規制委は4日、もんじゅに関して現在の運営主体の日本原子力研究開発機構では、停止しているもんじゅの保全管理もできておらず、運転は任せられないとの判断を下しました。
文科省が半年以内に信頼できる運営主体を探すか、安全対策を抜本的に改善するかをしないと、もんじゅは廃炉するしかないのですが、文科省にそれを期待するのは無理と見られています。
もんじゅの技術は核燃料サイクルの中核的な存在といわれ、これまでもんじゅには1兆1千億円、核燃料サイクル全体には10兆円が投じられてきました。しかしどちらも満足に動く見込みはありません。
技術的確信のない曖昧な状態で継続するのは最も危険です。もしも対処手段のないナトリウム爆発事故が起きてしまえば、少なくとも西日本一帯はプルトニウムで汚染されて人が住めなくなります。
これまで1兆1千億円を、あるいは10兆円を投じたから止められないというのではなく、逆にそれだけかけても完成の目処も立たないのだからこの際はっきりと終止符を打つ、という決断をするべきです。
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もんじゅ廃炉へ現実味 核燃料サイクル計画破綻
東京新聞 2015年11月5日
高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉が現実味を帯びてきた。原子力規制委員会は点検漏れ問題で文部科学省に対し、信頼できる運営主体を探すか、安全対策を抜本的に改善するかを勧告する。どちらかを実現しないと、廃炉は避けられない。もんじゅは国が推進してきた核燃料サイクル計画の中核的な存在。なくなれば、十兆円をつぎ込んできた計画は名実ともに破綻する。 (小倉貞俊、榊原智康)
規制委は四日、現在の運営主体の日本原子力研究開発機構では、停止しているもんじゅの保全管理もできておらず、運転は任せられないとの判断を下した。
かつて「夢の原子炉」とうたわれたが、二十年以上も前に造られ、稼働期間はわずか二百五十日。冷却材に爆発的燃焼の危険性が高いナトリウムを使い、維持費もかさむ。機構は二十年前のナトリウム漏れ事故以降、甘い管理体制を改善する機会は何度もあったが一向に進まない。まだ待てというのか-。
規制委の委員五人は全員一致で、文科省への勧告という重い決断をした。
核燃サイクルは、一般的な原発系と高速炉系の二系統で、使用済み核燃料を再利用する計画。十兆円が投じられてきたが、どちらの循環も回るめどはない。原発で核燃料をMOX燃料として再利用するプルサーマルは、海外で製造した燃料を使って一部始まったが、使用済みMOXをどうするのかは白紙。もんじゅがなくなれば、高速炉系の「輪」は名実ともに消える。
もんじゅの新たな担い手を半年以内に見つける必要に迫られる文科省は「運営主体は幅広くいろいろなことを検討していきたい」(高谷浩樹研究開発戦略官)と話す。
考えられる担い手には、(1)文科省所管の別の研究開発法人(2)機構から独立したもんじゅ部門(3)民間の原子力事業者-などがあるが、どれも難しい。
原子炉の運転経験は絶対に必要な条件で、単なる機構内の看板の掛け替えでは規制委が納得しない。
文科省幹部は「日本原子力発電(原電)は、もんじゅの次につくる実証炉を受け持つ予定だった」と原電の名を挙げつつも、「不備だらけの現状で、もんじゅを受け取る経営判断をするだろうか」と話す。
来週にも勧告の具体的な内容が決まり、文科省に出される。これまでの経過からすると、文科省からは中途半端な回答しか出てこないこともあり得る。中途半端で認めれば、規制委の存在理由が問われる。
一方、文科省の回答を不十分とし、もんじゅの廃炉まで踏み込めば、昨年四月のエネルギー基本計画で核燃サイクルの維持ともんじゅ存続を打ち出した政府の方針と対立する。
四日の記者会見で、田中俊一委員長にあらためて覚悟を問うと、「(核燃サイクルを)どうするかは国の政策マター(問題)で、私たちがどうこういう話ではない。申し上げているのは、もんじゅの安全の問題への懸念だ」と述べた。
もんじゅ 廃炉しかない 機構 くり返し違反行為
税金投入1兆円、運転実績ゼロ
しんぶん赤旗 2015年11月5日
原子力規制委員会が4日の定例会合で、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運営主体として“不適格”と判断した日本原子力研究開発機構。2013年5月に1万件近い機器の点検漏れが発覚し、規制委から運転再開作業の停止を命じられて以降も、同機構の違反行為が繰り返され、「極めて異常な状態」(規制委)でした。運転を任せないとしたのは当然です。
しかも、規制委でも指摘されたように、こうした安全軽視の体質は、1995年のナトリウム漏れ・火災・爆発事故以来、「問題が根深く存在している」とされているものです。
「もんじゅ」は、原発の使用済み核燃料から再処理で取り出した、毒性の強いプルトニウムを燃料に使い、使用した以上の燃料を生み出すとして「夢の原子炉」という触れ込みで政府が開発を進めてきました。政府が推進する、使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを使うという「核燃料サイクル」の柱に位置づけられています。
一般の原発と違い、水や空気にふれると爆発的に反応する液体の金属ナトリウムで原子炉を冷却するため、特別に大きな危険があります。実際、1994年に初臨界に達しましたが、1995年に配管からナトリウムが漏れる火災・爆発事故が発生し、14年以上停止。2010年5月に運転を再開したものの、トラブルが続き、同8月には重さ3・3トンの核燃料交換装置が落下する事故が起き、再び運転できない状態になりました。運転開始から20年以上たちますが、事実上運転実績はありません。しかし、「もんじゅ」建設などにこれまで投じられた税金は1兆円規模に上り、現在も毎年200億円近く計上されています。
国はただちに廃炉を決断すべきです。 (「原発」取材班)