原子力規制委がSPEEDIを避難計画に使わないと突然言い出してから、国がそれに同意し、その後使用するかどうかは各自治体の判断に任せるという言い分に変わりました。しかし実際には2016年度の政府予算に運用費が盛り込まれなかったため、福井県などの各自治体は配備されていた端末を3月までに撤去したということで、すでにSPEEDIを活用する体制ではなくなっています。
それに対して新潟県は、実測値に加えSPEEDIなど予測的な手法も活用するとしていて、規制委の田中俊一委員長がどういう権限でSPEEDIを避難計画に用いないとしたのか不明だとも述べています。
規制委が、SPEEDIの予測に必要な放射性物質の放出タイミングを事前に把握することは不可能だと述べたことが、すべての発端になっているのですが、遅くても放出の半日前には予測がつく訳なので、それから(風向風速データ他各種気象条件を加味して)計算したとしても、各地の汚染レベルを実測して20μSvとか500μSvになるのを漫然と待ってから避難し始めるなどというやり方よりも、桁外れに被曝の少ない避難ができることは論を俟ちません。
このSPEEDIの活用については、不可解な発言に終始する規制委と政府に任せるのではなくて、SPEEDIのプログラムと原発過酷事故の進み方についての知識を持った識者に判断してもらうべきでしょう。
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放射能影響予測システム活用迷走 福井県、運用費つかず端末撤去
福井新聞 2016年4月9日
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を用いた原発事故時の放射性物質の拡散予測を巡り、政府が自治体の裁量で活用することを認める一方、原子力規制委員会は信頼性を否定したことで、福井県をはじめ全国の関係自治体から「国の中で方針を統一すべきだ」と困惑の声が上がっている。福井県は避難判断の参考情報として活用するよう国に再三要請。しかし、SPEEDIを管理する規制委の方針を受け2016年度政府予算に運用費が盛り込まれず、福井県など各自治体は配備されていた端末を3月までに撤去した。
東京電力福島第1原発事故後、国は事故時にSPEEDIの予測値ではなく、原発周辺で測定される放射線量の実測値に基づき避難判断する手法に転換。だが全国知事会の要望を受け、3月11日の原子力関係閣僚会議で、自治体の責任でSPEEDIや事業者の拡散予測システムの情報を避難に活用することを容認する方針を決めた。
これに対し規制委は同16日、SPEEDIの予測に必要な放射性物質の放出タイミングを事前に把握することは不可能と指摘。避難に活用するのは弊害が多いと結論付ける文書をまとめた。
福井県の西川一誠知事は同25日の記者会見で、福井県のSPEEDIの考え方について「(避難判断の)参考情報として補助的に活用する」とあらためて強調。政府と規制委の見解が異なっている点については「政府内で競っていても始まらない」と苦言を呈した。
政府方針は自治体の裁量で活用を認めたが、県内原発から30キロ圏内に入る隣府県の対応は福井県と異なる。京都府や岐阜県は地域防災計画の見直しで、SPEEDIの規定を削除。滋賀県も3月の計画改定の際に避難判断で活用しないことを決めたが、放射能を測定するモニタリングの優先地点の選定には拡散予測を使うようにする方針だ。
対応が自治体によってまちまちで、県境をまたぐ広域避難に影響する恐れもある。
東電柏崎刈羽原発を抱える新潟県は「実測値のみに基づく避難判断は住民被ばくが前提の計画になると考えられ、抵抗感がある」(原子力安全対策課)とし、実測値に加えSPEEDIなど予測的な手法も活用する考えだ。
政府と規制委の見解の相違には各自治体から批判が相次ぐ。新潟県は「規制委の田中俊一委員長は『防災に責任は持たない』と言っているが、どういう権限でSPEEDIの見解を述べているのか不明」と疑問視。京都府も「各自治体が混乱しており、国の統一的な見解を示すべきだ」(原子力防災課)と訴える。
福井県は、丸川珠代原子力防災担当相が「使い方をこれから(各自治体と)相談したい」と発言したことを注視しており、政府の明確な方針や具体的な活用の仕方を確認していく考えだ。