める「拒否権」の有無をめぐる市村長の認識の違いが早くも表面化しており、道筋は見えていない。【吉田卓矢、太田圭介、加藤栄】 
 
 新たな安全協定は3月、6市村の首長と原電社長が東海村で結んだ。文書で「事前協議により実質的に事前了解を得る仕組みとする」と表記する一方、自治体間で賛否が分かれた場合に再稼働を止められるか分からない「玉虫色」の内容となっている。新協定締結までの協議は非公開で、議事録も公表されていない。 
 
 原電の和智(わち)信隆副社長は7日、報道陣に「拒否権という言葉は新協定の中にはない」と述べた。しかし、6市村長の受け止め方はそれぞれ異なる。 
 那珂市の海野徹市長はこの日、半径30キロ圏内(約96万人)の14市町村を対象とする広域避難計画の策定が困難であることを理由に、再稼働反対を改めて表明した。拒否権について「一つでも反対すると再稼働できない認識だ」と強調。引退を表明したひたちなか市の本間源基市長も同じ意見だ。 
 これに対し、東海村の山田修村長は「議論した上で最終的に(事業者が)了解をもらうものだ」と話しており、各自治体の「拒否権」を否定。広域避難計画の策定状況についても、事前協議にそぐわないとの考えを明らかにしている。 
 水戸市の高橋靖市長と常陸太田市の大久保太一市長は拒否権に肯定的で、日立市の小川春樹市長は否定的な見方を示す。 
 
 一方で、再稼働に対する判断のタイミングも固まっていない。原電は2021年3月までに約1800億円をかけて安全対策工事を実施する予定だ。6市村長は10月1日に非公開で協議し、再稼働の意思を明確にするよう原電に求める方向で一致した。今回の認可を受けて近く再び協議する。 
 工事実施について、山田村長が「防潮堤など現状よりも安全性が向上するのであれば止める必要はない」と述べる一方、別の首長からは「巨額の工事をした後では、再稼働が既成事実化しかねない」との声も上がっている。 
 
協議は住民が見える公開の場で 
 大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)の話 立地だけでなく周辺自治体にまで再稼働の「事前了解権」を認めた安全協定は画期的だ。事故が起きた際のリスクがある以上、再稼働には6市村全ての合意が必要と考える。解釈が分かれているなら、合意までの意思決定方法などについて、さらに議論が必要だ。その際、原電と6市村の協議は住民に経緯が見える仕組みにするべきで、公開の場で行うのが望ましい。 
 
 事故リスクだけを負わされることに不満を抱く周辺自治体は多く、今後の再稼働手続きのモデルとなり得る。6市村がそれぞれの住民の意思をどのように政策決定に反映させるかも課題だ。