2015年11月5日木曜日

もんじゅ廃炉含め見直し 規制委、運営主体変更勧告へ

 日本原研開発機構の高速増殖炉もんじゅで機器点検をめぐる管理不備が相次いでいる問題で、原子力規制委は4日、定例会合を開き、機構による運営は不適正として、運営主体を変更するよう、所管する文部科学相に勧告することを決めました。
 
 半年後をめどに結論を示すよう求めるということですが、機構に代わる運営主体を探し出すのは困難と見られ、文科相が明示できない場合はもんじゅの廃炉も含め施設の在り方を抜本的に見直すことになります
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もんじゅ移管勧告へ 規制委「機構安全保てぬ」
東京新聞 2015年11月4日
 高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の点検漏れ問題で、原子力規制委員会は四日の定例会合で、運営する日本原子力研究開発機構では安全が保てないとして、機構に代わる新たな組織を半年以内に明らかにし、できない場合は廃炉も視野に施設の抜本的な見直しを求めるとの勧告を、所管の文部科学省に出すことを決めた。
 
 政府は昨年四月のエネルギー基本計画で、核燃料サイクル計画の中核であるもんじゅの存続方針を決めているが、規制委の田中俊一委員長は「考慮しない。安全をないがしろにしていいという判断はしない」と明言している。
 規制委は四日の会合で、先月から今月二日にかけて実施した文科省の担当局長や機構の児玉敏雄理事長からの聴取を踏まえ、もんじゅを機構に任せ続ける是非を各委員に諮った。五人とも「機構に任せることは不適当」との意見で、勧告を出すことは二十分ほどで決まった。
 十一日の会合で勧告の文案を決め、文科省に出す予定。規制委が勧告を出すのは初めてで、強制力はないものの文科省には回答する義務がある。
 もんじゅをめぐっては二〇一二年十一月、無数の機器で点検がされていなかったことが発覚。その後、一万点近くに上ると分かり、一三年五月には、規制委が事実上の運転禁止命令を出した。機構や文科省は再発防止に向けた改革案を出したが、その後も新たな点検漏れや書類の管理不備が次々と判明した。
 
 空気や水に触れると爆発的に燃焼するナトリウムを冷却材に使うもんじゅは、通常の原発よりリスクが高く、厳密な管理が不可欠となる。
 規制委の聴取で、文科省や機構側は「改善は相当進んだ」などと強調し、引き続き機構がもんじゅを担うと述べたが、具体的な改善内容を問われると「今後、対策の抜けている点を見いだしていく」などのあいまいな答えに終始した。これを受け、規制委のメンバーは、停止中の保守点検もできない機構には、運転は任せられないと最終的に判断した。
 
◆核燃サイクルに影響
<解説> 原子力規制委員会が、日本原子力研究開発機構に任せていたのでは、高速増殖原型炉もんじゅの安全は保てないとの判断を下した。新たな受け皿が見つけられなければ、もんじゅの廃炉も現実味を帯びてくる。もんじゅは国が推進してきた核燃料サイクル計画の中核的な存在で、国は計画の抜本的な見直しを迫られる可能性もある。
 もんじゅは一九九五年に冷却材のナトリウム漏れ事故を起こして以降、ほとんど稼働したことはない一方で、ナトリウムを液状に保つため膨大な電力を使い、維持費は年間百数十億円に上る。
 点検漏れ問題では、東京電力福島第一原発事故を経てもなお、機構の安全への意識が低いことを明らかにした。「体制を見直し、問題は解決した」と表明した後も次から次へと新たな問題が表面化したほか、規制委の会合で、機構の幹部は「福島事故の前後で検査のあり方が変わり、戸惑っている」とも発言。
 大きなリスクを抱えた原子力を扱うには、万全の上にも万全を期すのが最低条件。にもかかわらず、旧来の保守管理で検査さえクリアすれば十分との認識を繰り返し示した。
 規制委が機構からもんじゅを取り上げる判断をしたのは当然だが、老朽化したもんじゅの担い手を見つけるのは難しい。国が十兆円もかけて進めてきた核燃サイクルの行方に大きな影響を与えるだけに、規制委がどこまで安全の問題に切り込めるのか、力量が問われる。 (山川剛史)
 
<日本原子力研究開発機構> 
    文部科学省所管の独立行政法人で、2005年、当時の日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合して発足した。茨城県東海村に本部を置き、職員は約3700人。略称はJAEA。高速増殖原型炉もんじゅの開発・運営のほか、放射性廃棄物の処分や東京電力福島第一原発の廃炉などの技術開発を担う。