14日の高浜原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分決定で、原発の「新規制基準」が「緩すぎる」、「適合しても安全性は確保されていない」、「合理性を欠く」と批判されたことを受けて、日刊ゲンダイが「欠陥だらけで安全とは程遠い新規制基準」を取り上げました。
原子力規制委自身が繰り返し、「安全か、安全じゃないかという表現はしない」、「絶対に安全だとは私は申し上げません」と逃げを打ちつつ、事実上再稼動につながる規制基準合格を出し続けるというのはなんともおかしな話です。
規制委が安全を保障しなければ他の誰も安全を保障しません。つまりそれは「安全ではないが稼動させる」といっているに等しいことです。
仮処分決定では単に「緩すぎる新規制基準」、「合理性を欠く基準」というに留めていますが、その実態は日刊ゲンダイが指摘するとおり、最も重要である装置の耐震性の不十分さを含めて、新規制基準が「今あるほとんどの原発が動かせるようにするために作った緩い基準」に過ぎないということです。
そんないい加減な基準が出来たのは、他ならぬ「原子力ムラ」の人たちが新基準を作ったためです。
少なくとも新規制基準はそういうものであるということを、今回の「仮処分決定」を機に改めて銘記する必要があります。
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高浜原発差し止め 司法も警告「世界一厳しい」安全基準のウソ
日刊ゲンダイ 2015年4月15日
14日福井地裁が下した高浜原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分決定は衝撃的だ。国の原発の「新規制基準」を「緩すぎる」「適合しても安全性は確保されていない」「合理性を欠く」と、根底からバッサリ否定するものだったからだ。安倍首相はさぞ狼狽していることだろう。
実際、福井地裁が明言したように、「新規制基準」は欠陥だらけだ。安倍首相は「世界一厳しい基準」と自画自賛し、国民も「適合すれば安全」だと思わされているが、「新規制基準」は、安全とは程遠いシロモノなのである。
■規制委は「安全」とは言っていない
福井地裁の決定を受け、自民党の細田幹事長代行は「安全性の判断は専門家に任せるべきだ」と裁判所を批判した。だが、細田氏の発言はチャンチャラおかしい。原子力規制委員会の田中委員長は過去にこう繰り返しているのだ。
「安全か、安全じゃないかという表現はしない」
「絶対に安全だとは私は申し上げません」
要するに、そもそも規制委の審査は「安全」を宣言するものではないのである。
■避難計画の実効性審査されず
性急な原発再稼働に疑義を唱えている新潟県の泉田知事は、かつて本紙のインタビューで「新規制基準」についてこう話していた。
「世界の標準は『住民の命と健康をどう守るか』なのに、田中委員長は『そこは私たちの仕事ではない』と言う。無責任以外の何ものでもありません」
規制委は住民の避難計画を審査せず、自治体に“丸投げ”。「我々が審査するのはハードだけ」という姿勢なのだ。米国の原子力規制委員会が、緊急時の避難計画が整っていなければ稼働許可を出さないのとは大違いだ。
■メルトダウンの対策がない
原発の安全確保には「止める」「冷やす」「閉じ込める」が必要で、世界ではメルトダウン事故を前提に対策が取られている。欧州では溶け落ちた燃料を受け止める「コアキャッチャー」の設置が義務化されている。ところが、日本の新基準にはそれがない。「世界一厳しい」なんて笑止千万だ。
■福島原発事故の検証が先
「(福島第1原発)事故の検証・総括がないまま策定された規制基準では安全は確保できません」
これは、今回の仮処分決定を受け、新潟県の泉田知事が出したコメントの一部。泉田知事が繰り返し主張していることだが、福島原発の事故原因がいまだ分からないのに、どうすれば安全が確保されるのか。安全基準なんて作れるわけがない。「原発の倫理学」の著書もある元経産官僚の古賀茂明氏もこう語った。
「泉田知事も言っているように、『新規制基準』は避難計画が切り離されていて話になりません。原発事故が起きた際、住民が避難するのにどれだけの時間がかかるか分からないのに、どうやってベントで放射能を放出する判断をするのでしょうか。日本は地震大国なのに、活断層を調べる年代も狭い。コアキャッチャーを設置する必要もない。今あるほとんどの原発が動かせるようにするために作った緩い基準だからです。今回の裁判所の決定は、原子力規制委員会に、『基準をもう一度作り直せ』ということです」
■英BBCも「安倍首相にとって大打撃」
関電が想定していた今年11月の高浜原発の再稼働は、これで厳しくなった。それどころか、英BBCまで「原発の再稼働を推し進める安倍首相にとって大打撃」と報じている。安倍首相はいよいよ、お腹が痛くなってきたんじゃないか。