2016年1月20日水曜日

20- 「遮水壁」で汚染水増加 問題解決のめど立たず

 東電は福島原発の海側に鋼管杭をベースとする遮水壁を昨年10月末に完成させましたが、せき止めた地下水が高度に汚染されていたために放流することができず、その地下水を日量400トン建屋に戻して最終的に貯蔵タンクに蓄えています。

 この遮水壁は全長780mに及ぶもので2012年に着工され、完成すれば海中に日量400トン流出する地下水を10トンに減じることができるとされていました。それが逆に、汚水の貯留負荷を日量400トン(冬季は降水量が少ないので200トン)も増やしました。
 お粗末な話ですが、従来はそのまま海に放流されていたものがこれによって回収されることになりましたので、海の汚染はその分減じることができました。怪我の功名です。
 
 この海側遮水壁は原発施設の周囲を囲う凍土遮水壁と接合して、より完璧を期すという考え方であったようです。東電としては凍土遮水壁が完成しないことには・・・という言い訳もあるでしょうが、その凍土壁の方も根本的な問題があり、熱収支上、壁を通過する水の局部流速が0・1m/日以上あると凍結させることができません。全体の凍結が進むと必然的に残りの開口部の流速が上がるので、原理的にいつまで経っても完全に凍ることはありません。
 
 その問題はひとまずおくとしても、海側遮水壁は完成したものの当初の意図は全く達成されませんでした。
 NHKが遮水壁に関する現況を「遮水壁で汚染水増加 問題解決のめど立たず」と報じました。
 
    (関係記事)
2015年4月30日 福島原発 山側の凍土壁 30日から試験凍結
2015年7月6日 凍土遮水壁 年度内の完了は困難に

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「遮水壁」で汚染水増加 問題解決のめど立たず
NHK NEWS WEB 2016年1月19日
東京電力福島第一原子力発電所では、汚染された地下水を海に流れ出す手前でせき止める「遮水壁」の完成によってかえって汚染水が増える新たな課題に直面していて、現在も問題解決のめどは立っていません。
 
福島第一原発では去年10月、護岸沿いに「遮水壁」と呼ばれる鋼鉄の壁を設けて汚染された地下水が海に流れ出るのを抑えていて、せき止めた地下水の多くは放射性物質を取り除いたうえで海に流す計画でした。ところが、放射性物質の濃度が想定以上に高いことなどから大半を処理できずに建屋の中に流していて、結果的に汚染水の増加に拍車がかかり新たな課題となっています。
建屋に入れた地下水の量は先月は1日当たりおよそ400トンだったのが、今月13日の時点ではおよそ200トンとなっていて、東京電力は降水量が少なかった影響が大きいと説明しています。
地下水の汚染源としては、原発事故の直後に土壌に流れ出した汚染水がどこかにたまっていることが考えられるとして濃度の監視を続けていますが、本来の対策が実施できるめどは立っていません。
東京電力は「根本的には放射性物質の濃度が下がるのを待つしかないが、上流側でくみ上げる地下水の量を増やすなどの対策とあわせてできるだけ早く事態を改善したい」と話しています。
 
遮水壁の主な構造図
東電ホームページより