2015年11月2日月曜日

02- 「もんじゅ」の曖昧な存続は許されない

 1日の神戸新聞が「もんじゅ」/曖昧な延命は許されない」とする社説を掲げました。
 高速増殖原型炉もんじゅの管理不備の問題をいつまでも解決できない日本原研開発機構に対して、原子力規制委もんじゅの運営を任せられないとし、廃炉につながる設置許可の取り消しになる可能性もある、28日に述べたことに関連したものです。
 
 もんじゅは民主党政権時代に一度廃止しようとしたのですが、反対意見が強くて果たせずに、その後は文科省の諮問を受けた委員会が高速増殖炉の研究は必要とする継続案を答申しました。
 昨年の春には安倍内閣はエネルギー基本計画にもんじゅ存続を明記しましたが、さすがに高速増殖炉の完成は謳えないので、使用済み核燃料を減らす「核のごみ専用の焼却炉」の役割を前面に押し出しました。
 
 「核のごみの焼却(減容)」はいわゆる核燃料サイクルの一環をなすものですが、経済的なメリットはなく研究完了の目処もまた不明です。
 これまでにもんじゅに掛かった費用は1兆1千億円超で、装置が動かない今も維持費等が年間295億円(26年)掛かっています。
 
 しかしもんじゅを運用する開発機構は総員3000人弱で、年間予算は1830億円(26年度 内94%が政府支出金=税金)に及ぶので、役人にとっては絶好の天下り先です。そのためどんなに無駄であろうとも、もんじゅを廃止するという選択はありません。先進各国が超危険な高速増殖炉から手を引いた後も、数十年間世界でただ一国「研究」を継続してきた背景にはそれがあります。

 そしてこれからも一般の人には理解しがたい「廃棄核の減容化」を課題に謳うことで、もんじゅの運用を継続することになっています。神戸新聞が危惧するとおり、もんじゅはこれまで通りの曖昧なあり方のまま 存続する見通しです。
   (関係記事)
    2014年3月23日 国際的に「核燃サイクルの推進」を明言する非常識
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「もんじゅ」/曖昧な延命は許されない
神戸新聞 2015年11月01日
「夢の原子炉」の目標はなくなり、国策で延命させても健全な組織として立ち直らせるのは難しい。
 高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)と、もんじゅを運用する日本原子力研究開発機構が抱える問題だ。
 原子力規制委員会は、トラブル続きのもんじゅと機構への対応について議論を始めた。廃炉も視野に入れた毅然(きぜん)とした判断を求めたい
 もんじゅは、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を用いて、それ以上の燃料を生み出すとされる高速増殖炉の原型炉。2011年に原発事故が起きる前から国の核燃料サイクル政策の柱と位置づけられてきた。50年代の実用化を目指したが、1995年にナトリウム漏れ事故を起こし、計画は頓挫した。
 事故後、組織改編と合併を経て今の組織になり、2010年に運転再開を試みた。だが、設計ミスによる事故ですぐにまた停止した。
 民主党政権はもんじゅ廃止を打ち出そうとしたが、反対意見が根強く、撤回せざるを得なかった。
 停止期間中も、定期の保安検査を受けてきた。この間、機構は目標を見失い、活力や緊張感をなくしたとしか思えない出来事が続く。
 12年11月には約1万点の点検漏れが見つかった。一連の問題を「手続き上のミス」で片付けた機構のトップが「安全文化の劣化」と厳しい批判を浴び辞任に追い込まれた。13年5月、規制委は機構に対し、事実上の運転禁止命令を出した。
 点検漏れや記録の改ざんはその後も改まっていない。原子力規制庁は「組織が崩壊している」と批判した。よほどのことに違いない。
 安倍政権は昨年春に決めたエネルギー基本計画であらためて核燃サイクル維持ともんじゅ存続を決めた。しかし、扱いは曖昧だ。高速増殖炉の道は事実上断たれているが、核燃サイクルと一体のため「やめる」と言えない。国際的に厳しく規制される余剰プルトニウム保有問題でたちまち国策が行き詰まるからだ。
 所管する文部科学省は、新たに核のごみを減らす国際的な研究拠点を掲げる。延命のための口実のようにもみえ、ずさんな管理体制が変わらない限り危険極まりない。
 位置づけを曖昧にしたまま毎年200億円を支出することが許されるのか。安全と規律を守る観点から引導を渡す判断があっていい。