昨年8月に発足した国の「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が、福島原発の廃炉作業における「戦略プラン」をほぼまとめ、近く正式に公表するということです。
最難関となる溶融燃料(燃料デブリ)の取り出しでは、工法を原子炉格納容器を水で満たす「冠水工法」、燃料デブリのある原子炉底部のみを冠水してその上から取り出す「気中工法」、同じく原子炉の横から取り出す「気中工法」などの三つに絞り込み、最初に燃料デブリの取り出しを行う号機で、2016年度後半を目標に工法を選定するとしています。
どの程度工法が具体化されているのか注目されます。
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福島第1溶融燃料取り出し 「冠水」など3工法検討
河北新報 2015年4月2日
東京電力福島第1原発の廃炉作業における中長期的な方針を示す「戦略プラン」の全容が1日、判明した。最難関となる溶融燃料(燃料デブリ)の取り出しで重点的に取り組む工法を、原子炉格納容器を水で満たす「冠水」など三つに絞り込み、検討すべき課題を挙げた。政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構が策定を進めており、近く正式に公表する。
今回、初めて策定する戦略プランは、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機での燃料デブリ取り出しと廃棄物対策の2分野で構成。政府が公表した第1原発の廃炉作業に向けた「中長期ロードマップ」に技術的な根拠を与える土台となり、プランの内容を踏まえたロードマップの改訂も近く発表する。
戦略プランでは、燃料デブリを取り出すために取り組む工法として、(1)原子炉上部まで水を張る冠水工法で上から取り出す(2)デブリがある原子炉底部に水を張る気中工法で上から取り出す(3)気中工法で横から取り出す-の三つを挙げた。
冠水工法の場合、燃料デブリ取り出し時に発生する放射性物質の飛散を防止できる一方、損傷した格納容器を補修して止水することが前提となるため、「補修方法や水位を安全に管理できるシステムを構築する必要がある」とした。
気中工法は、冠水工法と比べて燃料デブリの冷却や放射線の遮蔽(しゃへい)効果が期待できないため、冷却の可否や取り出し時に放射性物質が飛散した場合の影響評価を課題に挙げた。
現在、1~3号機では、燃料デブリ取り出しの準備段階として、原子炉建屋にある使用済み核燃料プールからの燃料取り出しや、建屋内の除染に向けた作業が進んでいる。戦略プランでは、最初に燃料デブリの取り出しを行う号機で、2016年度後半を目標に工法を選定するとしている。
廃棄物については、原子炉建屋の地下など、廃棄物の性状を見極めるサンプリングができていない場所があるとして、採取方法を含めた計画を策定すべきだとした。
機構は今後、現場の状況変化や研究開発の成果を踏まえて継続的にプランを見直す方針。
[原子力損害賠償・廃炉等支援機構]
福島第1原発事故により巨額の賠償責任を負った東京電力を支援する目的で設立された原子力損害賠償支援機構に、廃炉・汚染水対策部門を加え昨年8月に発足した。東電に指導、勧告する権限を持ち、廃炉を加速する「司令塔」の役割を担う。原子力や土木工学の専門家を中心とする委員会で溶融燃料の取り出し時期や工法、必要な技術開発を検討している。