福島原発で2月20日に2億4000万ベクレル/Lもの超高濃度汚染水約100トンをタンクからオーバーフローさせる事故を起したことについて、原子力規制委員会は東電に対し、事故を防ぐ好機をいくつも逃した管理体制を検証するよう求めていました。
しかし東電は、「本来とは別のタンクに送水するよう配管の弁を操作した『犯人』捜しをする」という、筋違いの調査に終始していたことが分かりました。
しかし東電は、「本来とは別のタンクに送水するよう配管の弁を操作した『犯人』捜しをする」という、筋違いの調査に終始していたことが分かりました。
2月の事故は少しの注意力があれば防げたもので、オーバーフロー事故に気づく機会は3回もありました。
それは ①送水してはいけない満水タンクの入口弁が開かれていたことに気づくべき ②本来のタンクにいつまでも水が送られてこないことから他経路に送水されていることに気づくべき ③オーバーフローしたタンクから満水警報が出たのに誤報だとして無視した点 の3点です。
なぜそんな基本的な対応が正しくできなかったのか、「東電に安全文化や、事業者として対応能力があるのか(原子力規制庁の森本次長談)が問われていました。
ところが、東電が3月24日に規制委事務局に提出した報告書には、「調査は、弁を誤操作したのは誰かを特定するため延べ124人に事情聴取したり、監視カメラの画像を確認するなどしたが、明らかにならなかった」旨が記されているということです。
通常こうした調査は、事故の再発防止を目指す専門部署の品質管理(品質保証)部門が行うものと思われますが、これではそうした部署ですら 事故の本質(問題の本質)を理解していないということになります。
そういうことではとても再発防止策などたてられる筈もありません。
これまでの、警報や事故につながる筈の兆候を、漫然と見過ごして大事に至らせるという体質は改善されません。
現実に3月18日にも、除染装置「ALPS(アルプス)」で不具合を知らせる明らかな兆候があり、26時間前ないし5時間前には対処できた筈なのに、何の対応もせずに過ごしてタンク21基を汚染させる事態を招いています。
(関係記事)
2014年2月21日「東電に安全文化や事業対応能力があるのかが議論に」
2014年2月21日「東電に安全文化や事業対応能力があるのかが議論に」
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東電、筋違いの調査 管理体制検証より「犯人」捜し
東京新聞 2014年4月9日
東京電力福島第一原発で二月に起きた、タンクからの百トンを超える処理水漏れで、東電は原子力規制委員会から、事故を防ぐ好機をいくつも逃した管理体制を検証するよう求められているのに、本来とは別のタンクに送水するよう配管の弁を操作した「犯人」捜しをする、筋違いの調査に終始していることが分かった。(岸本拓也)
二月十九日の水漏れ事故は(1)弁が誤った設定になっていて、処理水が別のタンクに送られていた(2)本来の送り先タンクで水位をきちんと監視していなかった(3)タンクの満水を知らせる警報が鳴っても計器故障と決めつけ、タンクの水位を確認しなかった-の三つが重なって起きた。
逆に、どれか一つでも適正に運用されていれば、事故は起きなかった。
事故を受けた規制委の議論では、「悪意を前提とした調査は好ましくない。不信感が蔓延(まんえん)する職場では安全は守られない」(田中俊一委員長)、「だれがミスをしたかではなく、ミスや事故は起きることを前提に、拡大防止の体制ができていることが大切だ」(更田(ふけた)豊志委員)などの意見が出た。東電は、事故対応マニュアルや安全管理体制の現状を報告するよう求められた。
ところが、東電が三月二十四日に規制委事務局へ報告した内容では、調査は弁を誤操作したのは誰かを特定するために実施。計百二十四人への事情聴取や監視カメラの画像を確認するなどしたが、大きな進展はなかった旨が記されている。
東電は事故後、満水警報が鳴れば、実際のタンク水位を確認する手順を決め、移送ポンプを自動停止する設備変更を進めた。しかし、これらは対症療法的なもので、誤操作した作業員の特定に力を入れるような安易な体質が続く限り、別の場所で別の事故が起きる可能性は十分にある。
三月十八日には、新型の除染装置「ALPS(アルプス)」で不具合を知らせる明らかな兆候があったのに、迅速に確かめる努力をせず、タンク二十一基を汚染させる事態を招いた。