2015年11月18日水曜日

核燃料サイクルに12兆円 コスト年1600億円 東京新聞が積算

 東京新聞が、もんじゅを中核に国が進めてきた核燃料サイクル事業にかかったコストいずれ必要になる廃炉費用も考慮し集計した結果、少なくとも122000円が費やされ、もんじゅが稼働していない現状でも、今後も毎年1600億円が掛かることが分かりました
 実用化のめどのない事業に巨額の国民負担が続くことになります。
 
 電気事業連合会(電事連)は10年以上前(03年)に、各施設の建設、操業(40年)、解体、最終処分までの総額を約19兆円と試算していますが、もんじゅはほとんど稼働せず、再処理工場や混合酸化物燃料(MOX燃料)工場は未完成、既に電事連の試算額の割以上が使われまし
 今後40年操業すれば、さらに巨額のコストが必要になり、電事連がはじいた19兆円では収まらないことは明らかです
 
 核燃料サイクルは設計施工の過程でも試行錯誤を繰り返していると見られ、工場の完成時期はこれまで20数回に渡って延期を繰り返し、完成時期の16年3月の直前になって、完成時期が2~3年半も延期される(別記事:「再処理、MOX…核燃施設、相次ぎ完工延期」参照)ことが明らかにされました。
 
 何よりも問題なのは、もんじゅは言うに及ばず、核燃料サイクルにはその意義が不明であり採算的な合理性が何もない(サイクルさせる意味がない)ことです。そのうえ工場が稼動に入れば廃液で周囲の海を強烈に汚染し、当然大気も汚染します。
 大島堅一・立命館大教授は、何も生み出さない事業に、今後も毎年1600億円ずつ消えていくのはあり得ないこと、もんじゅとともに見切りをつける好機だと述べています。
 
 ところでこれまでもんじゅは核燃料サイクルの中核をなすものといわれてきましたが、添付図で明らかなように、もんじゅはいわゆる「核燃料サイクル」の中には入っていません。
 プルトニウムの蓄積は国際公約に反するからという言訳も、もともともんじゅはプルトニウムを増殖するものであり消費するものではないので当たりません。
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核燃料サイクルに12兆円 コスト年1600億円 国民負担続く
東京新聞 2015年11月17日
 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が廃炉になる可能性も出てきたことを受け、本紙はもんじゅを中核に国が進めてきた核燃料サイクル事業にかかったコストを、あらためて調べた。いずれ必要になる廃炉費用も考慮し集計した結果、少なくとも十二兆円が費やされ、もんじゅが稼働していない現状でも、今後も毎年千六百億円ずつ増えていくことが分かった。実用化のめどのない事業に、巨額の国民負担が続く実態が浮かんだ。 (小倉貞俊)
 
 本紙は、事業を進めてきた経済産業、文部科学両省のほか、電力会社や関係団体、立地自治体などにコストを問い合わせ、集計した。高速炉開発が国家プロジェクトになった一九六六年度から本年度まで、判明しただけで計約十二兆二千二百億円に上った。
 本紙は二〇一二年一月にも同様の集計をし、十兆円弱との結果を得た。今回、二兆円強膨らんだ理由は、新たに廃炉・解体費などの試算額が判明し、その後にかかった運営費なども加えて精査したためだ。
 部門別にみると、最も高コストなのは、原発で出た使用済み核燃料を溶かしてプルトニウムを取り出す再処理工場(青森県六ケ所村)の七兆円強。原子力規制委員会が文科省に運営者を交代させるよう勧告したもんじゅと、関連の試験施設「RETF」の建設・運営費は計約一兆九百億円だった。
 
 廃炉費用は少なくとも一千億円は必要になるとみられるが、冷却材に危険なナトリウムを大量に使っており、きちんと見積もられていない。核燃サイクルのコストは、電気事業連合会(電事連)が十年以上前の〇三年、各施設の建設、操業(四十年)、解体、最終処分までの総額を約十九兆円との試算をまとめた。
 
 しかし、もんじゅはほとんど稼働せず、再処理工場や混合酸化物燃料(MOX燃料)工場は未完成。ウラン資源を循環させるサイクルがほとんど動いていない中、本紙の集計結果からは、既に電事連の試算額の六割以上が使われた
 
 今後四十年操業すれば、さらに巨額のコストが必要になる。これは、核燃サイクルを続ければ、電事連がはじいた十九兆円では収まらないことを示唆している。
 核燃サイクルの財源は、税金か、電気料金に上乗せされた分かの違いはあるものの、国民負担であることに変わりはない。
 
◆見切りつける好機
 <大島堅一・立命館大教授(環境経済学)の話> 実現の見通しが立たない核燃料サイクルに、十二兆円以上が費やされてきた事実は深刻に受け止める必要がある。何も生み出さない事業に、今後も毎年千六百億円ずつ消えていくのは、民間企業ではあり得ず、異常な事態といえる。(もんじゅ問題は)核燃サイクルに見切りをつける大きな好機ではないか。国民も、自分のお金が税金や電気料金の一部として、見込みのない事業に使われている現実をよく考える必要がある。
 
◆本紙集計
 省庁や電力事業者、団体などが取材に回答、公開している数字を集計した。放射性物質で汚れ、出費が確定している廃炉・解体費用も当事者による数字をそのまま加えたが、試算は約10年前と古く、実際にはもっと高額になるとみられる。国は使用済み核燃料の中間貯蔵施設も核燃サイクルの一環としているが、貯蔵された核燃料は再処理されない可能性もあるため、集計から除いた。自治体への交付金は、核燃サイクルを対象にしたものに限定し、一般の原発関連が含まれる可能性がある交付金は全額、集計から除いた。 

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