2015年11月7日土曜日

07- もんじゅはやはり廃炉にするしかない

 福井県原子力安全専門委員会5日、もんじゅの件について開いた会合日本原研開発機構事業本部長代理らが出席し、「運営主体の変更勧告の方針について大変重く受け止めている」ものの、「機構がもんじゅの開発を責任を持って担っていく考えに変わりはない」と強調したということです
 委員からは「現場の職員の意識改革がなく、組織改革だけでは安全文化は構築されない」「文科省職員現地駐在何が変わったのか」などと厳しい意見が相次ぎ、委員長は「国が高速増殖炉をどう位置付けるかが一番重要で、それに沿って動く形にならないとうまくいかない」とまとめたようですが、いま起きている問題は「増殖炉位置づけ」以前の問題であることは明らかです。
 
 開発機構は2日の規制委の聴取に対して、対応不備の原因究明を行ってから再発防止策を立てたいと述べたということですが、既に2度の機構改革も行っており、原因究明の段階などはとっくに過ぎていて、どうするのかの結論を出す段階に至っているのです。
 
 5,6日の各紙社説は殆どが「速やかに廃炉を決断すべき」、または「廃炉を含めて再処理政策は見直しを」という論調です。政府はいまこそ幕引きを図るべきでしょう。
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機構、もんじゅ運営の継続を強調 交代勧告問題を福井県専門委で議論
福井新聞 2015年11月6日
 福井県原子力安全専門委員会は5日、福井県庁で会合を開き、原子力規制委員会が高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の運営主体を日本原子力研究開発機構から変更するよう文部科学相に勧告する方針を決めたことに関して議論した。原子力機構の吉田信之敦賀事業本部長代理は、引き続き運営を担いたい考えを強調。中川英之委員長は「機構以外の組織は思い浮かばない」とし、規制委は国の核燃料サイクル政策の位置付けに沿い、もんじゅの改善を進めていくべきだとの考えを示した。
 県専門委で、もんじゅの保守管理の不備問題について議論するのは昨年1月以来
 
 原子力機構の吉田本部長代理は、運営主体の変更勧告の方針について「大変重く受け止めている」とした上で、「機構がもんじゅの開発を責任を持って担っていく考えに変わりはない」と強調した。原点に立ち返り、組織内の問題を徹底的に洗い出し、メーカーや電力会社など民間の知恵を結集した「オールジャパン体制」で保守管理の改善に取り組むと述べた。
 文科省の加藤孝男もんじゅ改革監は「文科省の方針は現時点で申し上げられないが、勧告の趣旨を踏まえてきちんと対応する」と述べるにとどめた。一方で、もんじゅの役割が昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画に明記されている点を挙げ「もんじゅがミッションを進めていくことは揺らいでいない」と強調した。
 
 委員からは「現場の職員の意識改革がなく、組織改革だけでは安全文化は構築されない」「自分たちでやるんだという意気込みがない」「文科省から技術系の職員らを現地に駐在させたが、何が変わったのか」などと厳しい意見が相次いだ。
 
 中川委員長は終了後、記者団に「機構が機器の保全に注力できる組織体制にならないといけない」と注文し、「国が高速増殖炉をどう位置付けるかが一番重要で、それに沿って規制委や原子力機構が動く形にならないとうまくいかない」と述べた。
 規制委は4日、文科相に対し、機構に代わるもんじゅの新たな運営主体を示すよう勧告する方針を決定した。運営主体を示せない場合、施設の在り方を抜本的に見直すよう求めることも決めた。
 
 
社説 もんじゅの勧告  速やかに廃炉の決断を 
京都新聞 2015年11月06日
 大量の点検漏れなどトラブルが相次ぐ高速増殖炉もんじゅ(福井県)をめぐり、原子力規制委員会は日本原子力研究開発機構による運営は不適正として運営主体を変更するよう、所管する文部科学相に初の勧告をすることを決めた。
 半年をめどに機構に代わる運営主体が示されない場合、もんじゅの廃炉を含め施設の在り方を抜本的に見直すよう求める方針という。
 
 もんじゅは1995年のナトリウム漏れ事故後、20年間ほとんど稼働しておらず、再発防止策や組織改編を経てもずさんな管理が後を絶たない。代わる受け皿探しは至難の業で、勧告はもんじゅ計画に引導を突き付けたと言えよう。
 政府は安全を確立できないもんじゅの廃炉を速やかに決断し、破綻が明らかな核燃料サイクル政策に見切りを付けるべきだ。
 もんじゅでは2012年に約1万件の機器の点検漏れが発覚、13年5月に規制委から事実上の運転禁止命令を受けた。その後も新たな点検漏れや管理ミスが続き、保安規定違反の認定は8回に上る。
 だが機構は今月2日、求められた再発防止策を示さず時間的猶予を求めた。規制委が「運転する基本的能力がない」と断じたのは当然で、停止中でも安全管理能力に欠けるとの指摘は重大だ。
 もんじゅは、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルの要だ。使った以上の燃料を得るという高速増殖炉は「夢の原子炉」とされたが、扱いが難しいナトリウムを冷却材に使う特殊さから機構しか手掛けてこなかった。既に2回の組織改編と電力各社、メーカーによる人材支援も行われており、新たな運営体制は見通せない。
 技術的な困難さから各国が撤退する中、政府は昨年決定したエネルギー基本計画で、廃棄物減量の研究拠点と言い換えてもんじゅ推進を位置づけた。これまで1兆円以上を投じ、停止中も維持費などに年間200億円かかっている。展望なき延命策では国民の理解を得られまい。
 政府が固執するのは、使用済み核燃料の最終処分策が進まぬ中、日本が持つプルトニウム47トン強(原爆数千発分)の核兵器転用への国際的な懸念をかわすためだ。だが一般の原発で使うプルサーマル計画も見通しは立っていない。政府は核燃料サイクルを言い訳にした原発推進を転換すべきだ。核のごみをこれ以上増やさず、政策と資金、技術を集めて最終処分を進めてこそ将来に責任ある対応だろう。
 
 
社説 もんじゅで勧告 運営者交代より廃炉だ
毎日新聞 2015年11月05日   
 多数の点検漏れなど不祥事が相次ぐ高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について、原子力規制委員会は、運営主体である日本原子力研究開発機構の「退場」を求める勧告を出すことを決めた。勧告は規制委設置法に基づき、原子力機構を監督する馳浩文部科学相に出される。
 文科相が半年以内に新たな運営主体を示せなければ、廃炉も含めてもんじゅのあり方を抜本的に見直すことを、あわせて求める方針だ。
 
 もんじゅは1995年のナトリウム漏れ事故以来、ほとんど稼働していない。この間、原子力機構や文科省は組織改革や安全管理体制の見直しに取り組んだが、不祥事は後を絶たなかった。このような事業者に、もんじゅの運転を託すことはできないとする規制委の判断は当然だ。
 政府は、使用済み核燃料を再処理し、抽出したプルトニウムを燃料として使う核燃料サイクルの推進を掲げる。高速増殖炉はその要の施設で、文科省は民間や海外との連携も視野にもんじゅ存続を図る考えだ。
 
 しかし、高速増殖炉は技術的にもコスト的にも課題がある
 もんじゅは、空気や水に触れると燃える液体ナトリウムを冷却材として使う。水で冷却する通常の原発に比べ、高度な技術が求められる。これまでに1兆円以上の国費が投入され、維持費などで年間約200億円かかっている。それでも実用化のめどは立っていない。いまや施設の老朽化が心配されている。
 
 運営主体の変更で、こうした根本的な問題が解決するとは思えない。政府には、もんじゅの廃炉に踏み切ることを改めて求めたい
 もんじゅを巡っては、2012年11月に約1万点に及ぶ機器の点検漏れが発覚し、規制委は13年5月、事実上の運転禁止命令を出した。その後も新たな点検漏れなどの不備が次々に発覚したことが、今回の勧告の直接のきっかけとなった。
 勧告はあくまでも原子力施設の安全上の問題に対するものだが、もんじゅのあり方の見直しは、核燃料サイクルの行方に直結する。
 
 もんじゅと並ぶ核燃料サイクルの要である再処理工場も、稼働の時期が見通せない。日本原燃が青森県六ケ所村に建設中だが、相次ぐトラブルや規制委の安全審査で完成時期の延期が続く。建設費用は当初の7600億円から3倍に膨れあがった。
 たとえ稼働したとしても、高速増殖炉が頓挫したままでは抽出したプルトニウムの行き場に困る。通常の原発でプルトニウムを燃やすプルサーマルも簡単には進まない。
 核燃料サイクルの行き詰まりは明らかであり、政府は今こそ幕引きに向けた検討を始めるべき