経産省は、原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場として、沿岸20キロの海底の下や島の地下も候補地として検討する方針を決めました。
これまでは陸地の地下に建設する方針でしたが、住民の反対が強く処分地の選定が難航しているためで、まさに窮余の一策です。
かつて原発で使った核燃料から出る高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋める国の最終処分計画に対して、日本学術会議は2年がかりで調査研究した結果、2012年に、地震や火山活動が活発な日本列島で万年単位で安定した地層を見つけるのは難しいとする報告書をまとめました※。
海底であれば確かに地権者はいませんが、海岸線から20キロ以内の海底地下の安定性については、列島地下の安定性と同じことが言えるのではないでしょうか。
また海底であれば地下水の流れが緩やかだということですが、緩やかであったとしてもいずれは地下水流に乗って海中に放射性物質が移動する可能性は否定できません。現に福島第一原発の地下を流れる水流(阿武隈山系に降る雨水が水源)は日量1000トンといわれますが、その先は海底を伏流して海岸線から10キロほど離れた海底で海中に放出されているいうことです(現在は地下水を汲み上げているのでその分は減量)。
こうした決定は身内のメンバーで決めるのではなく、省庁から独立した学識経験者のきちんとした審査を経るべきでしょう。
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放射性廃棄物、海底下も処分場候補に…経産省
読売新聞 2016年01月25日
経済産業省は、原子力発電所の高レベル放射性廃棄物の最終処分場として、沿岸の海底下や島の地下も候補地として検討する方針を決めた。
今月26日に専門家による研究会を設置して、技術的な可能性の議論を始める。2016年中にも、日本全国を適性に応じて3段階に色分けした「科学的有望地」を提示する。
これまでは、処分場を陸地の地下に建設する予定だったが、住民らの反対が強く、処分地選定は難航している。海底下は地権者との交渉が不要で、地下水の流れも緩やかといった利点がある。
経産省の作業部会が昨年12月にまとめた中間整理では、港湾から20キロ・メートル以内の沿岸部を「適性の高い地域」に分類。一方で、火山の周囲15キロ・メートル以内や活断層周辺、地盤が弱い場所などは「適性の低い地域」と位置づけた。研究会はこれをもとに、沿岸海底下と島での最終処分について、最新の研究成果や課題を整理する。