福島原発事故の影響で福島県から群馬県内に避難している約30世帯90人が、国と東電に計九億九千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が25日、前橋地裁で開かれ、原告の女性2人が「どれだけ多くの人の大切なものを奪ったか認識してほしい」と涙ながらに訴えました。
これは昨年9月11日に提訴された第一次訴訟の分で、3月10日には原告に10世帯35名が加わった第二次訴訟が提起されました。
次回の口頭弁論は5月23日午前11時からで、年内の公判は月に1回のペースで6回が予定されています。
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「大切なもの、奪われた」 原発事故 (群馬)県内避難者
東京新聞 2014年4月26日
東京電力福島第一原発事故の影響で福島県から(群馬)県内に避難している約三十世帯九十人が、国と東電に計九億九千万円の損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が二十五日、前橋地裁で開かれた。原告の女性二人が弁論で意見陳述に立ち、「どれだけ多くの人の大切なものを奪ったか認識してほしい」と涙ながらに訴えた。 (伊藤弘喜)
最初に法廷に立ったのは、福島県郡山市から夫と五歳の息子と群馬に避難してきた女性。「私たちが故郷での平穏な生活を失って、どれほどの苦痛を受けたか」と、終始、おえつを漏らしながら訴えた。
原発事故後、ダウン症の息子に白血病や甲状腺がんの発症リスクが高まることを恐れた。二人とも仕事を辞め避難したが、息子を受け入れてくれる保育園が見つからず、全寮制の施設に預けざるを得なかった。「一度も離れたことのない息子と離れ、心臓をえぐり取られる思いだった」
感情が高ぶっていた女性は、陳述が終わる間際に突然倒れ、救急車で病院に搬送。まもなく復調したという。
続いて、二〇一一年七月に同県いわき市から前橋市へ夫と避難した丹治杉江さん(57)が「原発事故で生業も、ふるさとも、友達も、生きがいも、蓄えも奪われた」と訴えた。このほか原告十人が傍聴席から見守った。
一方、国と東電は請求棄却を求めた。
訴状では、国と東電が安全対策を先送りしたため、事故につながったと指摘。慣れない土地への避難を余儀なくされたとして、一人当たり千百万円の慰謝料を求めている。
閉廷後、原告団は前橋市の群馬弁護士会館で記者会見。丹治さんは「二月の大雪を見て、温暖ないわきを思い浮かべた。最近、一番思うのは寂しさ。わけもなく涙が落ちてくることがある」とあらためて胸中を語った。
年間一〇〇ミリシーベルト以下の低線量被ばくによる健康への影響は極めて小さいとする東電。原告代理人の鈴木克昌弁護士は「低線量被ばくの影響がよくわからない中で一〇〇ミリシーベルトで線引きするのは間違い。よくわからなければ避難するのは当然だ」と述べた。