高浜原発3、4号機の運転禁止を命じる仮処分を出した14日の福井地裁決定に、申し立てをした住民や支援者約500人が福井地裁前に集まり、「考えられる最高の決定だ」、「歴史的な一歩」などと、小雨の中で歓喜に沸きました。
また高浜原発の半径30キロ圏内に一部が含まれる滋賀県の三日月大造知事は14日、記者団に「人格権や原発の安全性に重きを置いた決定で、原子力行政にとって重大な問題提起だ」と述べました。
同じく一部が30キロ圏内に含まれる京都府の山田啓二知事は、「国や事業者は安全性について、国民に丁寧かつ明確な説明を行う必要がある」とのコメントを出しました。
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高浜原発:支援者ら「最高の決定」 再稼働差し止め仮処分
毎日新聞 2015年04月14日
◇福井地裁前 500人 歓声と拍手
想定外の地震による原発事故を「現実的で切迫した危険」と断じ、関西電力高浜原発3、4号機の運転禁止を命じる仮処分を出した14日の福井地裁決定。「合格」とした原子力規制委員会の審査とは正反対の結果に、申し立てた住民らは「最高の決定だ」「歴史的な一歩」などと高く評価したが、国の原子力政策に従ってきた地元自治体などからは疑問や戸惑いの声も聞かれた。
「考えられる最高の決定だ」。関電高浜原発3、4号機の再稼働を差し止める仮処分決定が出た14日、福井地裁前には申し立てをした住民や支援者約500人が集まり、小雨の中で歓喜に沸いた。午後2時過ぎ、今大地(こんだいじ)晴美代表らが「司法はやっぱり生きていた」「司法が再稼働を止める」と書いた垂れ幕を掲げると、「よくやった!」と歓声や拍手が起こった。
決定は、東京電力福島第1原発事故後に作られた原発の新規制基準を「(基準に)適合しても原発の安全性は確保されない」と否定した。同様の仮処分申し立てや訴訟に波及する可能性があり、住民側は「日本中の原発を廃炉に追い込みたい」と意気込んだ。弁護団の海渡(かいど)雄一共同代表は「日本の脱原発を前進させる歴史的な一歩。住民の人格権、ひいては子どもの未来を守るという、司法の本懐を果たした輝かしい日」と笑顔で声明を読み上げた。
その後、福井市内で開かれた記者会見では、内山成樹弁護士が原発の耐震設計の基本となる基準地震動の策定方法に疑問を呈した決定に触れ、「基準地震動が1桁上がるかもしれない。費用がかかって現実的には対策は無理だ」と指摘した。河合弘之・弁護団共同代表は「新規制基準を作り直すことから出直せ、と言うのが裁判所のメッセージだ」と強調した。
また、内山弁護士は、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「規制委がすることは規制。結果として安全が担保できればいい」などと発言したことを取り上げ、「安全基準と関係ない規制基準なんて、ばかを言ってはいけない」と批判した。
原発3基が立地する福井県敦賀市の市議でもある今大地代表は「原発が集中立地する若狭地方の人たちは、思いを表に出せずに過ごしてきた」と慎重に言葉を選んで振り返り、「『原発は怖い』と声に出してもよいと今回の決定は伝えてくれた。多くの人が原発のことを声に出せるような若狭にしていきたい」と期待を寄せた。【近藤諭、村山豪】
◇福島原発事故で避難生活者「当然の決定だ」
東京電力福島第1原発事故で避難生活を送る人たちの多くは「当然の決定だ」と歓迎した。
福島県南相馬市の自宅が避難区域となり、福島市で暮らす漁師の今井功さん(67)は「『原発に絶対安全はない』が福島の最大の教訓。福島の現状を考えた上での決定だと思う」と語った。原発事故後、同居していた息子一家は同県いわき市に移り、家族はバラバラ。各地で進む再稼働の動きについて「事故が起きれば生活が一変する可能性があると分かった上で判断してほしい」と話した。
第1原発が立地する同県双葉町から同県会津若松市に避難する60代の女性も「事故があるまで原発は安全と信じていた」と振り返る。東電に勤める長女は震災当日、第1原発敷地内にいた。5日後、疲れ切った娘と再会した時の様子を思い出すと今も涙が込み上げるという。「この苦しさは体験してほしくない。福井地裁の決定は当然であり、原発は一つもいらない」
同県伊達市から札幌市に自主避難した宍戸隆子さん(42)は、避難者コミュニティーの代表を務める。「司法が福島の事故と、我々被害者を忘れないでいてくれた。この決定を新しいエネルギー社会を目指すきっかけにしてほしい」と語った。【宮崎稔樹、喜浦遊、遠藤修平】
滋賀知事「重大な問題提起」=「安全性、説明を」京都知事
-高浜原発再稼働差し止め
時事通信 2015年4月14日
関西電力高浜原発の半径30キロ圏内には、滋賀県と京都府の一部が含まれる。福井地裁の再稼働差し止め決定を受け、滋賀県の三日月大造知事は14日、記者団に「人格権や原発の安全性に重きを置いた決定で、原子力行政にとって重大な問題提起だ」と述べた。
三日月知事は「今回の決定にも相通じるような形で、実効性ある多重防護体制の構築の必要性を訴えてきた」と強調。「立地自治体のみならず、影響が及ぶと想定される自治体とも協定を結ぶべきだという主張は変わらない」と述べ、引き続き関電に安全協定締結を求めていく考えを示した。
一方、京都府の山田啓二知事は「詳細は承知していないが、国や事業者は安全性について、国民に丁寧かつ明確な説明を行う必要がある」とのコメントを出した。