2016年1月24日日曜日

甘利大臣の原発利権と無責任体質

 千葉県の建設会社からの1200万円収賄(=あっせん利得)疑惑の渦中にある甘利大臣は、安倍首相の「盟友中の盟友」として知られ第一次安倍内閣でも経産大臣を務めました。
 甘利氏は、原発族議員としても知られ、02年には原発を優位に位置づける「エネルギー政策基本法」の成立に中心的な役割を果たすなどして、少なくとも2010年までの数年間は原発からの献金が議員のトップテンに入っていました。東電と関連企業が購入した甘利氏のパーティ券の総額は、年間1000万円以上とも言われます
 
 そんな甘利氏が、LITERAによれば、2011年6月にテレビ東京がある番組で経産大臣時代のことについて質問しようとしたところ、座を立ってインタビューを打ち切り、放送をやめさせようとしたということです。
 第一次安倍内閣時代の06年に共産党吉井英勝議員が巨大地震で発生する津波で、冷却機能を完全に失ってしまう原発が複数存在する」として、「外部電源を喪失したケースにおけるバックアップ電源の不備について」糾す質問主意書を提出しました。
 それはまさに福島原発の事故を予見する内容でしたが、安倍内閣は「経産省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期している」と回答し、具体的対策を講じようとはしませんでした
 
 福島原発事故からまだあまり間がない2011年6月、テレビ東京『週刊ニュース新書』という番組で福島原発の事故の背景に、自民党の原発政策安全対策の不備があったとする特集を組み、下野していた甘利氏にインタビューを行ったのですが、話がその質問主意書に及んだ途端、インタビューを打ち切って記者を別室に連れていき、こう恫喝めいた口調で言い放ちました。
  「私を陥れるための取材だ。放送は認めない」
  「テープを消せと言っている。消さないと放送するに決まっている」
 
 結局放送では、甘利氏が席を立った後は、「取材はその場で中断となりました」というナレーションとともに、甘利氏がいなくなった空席だけが映し出されました。
 そのニュース番組が放映されると、甘利事務所は、途中退席を誤った印象を持たせるように編集したなどとしてテレに抗議、甘利氏を原告として名誉毀損裁判を起こしました
 
 LITERAの記事は、そんな甘利氏が今回の疑惑に対してきちんと対処するとは思われないと述べています。
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賄賂疑惑!甘利大臣の原発利権と無責任体質…
原発事故の責任を追及され「日本はおわりだ」と開き直り逃亡の過去
LITERA 2016年1月23日
 先日発売の「週刊文春」(文藝春秋)で、“口利き”の見返りに多額の賄賂を受け取っていたと実名告発された甘利明・経済再生相。告発者は録音テープなどの物的証拠も保持しており、金銭授受が事実であることは間違いないだろう。
 
 しかし、甘利大臣は「一週間以内に記憶を確認してお話ししたい」などと言っているが、本当にきちんと説明責任を果たすのか。実は、担当記者の間では、「あの甘利氏が野党やマスコミの追及にまともに答えるはずがない」という声が圧倒的らしい。
「いくら証拠が揃っていても、甘利氏の性格を考えると、事実無根、謀略などと言い張り、『文春』を訴えるかもしれない。あるいは、絶対的に形勢不利だと見れば、大臣辞任を申し出て雲隠れするか。いずれにしても、きちんと対処するとは思えない」(全国紙政治部記者)
 
 こんな声が出てくるのは、甘利氏が以前、マスコミの追及に信じられない“遁走劇”と“開き直り”を見せたことがあるからだ。
 それは、2011年6月18日、テレビ東京で放送された『週刊ニュース新書』という番組でのことだ。東日本大震災から3 カ月。同番組は、福島第一原発の事故の背景に、自民党の原発政策、安全対策の甘さがあったとして、その責任を追及する特集を組み、当時、下野していた甘利氏にインタビューを行った(今のテレビの状況を考えると、こんな番組が放映されたということ自体、隔世の感がある)。
 
 甘利氏は02年、原子力発電を柱に据える「エネルギー政策基本法」の成立に走り回り、第一安倍政権では原発政策の舵をとる経産省のトップに就任していたが、その在任中、原発事故の危険性を指摘する声を無視した事実があったからだ。
 ところが、番組で異変が起きる。まず、一般論としての、安全対策の甘さを指摘された甘利氏は、「刈羽原発事故後の新指針には地震に備えよとは書いてあるが津波に備えよとはない」などと主張していたが、テレ東記者が“ある資料”を見せると突然、沈黙し、画面が切り替わる。そして、「取材はその場で中断となりました」というナレーションとともに、甘利氏がいなくなった空席だけが映し出されたのだ。
 テレビ東京の記者が見せた資料というのは、06年に共産党議員が当時の安倍内閣に出した質問主意書。内容は、巨大地震で発生する津波で、冷却機能を完全に失ってしまう原発が複数存在するとして、外部電源を喪失したケースにおけるバックアップ電源の不備について質問するものだった。
 
 まさに、福島原発の事故を予見する内容だったわけだが、当時の安倍内閣は答弁書で、「経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期している」などと回答。具体的対策を講じなかった。
 原発を所管する担当大臣だった甘利氏は当然、これを説明する義務がある。ところが、甘利氏はその安全対策を怠った責任を問われたとたんに、インタビューを拒否して逃亡してしまったのである。
 
 しかも、このニュース番組が放映されると、甘利事務所は、途中退席を誤った印象を持たせるように編集したなどとしてテレ東に抗議、甘利氏を原告として名誉毀損裁判を起こした
 明らかなスラップ訴訟だが、しかし、この裁判でさらにとんでもない事実が出てきた。法廷で甘利氏をインタビューしたテレ東記者らが証言をしたのだが、それによると、甘利氏は主意書をもちだされたとたん、カメラをとめさせ、記者を別室に連れていき、こう恫喝めいた口調で言い放ったという。
 「私を陥れるための取材だ。放送は認めない」
 「テープを消せと言っている。消さないと放送するに決まっている」
 「大臣なんて細かいことなんて分かるはずないし、そんな権限がないことくらい分かってるだろう」
 
 自分の政治責任を追及されたとたんに、テープを消せ、放送するなとは、この男は「政治家としての責任」も「報道の自由」も何も理解していないらしい。
 いや、それだけではない。裁判では、甘利氏がこんな信じられない発言をしたことも暴露されている。
「原発も全部止まる。企業はどんどん海外へ出て行く。もう日本はおわりだ」
 日本はおわりだ、なんていう台詞を口にする政治家をこれまで見たことがないが、ようするに、この男は、国民の生命や安全など、どうでもいいのだろう。実際、甘利氏が原発の旗振り役を務めてきたのも、私利私欲によるものだった。甘利氏は“原発族”として奔走する見返りに電力会社から多額のカネを受けとってきたのだ。
 
 東京電力は、国会議員を電力業界での重要度で査定し、ランク入りした“原発議員”たちのパーティ券を大量購入していたことがわかっている(朝日新聞2012年1月8日付)。しかも、事実上の企業献金であるにもかかわらず、1回の購入額が収支報告義務のある20万円を超えないように分割すらしていた。甘利大臣は、その2010年までの数年間の“原発議員ランキング”のトップテンのなかにいたのだ。東電と関連企業が購入した甘利氏のパーティ券の総額は、年間1000万円以上とも言われている
 ようするに、自分は“原発マネー”で甘い汁を吸いながら、事故の政治的責任を問われたとたんに逃走、これが甘利明という政治家がやってきたことだ。そして、甘利氏は今でも、素知らぬ顔で原発再稼働は必要だとしきりに発言している。
 
 「原発は動かそうが動かすまいが、リスクはほとんど変わらない」(ダイヤモンド社「週刊ダイヤモンド」12年11月10日号)
 「投資の足を引っ張っているのが電気料金。(略)再稼働は必要だ」(毎日新聞出版「週刊エコノミスト」14年3月25日号)
 甘利氏は、税制や社会保障改革、TPPなど経済財政の重要政策に携わっているが、同じように、国民の生活や安全のことなど一顧だにしておらず、結局、自分の権益や政治家生命のことしかアタマの中にないはずだ。
 
 そして、今回「週刊文春」がスクープした“1200万円収賄疑惑”も、そうした私腹を肥やすために政治をするという甘利氏の体質の延長線上にでてきたものだろう。
 それにしても、なぜ、安倍首相は第一次政権時からずっとこんな政治家を重用してきたのか。
 それはいうまででもなく、甘利氏が安倍晋三首相誕生のキーマンのひとりであったからだ。
 06年の自民党総裁選。当時、甘利氏が所属していた派閥の領袖・山崎拓氏が出馬に意欲を見せると、甘利氏は寝返って安倍支持を表明。選対事務局長として安倍氏をバックアップし、結果、山崎氏は出馬を見送らざるをえなくなり、安倍首相が誕生した。そして、甘利氏には“褒美”として、第一安倍政権で経産相というポストが与えられたのだ。
 
 安倍首相からしてみれば、甘利大臣は“オトモダチのなかのオトモダチ”。以降、ふたりはあらゆる政策で“共犯者”の関係にあり、国民を裏切る数々の行為があろうとも甘利氏を切らないのはそのためなのだ。
 今回の収賄スキャンダルだけでなく、積もり積もった甘利氏の疑惑について、任命した安倍首相は、しっかりと責任を果たす義務がある。もう、これまでのように逃げることは許されない。国民のことなど二の次で、ひたすら私腹を肥やしてきた罪は、あまりにも重い。 (宮島みつや)