2014年4月19日土曜日

解除準備区域は年3ミリシーベルト 個人被曝線量推計

 4月1日、直轄除染が終了したとして福島県田村市都路地区避難指示区域から解除しました。その後4月14日に公表された個人被ばく線量の実態等について、朝日新聞とNHKニュースが報じました。
 
 朝日新聞の付表を見ると分かるように、見掛けの被曝量を抑えるために、屋外作業を6時間、在宅時間を残りの18時間と推定するなど、かなり通常とは違う推定を行っています。
 それでも、これまで基準とされてきた年間1ミリシーベルトには遠く及ばないことが分かります。
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解除準備区域、年3ミリシーベルト 個人被曝線量推計
朝日新聞 2014年4月18日
 安倍政権が福島県の避難指示区域など3自治体で行った個人被曝(ひばく)線量についての最終調査結果が17日、わかった。個人線量の測定結果に職業などの生活実態を加味して推計した。年内の帰還を目指す地域で除染の長期目標の年間1ミリシーベルトを超える年3ミリシーベルトの値も出ており、今後の帰還政策に大きな影響を与えそうだ。18日に公表される。
 政権が7月にも住民の帰還を目指す川内村の避難指示解除準備区域では、除染の長期目標を超える年3ミリシーベルトだった。居住制限区域の居住者の場合、林業従事者の年間推計の個人線量は5・5ミリシーベルト、高齢者では2・1ミリシーベルトだった。
 4月に避難指示を解除した田村市都路地区でも、林業従事者は年間2・3ミリシーベルト、教職員で0・7ミリシーベルトだった
写真・図版 

 
帰還住民の被ばく量 職業ごとに推計公表 
NHK NEWS WEB 2014年4月18日
原発事故で避難している福島県内の住民の帰還に向け、内閣府は、避難指示が一部で解除された田村市など3つの市と村について、住民の被ばく量を職業ごとに30のケースに分けて推定しました。
いずれも避難解除の要件とされている年間20ミリシーベルトは下回りましたが、ほとんどのケースで政府が長期的な目標としている年間1ミリシーベルトを上回りました。
 
内閣府の原子力被災者生活支援チームは、研究機関に依頼し、原発事故で避難している福島県内の住民の帰還に向け、今月避難指示が解除された田村市都路地区のほか川内村と飯舘村について、住民の被ばく量を職業や生活パターンごとに推定した値を公表しました。
調査は、3つの市と村の住宅や学校、山林などで放射線量を測定したうえで、住民が生活した場合の年間の被ばく量を30のケースで推定しました。
その結果、最も高かったのが、いずれの市と村でも山林で働く林業で、飯舘村で17ミリシーベルト、川内村で5.5ミリシーベルト、田村市都路地区で2.3ミリシーベルトでした。
一方、建物で過ごす時間が長い教職員の場合、飯舘村で11.2ミリシーベルト、川内村で1.8ミリシーベルト、田村市都路地区で0.7ミリシーベルトとなりました。
30のケースではいずれも、避難解除の要件とされている年間20ミリシーベルトは下回りましたが、このうち25のケースで、政府が長期的な目標としている年間1ミリシーベルトを上回りました。
内閣府は、より実態に近い推計ができるよう、今後データを拡充していくことが課題だとしています。
 
長期目標は年間1ミリシーベルト
政府は、福島県内の避難指示を解除する要件の1つとして、年間の被ばく量が20ミリシーベルトを下回ることとしています。
国際団体のICRP=国際放射線防護委員会は、避難などの対策を取る際にそれ以下に抑えるべきだとする年間の被ばく線量の目安を、20ミリシーベルトから100ミリシーベルトとしています。
100ミリシ-ベルトは生涯で浴びると、がんで死亡するリスクが0.5%上昇するとされている値です。
政府は避難指示を出す際の基準として20ミリシーベルトから100ミリシーベルトの間で最も厳しい値の20ミリシーベルトを採用していて、解除に当たってはこれを下回ることを要件としています。
ただICRPは、長期的には年間の被ばく線量の目標を、20ミリシーベルトから、通常一般の人が1年間に浴びても差し支えないとされる1ミリシーベルトの間の、できるだけ低い値に設定するべきだとしています。
政府は、長期的な目標として、除染などによって被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に下げるとしています。
 
住民の帰還開始後に公表
今回の公表について、今月避難指示が解除された福島県田村市都路地区の住民からは、不満の声や国への対応を求める声が相次ぎました。
田村市都路地区の避難指示の解除を巡っては、当初、政府と市が去年11月の解除を提案しましたが、住民の間に放射線量への不安が根強くあったために延期され、今月1日の解除が決定するまで、住民側と政府などとの間で繰り返し話し合いが持たれた経緯があります。
解除された後も田村市船引地区にある仮設住宅に残っている住民のうち、農家の吉田一男さん(67)は「こうしたデータは、解除するかしないのか、議論を行っているときに提示すべきだ」と話していました。
また、すでに都路地区の自宅に戻っているシイタケ栽培など林業を営む坪井哲蔵さん(65)は、「この時期の発表には、だまされたのではないか、という印象を持つ。林業で生計を立ててきた私としては戻っても仕事がない状態なので、国にはもっと山林の除染に積極的に取り組んでほしい」と話していました。
公表が解除に間に合わなかったことについて、茂木経済産業大臣は、閣議のあとの会見で「情報提供が遅れたという印象を受ける方がいて、ご心配をかけたことについては申し訳ないと思っている」としたうえで、「政府としてはこれまでもできるかぎり迅速かつ丁寧に住民の方々に情報提供を行ってきたところで、今後もしっかりと対応したい」と述べました。
また、内閣府は「間に合えばよかったが、今回の結果は推定の方法を作るのが目的で、解除に向けて必要なデータは公表している」と説明しています。
 
被ばく線量の推定方法は
今回の被ばく線量の推定では、まず山林や農地、それに住宅、学校などでサーベイメーターと呼ばれる測定器を使って、1時間当たりの放射線量を測りました。
次に、例えば教職員であれば住宅に15時間余り、学校の校舎内に7時間余り、校庭に30分といった1日の生活パターンを想定して、それぞれの場所で測った放射線量を足し上げます。
これを1年分に換算したものが年間の被ばく線量の推定値です。
ただ被ばく線量については、サーベイメーターとは異なる個人線量計と呼ばれる測定器を住民が実際に身につけて測定する方が、正しく測れるとされています。
内閣府は個人線量計による値はサーベイメーターを使って推定した値の70%ほどになると説明しています。
2つの測定器で違いが出るのは、サーベイメーターがその場の放射線量全体を測るのに対して、個人線量計は人間の体に直接身に付けるため、体が放射線を遮るなどの影響があるからです。
このため内閣府は今回の被ばく線量の推定に当たって、サーべイーメーターに基づく年間被ばく量の推定値に70%をかけて、より実態に近い個人線量計による被ばく線量を推定したとしています。
ただ、大人に比べ体の小さい子どもでは放射線を遮る効果が小さく、被ばく線量は今回の推定よりも多くなると考えられるということです。