2014年4月17日木曜日

東電は被災社員に対しても冷淡

 福島原発事故の賠償を巡っては東電の冷淡な対応が常に問題にされてきましたが、それは自社の社員に対しても全く同様で、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が提示した和解案を、次々に拒否しています。
 
 東電が和解案を拒否した件数は3月26日までの1ヶ月間で6件にのぼり、社員(家族を含む)相手で和解案を拒否した件数は、3月26日現在で21件に上っています。
 そのため現在23歳と45歳の男性社員が訴訟を起し、別の2人も訴訟の準備を進めているということです。
 
 23歳の社員は、事故の約半年後に「適応障害」に陥り、うつ状態や不眠になったため、やむを得ず3畳一間の寮生活をやめていわき市のアパートに移ったところ、東電は原発ADRの中で「いわき市に転居した段階で避難は終了している」と主張和解を拒否したため、男性は訴訟を起しました。
 社員は、「会社を訴えてまで賠償を求めるべきか」と当然みましたが、「声を上げられない他の社員のためにも、責任を認めさせたい」として、提訴を決意しました。
 代理人を務める弁護士は「社員だけが賠償を認められない合理的な理由はない」と話しています
 
 この労使間の争いに対し東電労組は「賠償は個人の問題なので組合として会社と交渉する予定はない」としています。
 会社と同様に、肝心な労組も弱者の側には立ってくれません。東電労組の姿勢のよく分かる話です。
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東電VS社員:原発ADRが泥沼化
毎日新聞 2014年04月16日
◇和解拒否が1カ月で6件 提訴は2件
 福島第1原発事故の賠償を巡り、東京電力が先月26日までの1カ月間で新たに6件、国の原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が提示した和解案を拒否していることが分かった。すべて東電社員と家族の申し立て事案で、訴訟に発展したケースも先月だけで2件あり、他の社員も提訴を検討している。社員と会社が対立する異常な事態は、ますます深刻化している。【高島博之】
 
 関係者によると、東電による和解拒否で原発ADRの手続きが終結した件数は3月26日現在21件。すべて社員や社員の家族への賠償を命じる和解案を、東電が受け入れなかったためだ。同種事案は原発ADRが設立された2011年8月から今年2月25日までの約2年半で15件だったが、東電は1カ月で6件の和解案を拒否したことになる。
 
 3月4日には45歳の男性社員が福島地裁に、同10日には23歳の男性社員が東京地裁に、それぞれ訴訟を起こした。福島地裁に提訴した男性は事故当時、原発に近い福島県大熊町のアパートで1人暮らしをしていた。現在は福島市に転居しており、月10万円の精神的損害など約700万円の支払いを求め提訴した。男性の代理人を務める荒木貢弁護士は「社員だけが賠償を認められない合理的な理由はない」と話す。
 
◇「仲間のため」決意
 東京地裁のケースは入社4年目の若手社員。事故で大熊町の社宅から避難し、免震重要棟や自分の車の中で寝泊まりした後、11年8月、Jヴィレッジ(福島県広野町、楢葉町)にある社員寮に移った。
 3畳ほどの個室で物音を気にしながら暮らし、眠れない日々が続いた。同10月、仕事を終え横になったが寝つけず、気づくと朝までに1カ月分の睡眠導入剤を服用していた。医師の診断は適応障害。環境に適応できず、うつ状態や不眠に陥った。
 10月末、やむを得ず福島県いわき市のアパートに転居した。東電は原発ADRの中で「いわき市に転居した段階で避難は終了している」と主張。和解を拒否したため、男性は約1800万円の支払いを求めて提訴した。
 男性によると、社員差別とも言える会社の対応に、職場を去る若手が相次いでいる。同期入社の友人は「人を人として見てくれない会社で働けない」と言い残して退社した。「会社を訴えてまで賠償を求めるべきか」。男性は悩んだが「声を上げられない他の社員のためにも、責任を認めさせたい」として提訴を決意した。代理人の中川素充弁護士は「東電や国は、背後に声を上げられない多くの社員がいることを考えるべきだ」と話す。
 
 他の複数の弁護士によると、他にも少なくとも2人が訴訟準備を進めている。労使の対立とも言える構図だが、東京電力労働組合の動きは見えない。東電労組は取材に対し「賠償は個人の問題なので組合として会社と交渉する予定はない」としている。