2015年11月1日日曜日

楢葉町の除染事業でも多重の中間搾取

 楢葉町の除染事業で、2次下請けから3次下請けに渡った一人1万7千円の賃金(日当)のうち、作業員に支払われた日当は最も少ない人が7千円で、1万円も中間搾取されていたことが、30日までのむつ労基署(青森県)の調べで分かりました。
 この中間搾取額には元請~2次下請け間の額は含まれていません。
 
 こうした実態はこれまでも何度も明らかにされてきましたが、一向に改善されていません。
 あたかも小説の世界のような不当な搾取機構が、あるいは中世期のような不条理が現存しているということです。
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多重下請けで中抜き 楢葉の除染違法派遣事件
福島民報 2015年10月31日
 楢葉町の除染事業に青森県の建設業者が労働者を違法に派遣した事件で、2次下請けから3次下請けに渡った一人1万7千円の賃金(日当)のうち、作業員に支払われた日当は最も少ない人が7千円で、1万円も中間搾取(中抜き)されていた。30日までのむつ労基署(青森県)の調べで分かった。作業員不足に伴う多重下請け構造の中で中抜きが横行している実態が明らかになり、福島労働局は再発防止策を強化する。
 
 この事件では、青森県警が労働者派遣法違反や職業安定法違反の疑いで3~6次の下請け業者8人を逮捕し、むつ労基署が労働基準法違反の疑いで3~5次の下請け業者4人を書類送検した。労働者と賃金の流れ、事件の構図は【図】(コピーできないので不添付)の通り。むつ労基署によると、2次下請けから3次下請けには作業員一人分の日当として1万7千円が支払われたが、各下請け業者が中抜きし、派遣された作業員が受け取った日当は7千~9千円だった。
 2次下請けから3次下請けへの支払いには、日当に上乗せされて支給される除染手当1万円が含まれていなかった。一方で作業員の日当は除染手当にも満たない額となっている。書類送検された4人が中抜きした総額は322万6千円に上っている。
 県内では除染事業への違法派遣が相次いで摘発され、問題となっている。背景には作業員不足がある。福島県警の捜査関係者は「全国から作業員をかき集めるため、無数の業者が介在する多重下請け構造が生まれ、悪質業者が入り込む隙ができている」と指摘する。
 労働者派遣法は建設業務への労働者派遣を禁止している。職業安定法は、自社と雇用関係にない派遣労働者を別会社に再派遣し、その会社の指揮命令下で働かせる「二重派遣」を禁止している。労働基準法は、二重派遣した労働者の賃金の一部を中抜きして利益を得ることを禁じている。
 
■福島労働局元請け指導強化へ
 除染業者の違法派遣などを防ぐため福島労働局は元請けに対する指導を強化する。
 11月9日には福島市に国発注除染事業の元請け全社を集め、あらためて下請け作業員の労働条件の改善、下請けの請負契約の適正化などを要請する。賃金の支払いに問題がないかなどを確認するリストも配布し、業者の自主的な取り組みを促す。
 除染作業現場への抜き打ちパトロールや県内9労基署に設けている相談窓口のPRにも努める。賃金不払いなどに関する労働者からの相談が雇用問題を表面化させるケースがあるため、福島労働局監督課は「作業員の声を業者の指導に生かしたい」としている。