2016年1月17日日曜日

中間貯蔵施設の行方(小出裕章ジャーナル)

 今回の小出裕章ジャーナルは中間貯蔵施設がテーマで、地元では中間貯蔵と言いながら最終処分場になってしまうのではないかという不信感非常に強いことに対して、小出氏は「必ずそうなります。30年経ったらそれをまたどこかで引き受けてくれるなんてことは到底あり得ない話なのです」と断言しています。
 そのことを否定できる人は誰もいないのではないでしょうか。役人や政府関係者以外では・・・
 
追記 文中の太字箇所は原文で行わているものです。また原文では小出氏には「さん」がついていましたが、この紹介文では外しました。
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中間貯蔵施設の行方
第158回小出裕章ジャーナル 2016年01月16日
「これからは強権的にどこかの地に押し付けるというようなことになるのだろうと思います」
 
今西憲之: 小出さん、新年おめでとうございます。 
小 出: はい、おめでとうございますとあまり言えるような時代ではないような気もしますけれども。でも、とにかく年が明けたということで、時っていうのは面白いなと思います。
今 西: はい、よろしくお願い致します。
小 出: はい、こちらこそよろしくお願いします。
今 西:  今日のテーマはですね、福島第一原発の事故にともなって、除染で出ました放射性物質を含んだ汚染度などの一時置いておく中間貯蔵についてお伺いしたいと思います。中間貯蔵の予定地ですね。福島県の福島第一原発のある双葉町、大熊町なんかに搬入が予定されておりましてですね、一部は搬入されておるようですけども、用地の確保がなかなかうまいこといかず進んでないというような現状なんですけれども、私も実際、この中間貯蔵の予定地ですね、一部すでに放射性物質で汚染された土なんかが置いてある所行きましたけど、小出さん、すさまじい高い放射線量を計測するんですねえ。
小 出: そうですね。今西さんが現場に行って下さるのでわかって下さるのですけれども、もっともっと大手のマスコミの記者の人達もですね、きちんと現場に行って取材してほしいと私は願います。
今 西: いわゆる線量計がもう見る見るうちに数値が上がっていく。もう普通では考えられない、もう想像を絶するような放射線量の高さに本当に驚くばかりだったのですけれども、中間貯蔵と言いながら最終処分場になってしまうのではないかという不信感ですね、地元では非常に強いようなんですが。
小 出:  必ずなります。中間で終わるわけがないのであって今、今西さんが話して下さったように、猛烈な放射性物質を抱えたゴミがそこに置かれてしまうわけで、30年経ったらそれをまたどこかで引き受けてくれるなんてことは到底あり得ない話なのです。中間貯蔵と言っていますけれども、政治の場にいる人達、官僚の人達というのは、本当にいい加減なことをするものだなと私は思います
今 西: はい。それでですね、放射性物質を含んだ汚染土ですとかね、がれきですとか、あと草とかそういった物は、決して福島県だけの物ではないわけですよねえ。 
小 出: そうですね。宮城県にもあるし、茨城県にも栃木県にも群馬県にも、もうそこらじゅうにあるのです。 
今 西: そういう物もこちらのいわゆる中間貯蔵として双葉町、大熊町に搬入されてくるのではないかという危惧もある。逆に、そういう汚染された物はできるだけ1ヶ所、というか小さなエリアで固めて貯蔵した方がいいというような話もある。その辺なかなか難しいところなんですが小出さん、いかがでしょうか? 
小 出: もちろん、1ヶ所に集めた方がいいのです。ただ今の日本の政府は、それぞれの県の単位で中間貯蔵施設を提供しろというようなことでやっているわけです。弱いところ弱いところが狙われて落とされていくわけですから、仮に福島県だけが引き受けたとすれば、他の県の物も引き受けさせられてしまう可能性が高いと私は思います
    ただし、私自身は放射性物質というのは1ヶ所でキチッと保管するというのがいいと思いますし、どこかに集めるというのがいいのだと思います。ただしそれが今、政府が進めてるような、いわゆる民有地を住民から借り上げて、そこに入れるというようなやり方は論外で、もともとこのゴミというのは、東京電力の所有物だった放射性物質なわけですから、東京電力の敷地に搬入するというのがいいと私は思います
    本当は、もともとは福島第一原子力発電所の敷地に戻すのがいいのですけれども、残念ながら今、福島第一原子力発電所の敷地は放射能の沼のような状態になってしまっていて、そこでたくさんの労働者が放射能と格闘しているわけですから、そこに戻すことはたぶんできないと思います。それならば、福島第一原子力発電所南15キロの所に、福島第二原子力発電所という広大な敷地がありますので、まずはそこに持ち込んで保管をするというのが私は一番いい方法だろうと思います
今 西: なるほど。今、小出さんですね、やっぱりそういう放射性物質を帯びた、いわゆる汚染土なんかは1ヶ所に留めておいた方がいいということでしたよね?
小 出: はい。私はずっと京都大学原子炉実験所という所で働いていて、原子炉実験所の中でも放射性廃物の管理ということを責任を持って仕事をしてきた人間なのですが、放射性物質というのは、とにかく1ヶ所に集めて厳重に管理をするというのが一番いい方法だと私は思います。
今 西: はい。そうですよねえ。これ、どうなんでしょうか? 政府の話なんかを聞きますとですね、30年経てば放射線量がかなり落ちているのでとかですね。こう都合のええような話をよくしてるわけなんですけども、30年でそんなに落ちるもんでしょうか?
小 出:  落ちません。すでに事故から5年経ってしまってるわけで、短い寿命の放射性物質はすでにもうなくなってしまっていまして、今残っているのは、セシウム137が中心になっています。そのセシウム137という放射性物質は、30年経ってやっと半分に減ってくれるという寿命の長い放射性物質ですので、これから30年後になってもやっと半分になってくれるという、せいぜいその程度にしか減らないのです
    今現在も猛烈な放射線を出しているわけですし、30年経ってもその半分に減るというだけに過ぎないわけで、ほとんどもう移動させることすらが難しいだろうと思います
今 西: はい。それでですね、いわゆるこういう放射性物質を帯びた残土なんかを地下深く埋める、いわゆる地層処分という方法が今、政府の中でも検討されておるようです。これはですね、原発の使用済み燃料なんかもそういうかたちで処分していこうというようなことがよく言われますけども、その地層処分について、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか?
小 出: はい。日本の国というのは、これまで生み出してしまった核のゴミというのが、どうしていいかわからないまま、とにかくもう埋めるしかないということで進めてきたわけです。ただし埋めたとしても、その場所にじっとしておいてほしい時間の長さというのが10万年、100万年という長さなのです。
   そんなことは現在の科学で到底保障できませんので、私は埋め捨てにすること自体に反対だと言ってきました。でも、日本の国はもうこれ以外に方策がないのだということで、ひたすらその道を突っ走ってきて、とにかく埋め捨てにさせてくれる場所さえ見つけてしまえば、あとはもうどうなれ山となれという、そういうやり方でやってきたわけです
    しかしさすがに10万年、100万年も管理をしなければいけないようなゴミを引き受けてくれるような自治体は、日本の国内では、未だにひとつも見つかっていないのです。日本の国は少しずつやり方を変えてきまして、これからは強権的にどこかの地に押し付けるというようなことになるのだろうと思います
    そしてこういうことを言うのは、福島の方には大変申し訳ないことですけれども、もし福島の人達が、福島第一原子力発電所のゴミの中間貯蔵施設というものを受け入れてしまうならば、おそらくそこが日本で生み出した核のゴミの最終処分場にされてしまうだろうと、私は危惧しています。
今 西: はい。本当に悩ましい問題なのですけども、何とか1日も早くいい解決策が見つかればなあと思うんですが、それも現実的にはなかなか難しいということで、そうすると原発やめてしまうというのが一番の近道ということですよね?
小 出: もちろんです。自分が生み出すゴミの始末の仕方も知らないまま今日まで進めてきてしまったわけですけれども、そんなことは始めからやってはいけなかったんだと気が付かなければいけないと思います。
今 西: はい、わかりました。小出さん、ありがとうございました。
小 出: はい、ありがとうございました。