2015年11月23日月曜日

23- 浜岡原発の再稼働問題 (小出裕章ジャーナル)

 今回の小出裕章ジャーナルは、東海地震の予想震源域の真ん中に建っている浜岡原発の再稼動問題です。
 規制委は浜岡原発を再稼動させる方向で複数回の立ち入り調査を行い、安全設備に高い評価を下しているということです。活断層の真上の原発は再稼動が許されないのに、震源域の真上に建っていて同じく激烈な地震動が生じるに違いない浜岡原発でなぜ再稼動が許されるでしょうか。防潮板を備えることは勿論その対策にはなっていません。
 本当に不可解な話です。
 
 市民2000人が21日、再稼動反対の集会を開いています。
 
追記 太字強調は原文に従っています。また原文では水野氏と小出氏には「さん」がついていましたが、この紹介文では外しました。
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浜岡原発の再稼働問題 小出裕章ジャーナル
第150回小出裕章ジャーナル2015年11月21日
 世界の地震学者が揃って東海地震はいつ起きてももう不思議ではないんだと言ってる地震で、その予想震源域のど真ん中に浜岡原子力発電所があるという状態になっています
今西憲之: 今日は、スタジオに水野誠一さんをお招きしております。
水野: はい、どうも小出さん、お久しぶりです。
小出: はい、ご無沙汰しております。
水野: こちらこそ、よろしくお願いします。
小出: ありがとうございます。お忙しいでしょうに。
水野: いえ、とんでもないです。楽しみしてまいりました。
小出: よろしくお願いします。
水野: わかりました。
今西: 今日のゲストの水野さんは、福島第一原発の事故の前から静岡県の浜岡原発の廃止を訴えてこられました。今も再稼働を反対運動をなさっておられます。今日は小出さんに、いわゆる科学者の視点から浜岡原発の現状と未来というところについてお尋ねしたいと思うのですが。中部電力は今年6月に浜岡原発3号機の再稼働に向けて、新規制基準に基づく審査を規制委員会に申請をしました。浜岡原発は昨年2月の4号機に続いて2基目なんですけれども、中部電力ですね何がなんでも再稼働したいというようなメッセージかなあと思うんですが、いかがお感じになられましたでしょうか?
小出: あまりにも愚かだなと私は思います。つい先日も私、浜岡原発まで行ってきたのですけれども、防潮堤というか防波堤というか高さ22メートルに及ぶコンクリートの壁を築いて、津波から守ろうというようなことをやっていました。そんなことまでして守らなければいけない原発なんだろうかと私は思いましたし、中部電力という管内で電気が不足するというようなことは、もうこの5年近く一度もなかったわけですし、もういい加減に原子力から足を洗うということを考えるべきだと私は思います
今西: 水野さん。どうなんでしょう? 実際その静岡県において、やっぱり中部電力のその原発への執着度というのは、これやはりすごいものがあるんでしょうか?
水野: まあ中部電力っていうのは1ヶ所しか持ってないんですね、いわゆる原発を。浜岡原発しかないということなんで、何とかそれは守りたいというか継続したいという意志ははあると思うんです。ただ今、小出さんがおっしゃったようにですね、私も防潮壁と言うべき、つまり防潮堤ではないんですね。もう本当に薄い壁がただただ丈が高い22メートルあるという壁があるだけで、そんな物をつくって、絶対津波に耐えるはずがないというような物までつくってるわけです。しかも、これ3000億近い金を確か投下してるんじゃないかと思うんですが。
今西: そうですねえ。
水野: それつくるっていう話が出た時にですね、私、川勝知事にお会いして、「浜岡は何が何でも止めて欲しい」ということをお願いに上がったんですね。そしたら、防潮壁、堤と言うよりは壁と言った方がいいんですが、その話になりましてね。川勝知事も「あれはちょっと馬鹿げてる」と。つまりあんな物ではもたないし、両側に川があるんで、川から津波が上がってしまったら今度、中から引く時にですね、あの壁は倒れてしまうだろうというようなことをおっしゃってました。そんな物です。
今西: なるほど。そんな中で、浜岡原発再稼働しようということで今申請出してるわけなんですが、小出さん、浜岡原発と言うと当然、東海地震とか南海トラフ地震で、これもし現実に起これば大変なことになるんではないかということで、常に筆頭にあげられるんですけれども、なかなかそいういう反省がないのかなあと思うんですが、いかがお感じでしょうか?
小出: そうですね。今、水野さんが正しくご指摘下さったけれども、防潮堤と言うよりは、むしろ防潮壁と言うですね、ただただ薄っぺらい壁をつくっているわけです
    それをどうして中部電力がつくらざるを得なくなったかと言うと、福島第一原子力発電所の事故の後に、当時、菅さんという方が首相をしていたのですが、菅さんが浜岡に対して防潮壁をつくることを提案したのです。それを中部電力が受けてこれまでやってきたわけですけれど、私としては、浜岡原発は津波なんかの心配をするより前に、地震の心配をしなければいけないんだと思います
    皆さんもご存知だろうと思いますが、浜岡原子力発電所というのは静岡県の御前崎のごく近くにあるのですけれども、その部分はいわゆる東海地震という巨大な地震が繰り返し繰り返し約100年、150年の周期で襲ってきたというその場所なのです。そして世界の地震学者が揃って東海地震はいつ起きてももう不思議ではないんだと言ってる地震で、その予想震源域のど真ん中に浜岡原子力発電所があるという状態になっています
    その原子力発電所で何よりも心配すべきなのは、津波よりも前に地震ということなのであって、予想される東海地震のマグニチュードは、8~8.5、あるいは9になるかもしれないというような巨大な地震なのであって、本当であれば耐震ということをもっと本気で考えるべきことだと私は思います。
今西: 小出さん、もうひとつですね、万が一の時に心配になるのはいわゆる浜岡原発ですね、沸騰水型、いわゆる福島第一原発ですね、同じタイプの原発ですよね?その辺いかがでしょうか?
小出: 今、全ての原子力発電所が止まってるわけですが、それは、なぜ止まったかと言えば、もちろん福島第一原子力発電所が巨大な事故を起こしたからなのであって、沸騰水型という原子力発電所が事実として炉心が溶け落ちるというような事故になったわけです。
    ですから、まずは沸騰水型原子力発電所の炉心を溶かさないためには、どうしなければいけないかということをしっかりと調べなければいけないのですが、残念ながら5年近く経った現在も福島第一原子力発電所の事故現場に行くことすらができないのです。
    どうしてあのような酷い事故になったかという原因を確定することすらが、まだできていないわけで、それと同じ原子力発電所を動かしてしまうというようなことは、技術的に考えても本当におかしなことになっていると私は思います
今西: なるほど、なるほど。そういう中で、非常に交通の便も不便な所にあるわけで、万が一の場合、これまた周辺の住民の方、避難するっていうのは、これ大変なことですよねえ?
水野: 大変ですね。しかも、あそこは新幹線もそう遠くありませんしね。東名高速道路も。もうこれも全部おそらく破綻するような事故につながる可能性ってあると思いますね。そうした時には、ほんと東西の主要な交通路っていうのが断たれてしまうということもありますし、その周辺の道路も非常に混乱をきたすことは間違いないということが言えると思いますね。
今西: なるほど。それで小出さん。再稼働を認めるにあたって、お題目のように語られてる言葉があります。世界一厳しい安全基準を適合してるので、再稼働は大丈夫なんだということが語られるわけなんですけれども、浜岡原発の現状と、そこにはらむ危険性を照らし合わせて、その世界一厳しい安全基準というのが、小出さん、どのように評価されますでしょうか?
小出: もちろんそんなことあるはずがないのです。浜岡原子力発電所も含めて、日本で動いてきた原子力発電所はかなり古いタイプの原子力発電所でして、様々な安全装置というのがまだ付いていない。そんなことを考えてもいなかった段階に設計された原子炉なのです
    例えば、これからつくられようとしている原子力発電所では格納容器を二重構造にするであるとか、もし炉心が溶け落ちてしまった時には、それを受けとめるだけの地下の構造物をつくってあるだとか、そういうことが基準に入っているわけですけれども、もちろん浜岡の原子力発電所も、そんなものは全くないまま運転が再開されようとしてしまっているわけです。
今西: なるほど。どうでしょう?水野さん、静岡の方、世界一厳しい安全基準でやってるということで、その言葉で納得されるような感じでしょうか?
水野: いや、気付いている人達は全然安心してないですね。ただ一般の人達というのは未だに、例えば「県がそう言ってるから」とか「中部電力がそう言ってるから」って言って、信じ込んでしまう方もいらっしゃるんでね。やっぱり我々は気づきを少しでも広げていかないといけないなと思っていますけど。
今西: なるほど。やっぱり小出さん、まだまだ原発の安全神話っていうのは根強いんでしょうか。
小出: 残念ながらそのようですね。国が安全神話を流してきたし、今でも流しているわけですし、私から見ると大変残念なことですけれども、日本のマスコミがほとんど全て揃って、国の宣伝だけを流すというような状態になってしまっているわけですので、多くの人々が安全神話を信じてしまうということはあり得ることだと思います
今西: 分かりました。小出さん、ありがとうございました。
小出: こちらこそ、ありがとうございました。
 
 
 
浜岡再稼働に反対 市民グループ集会 静岡
静岡新聞 2015年11月22日
 中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)の再稼働反対を訴える「ひまわり集会」が21日、静岡市葵区の駿府城公園で開かれ、参加者約2千人(主催者発表)が「県内の隅々まで運動を起こし、再稼働を認めないよう全力で働きかけよう」との集会アピールを採択した。
 市民グループなどが開催し、参加者は再稼働の反対署名数をさらに増やしていくことを確認した。
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県からの県内避難者らも登壇し、集会終了後には市中心部をパレードした。