2016年1月13日水曜日

政府は避難指示を28年度中に解除の方針 しかし除染は進んでいない

 政府は、福島県内の避難指示について、平成28年度中には帰還困難区域を除いてすべて解除する方針で、商業施設や医療機関の整備など、住民が帰還できる環境づくりへの支援を加速させるということです。
 そうした環境は居住するためには欠かせない条件なのでぜひ進めてほしいものですが、最も重要なことは十分な除染で、永住に支障のない空間線量に落ちていることです。その詳細なデータが示されないことには帰還は進みません。
 
 福島民友新聞が、除染業者のいい加減な除染作業指示(指揮)の実態について、除染作業に従事している男性に語らせています。
 いわば「線量が下がらなくても一通りの作業をすればよい、余計な作業はしなくてよい」、「速さ重視」、「利益重視」で「仕事をこなす」という実態です。これでは線量はあまり下がらないし、放射線管理区域のレベルを数倍も上回る環境を、国が大丈夫だと言ってみても人は住みません。
 まずは居住可能基準を年間被曝量1ミリシーベルトに限りなく近付けて、それを目指して除染を徹底することです。それなくしては住民の帰還も地域の復興もありません。
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福島県の避難指示 帰還困難区域除き28年度中に解除方針
NHK NEWS WEB 2016年1月12日
政府は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けた福島県内の避難指示について、新年度、平成28年度中には帰還困難区域を除いてすべて解除する方針で、商業施設や医療機関の整備など、住民が帰還できる環境づくりへの支援を加速させることにしています。
 
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、福島県では9つの市町村で今も避難指示が出されていますが、政府は、「帰還困難区域」を除く、「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」について、新年度、平成28年度中には避難指示をすべて解除する方針です。
対象となる9つの市町村のうち、南相馬市、川俣町、葛尾村、それに川内村では、避難指示の解除に向けて、すでに域内での準備宿泊が始まっています。
一方、避難している住民には、放射線に対する不安に加え、帰還したあとの生活環境に対する懸念が根強いことから、政府は、商業施設や医療機関、福祉施設の整備など、住民が帰還できる環境づくりへの支援を加速させることにしています。
また、政府は、新年度予算案に盛り込まれた補助金も活用して、原発事故で避難指示が出された地域などでの工場や小売店、飲食店などの建設を支援し、地域の再生につなげたい考えです。 
 
 
【復興の道標・作業員】労働問題「国が放置」相次ぐ雇用トラブル
福島民友 2016年01月11日
「俺たちは虫けら同然だ」。2012(平成24)年春から除染作業員として働いている郡山市の男性は吐き捨てた。
 
 大手企業に30年ほど勤めた後、別の会社に移った。しかし、震災後に倒産。「何かお金になる仕事はないか」と考えていた時、除染作業が目に留まった。原発事故後の環境回復のため、郡山市や福島市などで作業に汗を流した。
「そんなことしなくていい」。昨年、庭の土の放射線量を下げる手法や除染で出る排水の処理について、この3年間、自分が続けてきた手法を変えるよう指示を受けた。代わりに指示されたやり方は、かなり簡略化されたものだった。「線量が下がらなくても、作業さえすればいいと考えているのではないか」。地元の人間として疑問を持ったが、文句は言えなかった。
 
 当初は除染を「復興に貢献する仕事だ」と捉えていた。「ありがとう、きれいになったよ」。住宅除染の現場で感謝の言葉を受ける度に、やりがいを感じた。しかし、現場で作業の指示をしてくるのは県外から除染に参入した会社の人間だった。連絡先も知らないような会社だ。「利益重視」「早さ重視」が目に付き、違和感が拭えなかった。「県外の会社に県内をかき回されている。いくら努力してもむなしさを感じる」
 県外の作業員だけでなく、県民も多く従事する除染作業。復興に向けた作業でありながら「仕事に誇りを持てない」との声が上がる。
 
 「『復興のため』と志を持って除染に加わろうと思っても、参入に二の足を踏んでしまう人もいる。計画した段階で予見すべきだった労働問題が起こるべくして起きている」。労働法を専門とする福島大准教授の長谷川珠子(38)は指摘する。
 除染をめぐる請負構造の末端で、予定通りに賃金が支払われないなど雇用のトラブルが相次ぐ。期日に間に合わせようと人員確保に走った結果、他の現場では働くことができないような労働者が全国から集まっている。
 こうした状況は想定できたはずなのに、除染完了を急ぐ行政は手を打たなかったと長谷川は考える。「除染作業員のイメージ悪化につながった。早い段階で環境省や厚生労働省など関係省庁間で議論すべきだった」
 
 郡山市の男性は、うつむきながら原発事故後の日々を振り返った。「カネに目がくらんだ自分がバカだった。除染の仕事に就いたことを後悔している」(文中敬称略)