高速増殖原型炉「もんじゅ」については、これまで当ブログで何度か取り上げて来ましたが、「初臨界」から20年を迎えるに当たって、東京新聞がその近況や問題点などを伝える記事を掲載しました。
記事のタイトルにもあるとおり政権は「もんじゅ」の延命に固執しています。
その背景については、3月31日に当ブログで紹介した記事「揺れる高速増殖炉『もんじゅ』の行方 小出裕章さんが語る」※が、分かりやすく説明しています。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
臨界から20年で運転3カ月 もんじゅ延命 政権固執
東京新聞 2014年4月7日
高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が5日、原子炉内で核分裂反応が連鎖的に起きる「初臨界」から20年を迎えた。この間、事故や不祥事を繰り返し、実際に運転したのはわずか3カ月間。「税金の無駄遣い」との批判に加え、東京電力福島第一原発事故で安全性への疑問も一段と膨らむ。原発を推進する安倍晋三政権は「核のごみ焼却」という新たな看板を掲げ、延命を目指すが、問題は放置されたままだ。 (西尾述志)
「一日も早く県民、国民の信頼に足る組織としなければ、もんじゅの将来はない」。地元、福井県の西川一誠知事は県議会二月定例会で、もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構(原子力機構)を批判した。
福井県はもんじゅを含め全国最多の原子炉十四基が立地する。原発を推進する立場の知事が根強い不信感を口にしたのは、もんじゅをめぐる不祥事の数々があるからだ。原発の安全性が揺らいだ福島第一原発事故から一年半後の二〇一二年九月にも、約一万点にも上る機器点検漏れが内部調査で発覚、原子力機構のずさんな運営体質があらためて問題になった。
機構側は組織改革に乗り出すとしたが、四月一日の組織再編は先送りに。自浄能力の無さを自ら示す結果となった。
◇ ◇
もんじゅは総事業費一兆円を超える国家プロジェクト。保守や管理が難しく、運転していない現在でも年間二百億円、一日当たり五千五百万円の巨費が投じられ、その大半は国民の税金だ。膨大なコストから米国やフランスなどは高速増殖炉開発から相次いで撤退、今や先進国では日本のみが開発にしがみつく。
安倍政権は今週にも閣議決定するエネルギー基本計画にもんじゅ存続を明記する。核燃料を増やす増殖炉研究の余地を残しつつ、むしろ使用済み核燃料を減らす「核のごみ専用の焼却炉」の役割を前面に押し出した。膨大な核のごみを解消する施設へ生まれ変わることで国民の理解を得ようとしている。
しかし、フランスと日本に高速増殖炉で核廃棄物を燃やす基礎データがあるとはいえ「まだ試験管レベルの話」(関係者)で、現時点では絵に描いた餅。核燃料サイクルでは、もんじゅだけでなく、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理施設でもトラブルが相次ぎ、いまだ運転していない。プルトニウムを軽水炉で燃やすプルサーマル計画も福島第一原発事故で見通しは立たない。
■もんじゅをめぐる主な経過
1983年5月 国が原子炉の設置を許可
85年10月 着工
92年12月 試運転を開始
94年4月 初臨界
95年8月 初発電
12月 ナトリウム漏れ事故が発生、運転停止
同 事故の様子を写したビデオ隠しが発覚
2003年1月 名古屋高裁金沢支部が設置許可無効の判決
05年5月 最高裁が高裁支部判決を破棄
10年5月 14年5カ月ぶりに試運転再開、臨界到達
8月 炉内中継装置の落下事故
12年8月 復旧工事終了
9月 約1万点の機器点検漏れが内部調査で発覚
13年5月 原子力規制委が事実上の運転禁止命令
9月 原子力機構が改革計画をまとめる
14年1月 点検計画見直しの虚偽報告が明らかに
3月 4月1日に予定の組織改編を断念し、先送り
4月 与党がエネルギー基本計画案を了承
<もんじゅ> 日本の核燃料サイクル政策の中核施設。使 った以上の燃料を生み出す「高速増殖炉」の実用化を目 指す研究段階の「原型炉」。電気出力28万キロワット。人工的に製造された猛毒のプルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を使う。主流の軽水炉と違い、核分裂で生じる熱を液体ナトリウムで取り出す。ナトリウムは空気に触れると燃え、水に接触すると爆発するため、取り扱いが難しい。