2016年1月17日日曜日

17- 原発を問う・・・東海村の現実

 茨城県東海村には東海第二原発のほかに日本原子力研究開発機構の研究施設など、多くの原子力関連施設が密集していて、有権者数約万人のうち、分のが原子力関係の事業所などで働いています。そういう中では「原発について発言しくい」のが現実です。
 
 村の主婦たちが作ったグループが「村の避難計画が出来上がるまで再稼働させないように」とする請願を2013年5月に村議会に出しましたが、本会議上程前の審議を担当した委員会は2年以上も採決をせずに、2015年11月審議未了で、村会議に出さないままに申請自体がなかったものとされました。
 
 東海村では、この19日に福島原発事故後2回目となる村会議員選が告示されます。
 前回2012年の村議選は原発推進を訴える候補者はほとんどいませんでした。今回も原発を避けて通る候補者がいる一方事故から年近くがたちチラシに推進を明記するなど、推進を打ち出す陣営も出ているということです
 
 東京新聞が「<原発を問う>上・下」で、東海村のそうした状況を報じました。
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<原発を問う>(上)
再稼働議論を避ける村議 「推進、反対両派から票」【茨城】
東京新聞 2016年1月15日
 「審議未了で、やむなし」。昨年十一月十一日、東海村議会の原子力問題調査特別委員会。日本原子力発電(原電)東海第二原発の再稼働に関する請願審議で、委員からは採決に反対する意見が相次いだ。
 村の主婦らでつくる市民グループ「リリウムの会」が、村の避難計画が出来上がるまで再稼働させないよう求め、二〇一三年五月に請願した。特別委は断続的に審議を続けたが、半年以上も棚上げにしたこともあった。村議選が目前に迫り、任期中に議会の判断が示されるとみられていた。
 十七回目の審議で、原発推進の会派は「村の避難計画ができておらず、中身のない状態で審議はできない」と採決を拒否。反原発側の会派は「『避難計画ができていないから分からない』と言うのではなく、請願者の思いをくむべきだ」と採決を主張した。
 委員長を除く委員十八人中、採決を求めた六人に対し、十二人が反対。八人が賛否の理由を述べず、「特別委で何を議論したか、私には不明だ」との発言も飛び出した。
 採決の見送りが決まると、傍聴席から驚きと落胆の声が上がった。請願審議は任期をまたげず、村民が議会に問うた課題は、可否を判断されず「なかったこと」のように葬り去られた。
 村には東海第二原発だけでなく、日本原子力研究開発機構の研究施設など、多くの原子力関連施設が密集している。有権者数約三万人のうち、三分の一が原子力関係の事業所などで働いているとされる。
 村の元幹部は「身近に関係者がいるから、原発について発言しにくい」と言う。ベテラン村議は「近所や知人には推進派も反対派もいる。どちらからも票をもらっている」と打ち明ける。
 東海第二原発は、法律上の原発の寿命とされる運転開始四十年を、一八年に迎える。今回の選挙で選ばれる村議は、任期中に大きな判断を迫られる。
 自らの考えを表明せず、判断を避けた議会に対し、原発推進、見直しの両派から批判が上がる。
 請願を提出した村内の主婦(45)は「採決してくれると思っていた。請願の趣旨を取り違え、論点がずれている」と怒りをあらわにした。
 推進派の商工業者(62)は「議会は議論をする場。請願は採決すべきだった」と苦言を呈しながら、冷ややかに言った。「自分の選挙への影響を恐れたのかもしれないな」
 東海村議選が十九日告示され、二十四日に投開票が行われる。原発の再稼働に賛成、反対する住民が混在する村で、選挙戦直前の動きを追った。 (山下葉月、宮本隆康)
 
 
<原発を問う>(下)
事故後5年、攻勢の推進派 引退3人 反対派は危機感【茨城】
 東京新聞 2016年1月16日
 昨秋、東海村の日本原子力研究開発機構(原子力機構)の労働組合に、東海第二原発を保有する日本原子力発電(原電)労組から連絡が入った。「立候補者が決まりました」。村議選で初めて、自前の候補者を擁立する報告だった。
 原電労組はこれまで村議選では、原子力機構職員の候補者を支援し、裏方に徹してきた。選挙担当の幹部は候補擁立について、東京電力福島第一原発事故後、風当たりが強まっていることを一因に挙げる。「自分たちで組織を守らないと。原電で働く人たちの声を届けられる場が議会だ」
 原子力機構の労組関係者も「以前から原電側に擁立を求めていた。原発事故で原子力業界はいろいろ言われるようになり、一人でも賛成派を増やしたい」と出馬を歓迎する。
 前回、二〇一二年の村議選は原発事故から十カ月後。原発推進を訴える候補者は、ほとんどいなかった。
 しかし前回、原発に触れなかったある現職は、今回はチラシに推進を明記した。「原発の必要性は国が決めること」と今回も原発を避けて通る候補者がいる一方、事故から五年近くがたち、推進を打ち出す陣営も出ている
 推進派の積極的な動きに、見直し派陣営は危機感を募らせる。今回、引退する村議三人は、いずれも見直し派。出馬の動きを見せる新人五人のうち、見直し派二人に対し推進派は三人だ。見直し派が議席を減らすとみられている。
 見直し派のある現職は、「原電の候補擁立は再稼働に向けて布石を打っているように感じる。一気に見直し派三人が辞めることもあり、危機感から前回より強いスタンスで臨む」。前回は原発について「みんなの意見を聞きたい」としていたが、今回は「反対せざるを得ない」と訴える。
 脱原発を主張する新人の支持者らは今月九日、東海第二原発を原則四十年を超えて運転しないよう求め、署名活動に取り組む団体を設立した。再稼働反対を呼び掛けながら、村議選との相乗効果を狙う。
 村内の推進派と見直し派について、ベテラン村議は「原発事故の直後は一時的に反原発の勢力が強くなったが、喉元を過ぎて時間がたち、元に戻った」と説明する。
 新議員の任期中の二〇一八年には、東海第二原発が営業運転の開始から四十年を迎える。村の岐路とも言える今回の村議選。原発事故から五年近くたっても、有効な避難計画の策定など、課題は残る。村民からは「福島の事故の教訓が意識の中から消えてしまっていいのか」との声も上がっている。 (山下葉月、宮本隆康)