高浜原発3号機の再稼働を29日に控えて、福井新聞が高浜原発再稼働に対する差し止め訴訟の状況についてまとめました。
昨年4月、福井地裁の樋口裁判長によって3、4号機の運転差し止め仮処分決定が出されましたが、その異議審では林裁判長によって仮処分が取り消されました。4月の決定後樋口裁判長は家裁に転出させられ、代わりに最高裁事務総局のメガネに適った林氏が着任しました。その時点でこの決定の取り消しは決まったと言えます。
福島原発事故以前の段階で、20数件の運転差し止めの訴訟が出されましが、裁判所は一貫して国・電力側に軍配を上げてきました(地裁で差し止め判決が出た1例はありましたが上級審で覆りました)。
原発事故後の2012年1月に行われた全国の裁判官研修会では、そうした国追随の姿勢を反省する意見が相次いだということでしたが、僅か3年余りで司法は再び従来の姿勢に戻ってしまいました。
高浜原発の再稼働差し止めについては、現在福井の他に、大津、京都、大阪地裁でそれぞれ係争中です。
弁護団は住民の主張を認める裁判官に出会うまで闘いを続けると述べています。
弁護団は住民の主張を認める裁判官に出会うまで闘いを続けると述べています。
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高浜原発再稼働、続く法廷闘争 住民側「主張を認める裁判官に出会うまで」
福井新聞 2016年1月28日
「司法が再稼働を止める」と書かれた垂れ幕が掲げられると、福井地裁前に集まった約300人は「歴史的瞬間だ」と大いに沸いた。昨年4月14日、福井県住民らが申し立てた関西電力高浜原発3、4号機の再稼働差し止め仮処分で同地裁は再稼働を認めない決定を出した。
約8カ月後の12月24日。今度は、同地裁前は静まり返った。関電が申し立てた異議審で差し止め決定が取り消された。
仮処分は、通常の訴訟は時間がかかることから、判決が出るまで当事者の権利を守る目的で行う暫定的な手続き。4月の地裁決定で、住民側弁護団は「大きな武器を手に入れた」と力を込めた。決定の効力は即時発揮し、不服申し立て中も継続する。原発を止める有効な手段として、各地の原発に対して請求していく構えを見せた。
原発訴訟はこれまで、国の手続きが適切かどうかが司法判断の中心で、住民側が敗訴してきた歴史があった。変化の兆しが現れたのは福島第1原発事故後の2012年1月。最高裁が全国の裁判官を集めて開いた研修会で、原発の安全性を本格的に審査していくべきだとの意見が相次いだ。従来の審理の在り方は行政に追随しているだけ、という反省といえた。
ただ、福井地裁が正反対の判断をしたように、司法の判断はまだ分かれている。4月の決定を出した樋口英明裁判長(現名古屋家裁)は新規制基準を「合理性に欠く」と断じ、独自の基準を示して「ゼロリスク」を求めた。
この決定を覆した林潤裁判長は、危険性が社会通念上、無視できる程度にまで管理されているかを重視し、新基準に「不合理はない」と結論付けた。
林裁判長は「絶対的安全性を想定することはできない」とも指摘し、いわゆる安全神話に陥らない姿勢を厳しく求めた。福島事故を機に、司法が原発の安全性に向ける目は確実に厳しさを増している。それでも、判断基準をどこに置くのかは、裁判官によって異なっているのが現状だ。
脱原発弁護団全国連絡会によると、現在係争中の原発訴訟、仮処分は少なくとも30件ある。関電に対する訴訟は名古屋高裁金沢支部での大飯原発3、4号機運転差し止め訴訟控訴審を含め五つある。
高浜2基については、大津、京都、大阪地裁でそれぞれ係争中。中でも注目されているのが、滋賀県の住民らが運転差し止めを大津地裁に求めた仮処分だ。
審尋はすでに終結し、年度内にも決定が出る見込み。同地裁が14年11月に出した仮処分決定では住民側の請求を却下したが、基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定など一部の不合理さを指摘。“住民側の実質勝訴”の内容ともいわれている。
決定が出るころには3号機は再稼働している。4号機も動いている可能性がある。仮に差し止めを命じた場合、実際に動いている原発を即時止めることになる。
福井地裁では覆されたが住民側は闘う姿勢を崩していない。弁護団の河合弘之共同代表は会見で「われわれの主張を認める裁判官に出会うまで続ける」と語気を強めた。今月16日には本県の反対派住民が新たな民事訴訟を起こすことを表明。原発をめぐる法廷闘争は続く。