2日の産経新聞が「原発はテロに勝てるか? 航空機が撃墜したら? テロリストが侵入したら? 検証してみると…」と題した記事を載せました。
社を挙げて原発再稼働を推進している産経新聞の記事ですから、「テロには勝てない」という結果になるはずはありませんが、読んでみるとテロへの対策と原発の対テロ強靭性に関してはほとんど語られていません。
末尾には確かに「テロリストが侵入したら・・・」という項目はありますが、それも「このように対策済みである」という内容ではなくて、こんなことでいいのだろうかというような内容が記されているだけです。
「航空機が撃墜したら?」については、(なぜ「撃墜」なのかは不明ですが、)新規制基準では原子炉などの耐空爆性は、航空機が墜落した際に原子炉などを直撃する可能性が「年1000万分の1回」を超えなければ、「設計上考慮する必要はない」となっているとし、どのような計算をしたのかは不明ですがそれを下回っているとしています。
かつて東大のO教授は原子炉格納容器が壊れる確率は1億年に1回だと述べましたが、福島原発ではそれが40年足らずで3基破損しました。今度は「年1000万分の1回」に変わったようです。 ^^)
しかし国民が心配しているのは、事故か何かで航空機が墜落したときにそれが原子炉建屋に激突する頻度ではなくて、いわゆるテロ行為=ミサイルによる原子炉攻撃に対して持つのかというものです。しかしそれに対する記述は全く抜けています(対策がないということです)。
欧州などでは、ミサイル攻撃を想定して現行の原子炉格納容器を2重構造にすることになっています。
先進国がそういう結論を出しているのに、日本だけはそうしないで済むという理屈はない筈です。
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原発はテロに勝てるか? 航空機が撃墜したら? テロリストが侵入したら?
検証してみると…
産経新聞 2016年1月2日
2001年に航空機を使ってニューヨークの高層ビルに衝突させた「9・11」に始まり、先月パリで発生した同時多発テロでは、武装したテロリストにより約130人が殺害されるなど、「テロの時代」とも称される今世紀。東京電力福島第1原発事故を教訓に策定された“世界最高水準”とされる新規制基準をクリアした日本の原発は、テロに勝つことができるのだろうか-。再稼働を目指す原発のテロ対策を検証してみた。(原子力取材班)
巨大ヘリが原子炉に落ちたら…
「史上最悪の原発テロ発生。巨大ヘリ墜落まで、あと8時間!」「人質は日本」-。
平成27年秋、公開された映画「天空の蜂」の告知ポスター。物々しいキャッチコピーと、激しく炎上するヘリの写真は海外のパニック映画さながらの迫力だった。物語は、東野圭吾さんが福井県の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」をモデルに構想し、20年ほど前に刊行した同名小説が原作だ。
テロリストが防衛省の巨大ヘリを乗っ取り、原発の真上でホバリングさせて、政府に国内の全原発停止を要求するという現実離れした設定だが、実在する原子炉をモデルにしただけあって、原発の仕組みや構造が妙にリアルに描かれており、「実際、原発に飛行機が落ちたらどうなるんだろう…」と想像をかき立てられた人も多いかもしれない。
映画や小説の結末がどうなるかはさておき、そもそも国は原発に航空機が墜落することを想定しているのだろうか?
徹底対策を求めた原発の新規制基準
原子力規制委員会の前身である原子力安全・保安院は、9・11のテロの翌年の平成14年、「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率に関する評価基準」を策定している。
ここでは、航空機の落下確率を過去の事故の傾向や飛行場との位置関係から原発ごとに算出し、米国やフランスなど諸外国の基準を参考として、原子炉などに直撃する可能性が「年1000万分の1回」を超えなければ、「設計上考慮する必要はない」としている。
しかし、福島第1原発事故後に作成された新規制基準は、原発の敷地内に航空機が落下し、爆発的な火災が発生した場合の原子炉への影響についても評価するよう求めた。
27年8月に再稼働した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)では、原子炉などの重要施設に航空機が落下する確率が年1000万分の1を超えないことを確認した上で、敷地内に航空機が落下し、火災が起きた場合の影響を評価した。
検討の対象としたのは、大型旅客機の「B747-400」をはじめ、自衛隊機や米軍機でも燃料積載量が最大の「KC-767」「F-15」など。それぞれ燃料満タンの状態で敷地内に墜落、火災が発生したと場合でも、原子炉建屋の外壁コンクリートが許容温度(200度)を超えないことを燃焼モデルを使った計算で確認した。
さらに新基準では、中央制御室などの重要施設がテロで破壊され、原発が「制御不能」となった場合についても言及している。
原発から100メートル程度離れた高台や地下などに原子炉をコントロールする緊急時制御室を備えた「特定重大事故等対処施設」を設置することを電力会社に求めた。現状では原発そのものの審査に時間がかかっているため、設置までに猶予が設けられているが、川内原発では今後5年以内に設置される予定だ。
内部にテロリストが潜入したら…
テロの脅威は、航空機落下だけではない。原発に出入りする作業員や点検業者に紛れて、テロを誘発する「内部脅威者」が忍び込む可能性もある。
実際、過去には19年7月に北海道電力泊原発3号機で連続不審火が発生したり、25年5月に関西電力の社員が変圧器を故意に操作して停電を起こすなど、結果として重大事故には至らなかったものの、「ヒヤリ」とするような出来事もあった。
内部脅威者については、施錠の多重化や監視カメラの設置などハードだけでなく、ソフト面の対策も必要になる。国際原子力機関(IAEA)が2011年、原発作業員の身元確認に国が関与する「個人の信頼性確認制度」の実施を勧告しており、海外の主要な原発保有国ではすでに、作業員の犯歴や薬物依存の有無などを確認する制度が導入されている。
一方日本では、「個人情報の保護」が壁となって導入が大幅に遅れていたが、規制委が27年10月、原発などの防護区域に常時立ち入りする作業員を対象に、身元確認を行うことを決めた。
電力会社が作業員の氏名や住所、職歴や海外渡航歴などを本人に自己申告させた上で、証明書類や適性検査などで客観的に信頼性を確認することにしており、具体的な制度設計を進めている。
ただ、今回は他省庁との連携が難しく、海外渡航歴や犯歴の照会などの「国の関与」は盛り込まれなかった。実効性には疑問の声も上がっており、規制委は制度の運用面で電力会社との連携を強化していく予定だが、多様化、顕在化するテロへの対策は一刻を争う。