福島原発でいま行われている廃炉作業は、昨年4月に発足した東電の社内分社「福島第1廃炉推進カンパニ」が行っています。福島原発の廃炉作業に特化して業務を進めるための会社で、第1原発構内で1200人、本社で150人が働いています。
発足1年に当たり、河北新報が「東電廃炉カンパニー発足1年」とする記事を出してこの一年を総括しました。
敢えてプラス面を挙げれば、危険だと言われていた4号機の燃料取り出しが終了したことと、第1原発構内で全面マスクが不要な低線量エリアが徐々に広がるなど環境改善が前進したことくらいで、肝心の汚染水の処理・処置については、汚染水の海洋流出の阻止や高濃度汚染水の全量処理、凍土壁の施工、凍土壁施工のために必要な2、3号機建屋に接続するトレンチの止水などは一向に思わしくなく、極めて小規模で単純な工事のはずのトレンチ止水もいまだに目処が立っていない有様です。
またかねてから指摘されている情報の公開についても改善は見られていません。
河北新報の記事を紹介します。
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東電廃炉カンパニー発足1年 信頼揺らぐ
河北新報 2015年4月5日
東京電力福島第1廃炉推進カンパニーの発足から1年がたった。この間、4号機の使用済み核燃料の取り出しが完了。作業員の労働環境にも改善が見られた。一方、汚染水処理は計画を2度修正。さらに、汚染雨水の外洋流出を1年近く公表しなかったことが判明し、地元漁業者が「信頼関係が崩れた」と批判を強めており、処理の工程に遅れを来している。
<取り出しに自信>
「世界中から最も危険だと言われていた4号機の燃料取り出しが終わった。大きな自信になった」。3月26日、福島県楢葉町のJヴィレッジで開いた定例記者会見で、増田尚宏最高責任者が1年の成果を語った。
主な作業項目の進捗(しんちょく)状況は表の通り。4号機の使用済み燃料の取り出しは昨年11月、大きなトラブルもなく工程通り終了。東電は9月以降に始める1~3号機の燃料取り出しに自信を見せる。
<労働環境は改善>
1日約7000人が働く第1原発構内の環境改善も前進した。除染と道路の舗装で、全面マスクが不要な低線量エリアが徐々に広がり、本年度末には1~4号機と高線量のタンク周辺を除き90%まで拡大する。
肝心の汚染水対策は見通しの甘さを露呈した。敷地内のタンクに貯留する高濃度汚染水の全量処理完了時期をことし3月から5月に修正。さらに数カ月要すると変更した。塩分濃度が高い汚染水が多核種除去設備(ALPS)で想定通り処理されず、増田氏は「これほどALPSの稼働が難しくなると思っていなかった」と釈明した。
<場当たり的対応>
高濃度汚染水がたまる2、3号機海側トレンチ(電源ケーブルが通る地下道)の止水も難航している。当初は汚染水を凍結した上で抜き取る計画で、真夏に氷を投入する場当たり的な対応を繰り返した。作業開始から半年間凍らず、昨年11月にセメントで埋め立てる手法に移行。凍土遮水壁の凍結開始も1カ月先送りせざるを得なくなった。
情報公開に対する姿勢も失点となった。2号機建屋屋上の汚染雨水が排水路を通じて外洋(港湾外)に流出していた事実を1年近く公表していなかったことが2月に判明。地元漁業者は反発を強めている。
この問題の発覚で、建屋周辺の井戸「サブドレン」の地下水を浄化して海洋放出する計画が暗礁に乗り上げている。増田氏は「地元の方々への思いが至らず、反省している」と弁明したが、代償は大きい。
[福島第1廃炉推進カンパニー]福島第1原発の廃炉作業に特化して業務を進めるため昨年4月に発足した東電の社内分社。第1原発構内で1200人、本社で150人が働く。