しかし原発テロが現実の問題となっていることはもう疑いの余地はありません。
安倍首相は、周辺諸国への資金提供や有志国連合参加で、イスラム国に対して実質的な“宣戦布告”を行っているので、いつ日本の原発がテロ攻撃を受けたとしても不思議ではありません。
それでは日本の原発はテロに対して万全な対策を取っているのでしょうか。殆ど何の対策も取っていないというのが実情です。
原発テロの危険性を説く小泉純一郎氏は、一貫して「日本の原発は世界で一番テロに弱い」、「日本のテロ対策は脆弱だ」と警告を発しています。
小泉氏の全国行脚に密着した日刊SPA!記者が、小泉氏が主張するところを「日本は原発テロで壊滅する」と題した記事にまとめました。
安倍政権はこの警鐘に対してきちんと答えることが出来るのでしょうか。
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小泉純一郎「日本は原発テロで壊滅する」
日刊SPA! 2016年4月22日
ベルギーのテロで、原発が標的の一つだったとことが明らかになった。その危険性を訴え続けきた政治家がいる。「原発ゼロ」を訴える小泉純一郎元首相の全国行脚に密着!
◆日本の原発は世界一テロに弱い
ベルギーのテロ事件で、テロリストが当初、原発を狙っていたことが判明した。自爆死した2人の容疑者が同国北部の原子力施設に勤める技術者の動向をひそかに撮影。このことを治安当局が昨年末に察知して警備を強化、原発に140人の兵士を配置していた。そのためテロの対象を原発から空港に切り替えたとみられているのだ。
イスラム国が原発をテロ標的にしていることが明らかになった今、いつ日本で原発テロが起きても不思議ではない。すでに安倍首相は周辺諸国への資金提供や有志国連合参加でイスラム国に対して実質的な“宣戦布告”を行い、日本がイスラムの敵としてテロの対象になってしまっているからだ。
そんななか、「原発即時ゼロ」を訴えて全国行脚を続けている小泉純一郎元首相は、原発再稼働に強く反対する一方、「日本の原発テロ対策は不十分」「世界でもっとも危ない」と警告も発していた。
小泉氏は昨年3月、福島県喜多方市での講演でこう訴えた。
「世界の人はみんな言っていますよ。『日本の原発は世界で一番テロに弱い』と。テロで、あのアメリカの世界貿易センターみたいなことをやられたら、もう原発はおしまい。福島どころでは済まない。(安倍首相が言うように)日本の安全基準が世界で一番厳しいのだったら、『どこが米国やフランスや他の国の原発に比べて、一番厳しくて安全なのか』と国民に説明があって然るべきなのに何にもない。その説明をしないまま、政府はまた再稼働させようとしている。呆れています」
3か月後の鹿児島市での講演会でも、小泉氏は警鐘を鳴らした。記者が「安倍政権が『国民の生命と財産を守る』のであれば、原発テロ対策がまず必要なのではないか」と聞くと、小泉氏はこう答えた。
「このテロ対策はみんな口に出さないけれども、わかっていると思います。原発はテロに一番弱い。しかし、(原発テロ対策を)やり始めたら、莫大なカネがかかることもわかっている。とても、こんな(原発テロ)対策は一電力会社でできることではない。原発を狙われたら大変ですよ」
「日本のテロ対策は脆弱」という小泉氏の警告は的確だ。原発や安全保障の専門家も賛同している。原子力情報コンサルタントの佐藤暁氏はこう話す。
「ベルギーでは140人の兵士を原発に配置したと報じられましたが、米国では全原発に150人の兵士がいて訓練をしています。テロ集団から一つの原発を守るには、『140~250人の兵士が必要』というのが世界標準ですが、それでも危ういというのに、日本の警備体制はガードマンと警察官のみ。遥かに遅れています。今後、原発のメルトダウン事故は、自然災害が原因になる可能性より、原発テロで起きる可能性が高いでしょう」
小泉氏は、今年3月の福島講演でこう訴えた。
「福島原発の事故でも、もう一回爆発していたら、『約5000万人の人々が避難しなくてはいけない最悪の事態が来るかもしれない』『東北地方に加えて東京も含まれる250km圏内の人が避難しないといけない』ということを想定しました。幸運にもそうならなかったので、今の程度で済んでいる。
もしそうなったら、5000万人避難ですよ。1億2000万人のうち、5000万人がどこに避難するのですか。日本全体が壊滅の危機に瀕するぐらいの事故の可能性を持ったのが原発ですよ」
取材・文/横田 一